はじめてのおしごと
夜が明けた。霧深くかかり町並みはぼんやりと見えるばかり。そうしてルーマ帝国なるものに対してだが、何のことはない適当が一番であろう。よくよく考えれば特に絶対にそのルーマ帝国やらを叩き潰さなければならんというわけでもない。こと余らが今暇を持て余しているためにこうして暇をつぶさんとしてノールウェイ国という矮小な国に手を貸さんとしているばかり。衣はあの金髪慧眼の女にやたらと懐いてしまっているため本心から協力したがっているようだが、余はそうではない。いざとなればルーマ帝国なるものらに協力をすることさえ否とはせず。なんだ、簡単なことではないか。適当にあしらって折をみて寝返るなりなんなりすればよいのであった。所詮余にとって衣以外は有象無象の集合体で潰すも潰さんも特に
そうしてある程度考えをまとめた。余と衣とではずいぶん考え方も違う。ので、余がこうした考えに至ったのをいうことはないであろう。言えばまた口煩く駄目約束なんだからと、なんやかんやとぷんぷんと衣が怒るはめになる。余は幾らか思考が整理ついたところで衣がむにゃといいながら目を覚ます。覚ますなり腹の音がなるものだから金髪慧眼の女にいって軽く朝食をとる。何やら見慣れるものが並んでいた。海老のような蟹のような、何だかそれらが混ざり合ったとにかく甲殻類らしきものが鍋いっぱいに詰まった鍋汁。鉄の鎧をまとった猪の肉、いや肉が本来詰まっていたであろうところには小麦を焼いたものが詰まっていた。料理としての姿は肉がぎゅうっと押し込まれているのがそうであるらしいが、今は贅沢に肉一杯とっていることはできずに外身のうま味を小麦に浸して食しているらしい。これらの食事についてだが、衣が食すものは余も味を感じとることができる。しかし感じ方は別となっており衣が苦いと言うが余は旨いといったり、衣が旨いといえば余にとっては甘すぎることが度々といったことだ。要は衣の舌がおこちゃまなのだ。兎に角にも工夫が凝らされそれなりに満足が得られた。食事のあと、改めて余らの部屋で金髪慧眼の女と話をしようとしていた。そうしてさあ会議をせんとしていたところへ急報が飛び込んできた。昨日見かけたかしこまった制服をまとった者らの中の白髪の男であった。
「エミル様大変でございます。野党がミナミノ村を襲っているそうです」
ミナミノ村とはここから最も近い村らしい。どうやらその村から急報が舞い込んだとのこと。見れば金髪慧眼の女は珍しく険しい表情をしていた。
「もしや昨日衣様が討ち漏らした者らかもしれません。爺や、すぐに手が空いている者らに声をかけてください」
「かしこまりました」
金髪慧眼の女はこちらへと振り返るなり言う。
「衣様、昨日の今日で申し訳ありませぬがどうかお力添えをお願いいたします」
衣は何処か嫌そうではあったが畏まって了解としていた。それにしてもおかしな奴らである。昨日は同輩が腹が蹴破られたのをみて逃げまどっていた癖にまたこうして下劣顔を顔面に張っては襲撃を繰り返すとは。腹にどでかい穴をあけたい奴らがたんまりといるらしい。余は報告を受けてなかなか見どころがあるやつらだなと一人関心していた。




