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テネリーズは、朝の散歩の途中で
壁に掛けられた肖像画を見上げた。
昨夜は結局、その後も宴に戻らず、婚姻後の
初床入りの儀式もなかった。
テネリーズは、昨日の晩、ずっと考えていた
どうしたら国を滅ぼされずに復讐を遂げられるのかを、
それには、まずは、王妃の地位を磐石にすること、
祖国を滅ぼされないよう内側から手を手を回す
権力を得なければならない。
そして、そうしながら
この国の国力を少しずつ削いで行けば良い。
噂では、国民は残忍で冷酷な王から
心が離れて行っていると聞く。
先代の王が亡くなってすぐ、王宮内で
カルフォス王による、大量の虐殺行為があったらしいが、
王位を継げる者はカルフォス王しかいなく、
国民と群臣は、カルフォスに恐怖の心を持ちながらも
仕方が無く、王として戴いたのだと聞いた。
(そのような王など滅んでしまえば良いのよ)
テネリーズはそう思っていた。
「あれは・・・・王?」
肖像画を見上げてテネリーズはそう呟く、
しかし、そこに描かれていた人物はカルフォス王よりも
随分年上のようで顔立ちも柔和で優しそうだった。
「・・・・そうですね・・・名前もカルフォス王と書いてあります。」
肖像画に書かれた名前もカルフォス
「・・・・あ!でも、年はカルフォス1年、『即位の記念に』と書いてあります。」
名前の横に書いてあった描かれた年は、カルフォス1年、
今はカルフォス12年だから、今から11年前の事、
カルフォス王は、3歳程の時
そう考えてテネリーズは気付いた。
「そういえば、どうして今は、
カルフォス12年なの?」
カルフォス王は即位したばかりのはずなのに
どうして12年にもなっているのか
「・・・・・確か・・・・現王カルフォス様は、
父王様の名を継いで2世だと聞いた気が・・・。」
「・・・年号もそのまま父王の年号を引き継いでいるの?
自分がもう即位したのに・・・?」
何故かテネリーズの心が震えた。
「それでは姫君・・・・私達は戻ります。」
テネから婚儀に出席する為に来た臣下達が帰って行く。
「・・・・もう・・・・帰るのですか?」
言いかけて言葉を飲み込む
「姫様、・・・・後はお願いいたします。
姫様は、誇り高き、我がテネ国の姫君・・・・必ずや・・・。」
「分かりました・・・・必ずや・・・」
これからは本当に誰にも弱みを見せられない
テネリーズは決心した。
必ず幼き少年王、カルフォスを跪かせ、寝首を掻いて、
この国を手に入れてみせる。
笑顔の仮面を付け、
心を許したと見せかけて
心の奥底はテネとカインシーズに捧げる。