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大神殿で待つテネリーズの元に幾ら待っても王は来なかった。


周りがざわめく中、テネリーズの手が屈辱で震えた


婚儀の儀式に現れないなどと


明らかに祖国テネとその姫であるテネリーズを軽んじている行為だ。




祖国から婚儀に出席する為に来ていた家臣達も


王の臣下達も訳の分からない顔をしてざわついて、


慌てた様子で王を呼びに行く侍従達を


テネリーズは、瞳の端に映しながら


口惜しさに唇を噛み締める。












「王!・・・」


「カルフォス陛下!」


大神殿の入り口から声がする。




「始める・・・・。」


慌てる群臣をそっちのけで


婚儀の為の重たく煌びやかな王の衣装を身に着けた少年王が


此方に歩いてくる。


睨みつけるテネリーズに少し視線を送り


無表情で瞳を逸らし隣りに立った。




「・・・・!?」


何か一言すらも無いのかと見つめるテネリーズは、


間近になった少年王のその横顔を見ながら


こんなに白い顔色の少年だっただろうか?


と疑問が過ぎったが首を振りすぐに打ち消した。




具合が悪いのではないかなんて気遣ってなどやらない




前を向いたテネリーズに再び視線を向けると少年王は、


少しだけ瞳を眇めて口の端だけで微笑んだ。


不意に見せた綺麗で、少しだけ柔らかいその表情を


目の端で捉えたテネリーズは


何故か胸が高鳴るのを感じた。












「後は、興味が無い・・・


好きに騒げ・・・」




婚儀の儀式後の宴が一段落するとカルフォス王が


席を立ち何処かに消えようとするのを見て


テネリーズは思わずその後を追った。




「主賓が席を空けるなど・・・」


そう言う群臣にカルフォス王は、




「・・・・・これ以上はいちいち付き合えるか・・・


儀式も出た、宴も出た・・・後は好きに騒げ・・」


一瞥もせずにそう言うと今度こそ宴の間を出てしまった。




小走りで付いて出たテネリーズが、


先を行くカルフォス王の背中に触れようとして




「・・・・私に触れるな!」


カルフォス王の出した鋭い声に思わず手を引っ込めた。




「共に居る気は無い、


お前は、早く立ち去るが良い・・・・行け」


怒鳴りつけているかのようなカルフォス王の声が


まだ幼さの残っている少年の声だと言う事に気付いて


何故かテネリーズの心がざわつく。


無言で睨みつけるテネリーズの様子に


一瞬だけカルフォス王は微笑みを浮かべ


テネリーズが、立ち去るのを待つかのように壁にもたれた。




しかし、一瞬の間にもう微笑みは消え去って、


いつもの冷たい表情に戻ってしまったのを見て


テネリーズは、もう一度さっきの微笑が見たいような気持ちになるが、


この王は、弟の婚約者の敵、祖国の敵なんだと


言い聞かせて表情を引き締める。 




「分かりました。」




頭を上げ、背筋を伸ばし、顎を引き、


誇り高いテネの第一王女として相応しい姿で、




慌てて付いてきた侍女達と共に


今度はゆっくりと優雅にテネリーズは


カルフォス王の元から立ち去る。








「姫様・・・これからどうなるのでしょう?


あの少年王は、姫様の婚儀にも遅れて来るし、


宴も・・・・今夜は初床入りなのでは無いのですか?」




恐る恐る聞いてくる若い侍女の言葉にテネリーズは




「王が軽んじるのは仕方の無い事でしょう


我が国は敗戦国


今、怒らせれば今度こそ国を滅ぼされるでしょう。」


侍女に言っているようでテネリーズは、


唇を噛み締め自分に言い聞かせる。




「・・・・滅ぼさせはしない・・・・私の足元に跪かせてやるわ


あの、王を・・・少年王、カルフォスを・・・。」

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