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3000飛んで15歳の余の異世界冒険  作者: 野菊竜胆
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可愛いは作れる!

 嵐雨が吹き付ける中、余が眼前には三夜も余と遊び続けたにもかかわらず、未だ百にもなるであろう呪術を展開し、余の金色の体へと打ち付ける痩身の男がいる。 

 余の爪先一端で押し潰せそうなほど矮小な身体ながらも唇を噛み締め、雨風に打ちつけられながらも余の青々とした眼を捉える。

 目の前のその男は、余が暫く都住まいであった頃一度見かけた折から、生まれながらたいした力を持っていたが、この九尾たる余が力、森羅万象一体とさえなりえる余と三夜も遊びえるとは思いもせなんだ。そこで、聞いてやれば、何でも都一帯を呪術にかけ、万を越える魂を食らったという。


 ほとほと人間には呆れたものだ。


 余は常にこの身一つで生きてきた。古来から九尾の狐とばけものたる象徴で余の名を漫然と呼び続ける人間どもが多数居れども、まったく尾が九に至るまでの気苦労を知ろうとはしない。左から数えて二番の尾は余が狐として生を受け、200と30を数えた頃にのそのそと生えてきたものと記憶している。初めて二尾になった頃に、そこここに自慢しに出掛け、人間に見つかり、生えたばかりの尾を半分切られてしまい、「丁半の狐」と名をつけられ随分と辱しめられたのは記憶に新しい。また、丁度真ん中に位置する五尾は他の尻尾と比べてやや短いわけだが、これについてはうとうと昼寝をしていたところちょいとちょんぎられてしまい、ようやっと伸びてきている。

 

 こうした余の苦労を知らぬ眼前の愚か者が、一夜で余に追い付かんと万人を食ってこうして立っていると知った時の虚しさといったら、筆舌にがたし。暫くぶりに人間と遊べると気負って小わっぱの誘いに乗ってみたものの、只のがきんちょとは。


「随分情けないやつよの」


普段寡黙な余も、しばらく振りに遊べる人間と出逢ったと嬉々としたばかりにその落胆は大きかったらしく、つい苦言を弄する。すると、「ふっ、この溢れんばかり力。貴様とて恐れがあると見える。いささか力が落ちてきたようだが?」

などと、呪術で目一杯風雨の中固定していた髪をさらりと掻き分けながら戯言を言う。

「たわけが。」


言うや早し、ちょいと力を出してやればやつは腰が引け、見れば股の湿り気が濃くなったようにみえる。股が緩くなったばかりか、髪の固定化の呪術も緩んだようで、あっという間に風雨に乱される。若いのに随分と薄いと思った。人間の最後はあっさりとしたもので、ついと乱れた髪も気にせず泣きわめきながら逃げ出さそうとするので、尻尾で丸めて一飲みにした。


がしかし、どうも喉に詰まる。人に化けていた折、小魚の骨が喉に刺さってしまったときのそれに似ている。詰まりが気になるものの一息に飲み込む。

ふと気づく。万の人を一度に飲み込むなど大和撫子の余がすることなどなし。十人十色、色々な食べ方をする。ので、今余は急に腹が膨れ随分苦しい状態になってしまっているようだ。ついで力も万人分も膨れてしまう。


そうした結果、これまで「世界」が許容していた「九尾の狐」からやや逸脱してしまったようで、鼓膜が破れんばかりの炸裂音が「世界」に響く。そう思えば、身体に浮遊感が感じられる。まっくらである。そんな一寸先暗闇の中、金色の身体を自慢しても見えないわけなので、仕方なく人容に化けて縮こまってみる。


幾ばくの時間がたったのであろうか。万人食った腹もすっかりすき、やや迂闊であった。食い意地張ってこのあほ狐と自虐になっていると、暗闇に光明がさしてきた。いつの間にか足も地面につく。


気持ちの悪い浮遊感からおさらばできることに喜び、一筋の光の隙間に向かい歩いていくことにした。

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