10
3日の間、テネリーズは、カルフォスの元に行かなかった。
カルフォスもテネリーズの部屋に来なかった。
4日目になって、父から手紙が来た。テネリーズは、それを読むと無言で破った。
5日たって、廊下でテネリーズはカルフォスを見かけたが、
カルフォスはテネリーズに気づいた後、何も言わずに顔を背けて立ち去っていった。
6日になって、父から言われて潜り込んできていた者達がテネリーズの元に忍んで来た。
テネリーズは一つ頷いた。
ついに、7日目の晩になり、テネリーズは窓辺に座りながら月を見ていた。
もう直ぐ夜が更ける・・・
今日という日付が終わり、明日になると私は
でも・・・私は・・・本当は・・・・
夜のかがり火が揺れる待ちたくは無いのに合図の音に耳を済ませている。
今日が終わってしまう
最後の望みも絶たれて
「・・・・テネリーズ・・・・」
その声にテネリーズは涙が出るほど嬉しかった。
間に合った。
今日が終わる前に終わる寸前にカルフォスが来た。
振り向いたテネリーズはそのまま止まった。
「・・・・テネリーズ・・・・・この者は、お前の侍女。
お前の父、テネ国王が潜ませていた間者だな?」
どこかで兵を引き付ける為の騒動の音がする。
カルフォス王の国を獲る為の合図の音、
今日が終わってしまった。
今日が終わってしまった・・・・
「・・・・そう・・・・そして、私の忠実な僕・・・・」
心と裏腹の冷たい微笑がテネリーズの口元に浮かぶ
「私と父は、貴方を殺す為・・・・・
貴方の国を我が国が取り込むために用意していた。」
カルフォスの瞳が見開かれ、その後、険しくなる。
「・・・・・そう、姫様は、テネリーズ様は、
国を攻められ、弟君を亡くされ、そのせいで母君も亡くなってしまわれた
そして、何より、愛する婚約者のカインシーズ様を失ってしまわれた
もうすぐご結婚だったのに・・・・その恨みは深い」
侍女の言葉にカルフォスは捕らえた彼女に視線を落とす。
「・・・・・テネリーズ・・・・・ずっと、そのつもりだったのか?
始めから終わりまで私を殺そうと・・・・
父上が守ったこの国を滅ぼそうと思いながら
私の傍で笑っていたのか?」
「・・・・・そう・・・・。」
何処か虚ろな声音でテネリーズは言う。
「テネリーズ、お前に憎まれるのは当たり前だと思っていた
殺したいのならば、私が父上の国を磐石にして、
穢れた身の大伯母や、大叔父以外の父上の血の者にこの国を
継承させてからなら殺されてやろうと思っていた。・・・・・
でも、テネリーズ、お前が私に微笑んでくれたから
少し、私は・・・・・・でも、嘘だったのだな・・・・
偽っていたのだな?」
「女は、嘘を付くものなのですよ・・・カルフォス様
美しい容姿で本心を隠して・・・心の刃で相手を殺す
恐ろしい魔性・・・。」
何故かテネリーズはクスクスという笑いが止められなかった。
「姫様、テネリーズ様、
やって下さい!
国の王太子の王妃のカインシーズ様の仇を獲って下さい
私ごと、さあ!」
侍女がその身体でカルフォスの身体を止める。
テネリーズは、息を止め、胸元の刃を抜き、
カルフォスへと向かった。
心が・・・・・壊れそう・・・・・・。