表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/29

憂鬱な朝

目が覚めると当たり前のように目の前に鈴音がわたしを揺するしぐさをしていた。

ああ、帰ってきたのか。

自分の考えていたことが現実にならなくて良かったと思う。

あのままいなくなるなんていくらなんでも悲しすぎる。

ちょっと自分の事情を話したくらいで気を許してしまうところは私の悪い所だと思うのだけど。

「おはよ!!昨日はごめんね」

鈴音が悪いと思っていなさそうないつもの感じで笑いかける。

とりあえず、嘘を言ってるかどうかについてはそのうち言うことにする。

朝は時間が限られるからだ。

夜になったら言ってみよう。

「ねえねえおーはーよー!!」

鈴音が大声を上げる。うるさい。

「……おはよう」

「うん!!さ、起きよー」

「はいはい」

怠い体を起き上がらせる。

久しぶりに地面がぐらぐらして、立てない。

しばらく座っていると鈴音が立とうとしない私を不思議そうに見つめていた。

「どうした?調子悪い?大丈夫?」

心配そうにこちらを覗き込む。

「……いや、大丈夫」

心配をかけないように立ち上がる。ふらふらするが、一応立てるので問題ないだろう。

一歩前に出る。ゆらっとするが、歩ける。大丈夫。

動作がゆっくりな私が怪しいのか不安そうな顔でこちらを見ている。

「どしたの?足でも痺れてるの?」

「だから大丈夫だって」

ちょっと怒った口調で言ってしまう。

鈴音が私の声が大きかったのかびっくりしてしまったみたいで、しょげたような顔をする。

「あ……ごめん」

自分が悪かったと思い謝る。

「いや、いいよーきっと朝起きるのが嫌なのに無理やり起こされたからでしょ?これからは起こさないようにするから……」

寂しそうな顔をする。やめて。そんな顔をしないで。そう思い、言葉を発する。

「いや、そんなんじゃなくて……朝起きれないのは私の性だし、起こしてもらっているのは感謝してるよ。だから自分を責めないで」

鈴音は顔をあげて、笑顔で言った。

「そっか!じゃあこれからも起こすね!」

いつも通りの様子になんだ、傷ついた顔してたのは嘘だったのかとか変な考えが出てきて、慌てて消した。

たしかに鈴音が嘘をついてる可能性はあるけど、鈴音の行動とかしぐさすべてが嘘なはずはないだろう。

そう思う事にして、とりあえず朝の作業を始める。

顔を洗い、朝食を食べ、歯を磨き、学校へ行く支度をして、家を出る。

学校か……嫌だな。特に理由もないのだがいつも思う。友達と話すことも面倒くさくなる。人とあまりかかわりたくない。でもかかわらないと一人になる。それが嫌だから友達をたくさん作ったんじゃないか。昔みたいにならないように。ああ、駄目だ。こんなこと考えたら。こんな暗いやつだなんてばれたらまた一人になる。隠さなきゃ。

いろんな思いが頭をよぎる。

鈴音とノートでやりとりをした時外では話をしないと決めたことがあったので、鈴音も話しかけてこないし、私も話しかけない。

でも隣にいるんだから鈴音と話していないといけない気もするし……

そう思っているといつのまにか鈴音はいなくなってしまった。

ああ、私といるのが気まずかったのかな。不快な思いをさせちゃったかな。

そんなことを思いながら、またあとで会えるのか心配になったりして、でも昨日もいなくなって朝には帰ってきたんだし、大丈夫だろうと楽観視する。

今日も一日息苦しい一日が始まる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ