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今はまだ跪かせていない


私自身がカルフォス王を苦しめたりしていない


祖国もまだ不安定、そんな状況では殺せない。


だから、だから殺さなかったのだテネリーズは自分にそう言った。




「・・・いつか・・そう、いつか殺してやるから・・・・。」




テネリーズは呟いた。


















倒れた王の事を侍従達に任せて、


部屋に帰ってきたテネリーズの耳に、


部屋の影から声が聞こえた。




「姫様・・・・思ったよりも早く、


準備が整いそうです。」


潜り込んでいるテネ国の者がそう言う。




「・・そう・・・嬉しい事・・・・」


虚ろな声音でテネリーズが言う。


少しだけ嬉しくないと思ってしまうのは、


きっと、まだ跪かせても


死ぬより辛い苦しみも与えていないから


だからに違いない。




「・・・・早すぎるくらいだけど・・・・嬉しいわ・・


憎い敵を殺して、我が国に帰れるなんて・・・」


空っぽの笑みが浮かぶ




「・・・・なので姫様・・・


戦いの合図と共にカルフォス王の首を取ってください。」


喜びが押さえきれないその声に


テネリーズは身体が震えた。




この震えは嬉しくて・・・。


どうしょうも無く嬉しいから・・・・・






嬉しい、本当に嬉しい、


けれど


けれどまだ、




「ま・・・待って・・・」




テネリーズは影を呼び止めた。














「カルフォス様・・・・・」


テネリーズは初めてカルフォスの元を訪れた。


カルフォスのあの赤茶色の瞳が怪訝な光を浮かべて


テネリーズの方を振り向いた。




「・・・・テネリーズ?」


「お加減は如何ですか?」


笑顔のテネリーズに訳が分からないと言いたげに


首を傾げ、無言で見つめるカルフォスに、苦笑を浮かべると、


テネリーズは、まだ青ざめた顔をしているのにベットに寝転ばずに


壁に凭れかかっているカルフォスの近くまで寄って行く。




「お見舞いに参ったのです。」


テネリーズの言葉に、眉根を寄せて無言で見上げるカルフォスに


テネリーズは、静かに手を伸ばす。


身を逸らすカルフォスに対して小さく微笑むと、




「・・・・私達、夫婦となったのですよ、


私も貴方に歩み寄る努力を致します・・・・


だからカルフォス様も私に歩み寄る努力をして下さいませ」


テネリーズは、そう言い、持ってきていた


赤ワインとパンを入れた籠をカルフォスの手に握らせた。




「毒でも入っているのか?」


「まさか・・・」


テネリーズは、ゆっくり首を振って微笑んだ。

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