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笑う彼女

次の日。

朝起きると鈴音がいた。

「いやー。なんでだろね。」

そういって彼女はさびしそうに笑った。

「なんか未来以外には私見えないみたいだ。てか透ける」

「え……どういうこと」

「いやーまいったまいった。私昨日ドア開かないって言ったけど、開かないんじゃなくてドアノブつかめないってことみたい。いやー自分では掴んでるように見えでも掴めてないみたいなんだよねー。ほら例えばこのシャーペン見て!」

そう言って鈴音が机の上のシャープペンシルを手で払う。しかしシャープペンシルは動かない。

「ほらーこうなる。そういうことだよ。私はちゃんとシャーペンを落とそうとしたけど落ちないっしょ?」

「……そうだね」

「いやー悲しいな」

「あまり落ち込んでないように見えるけど?」

「いや、結構落ち込んでるよーまじショックすぎてテンション下がるー。でね、何もすることできないし、自分の居場所ほしいなーって思ってたらここに戻ってきたの。未来ちゃん寝てたけど。ぐっすり寝てたから起こすの悪いかなって思ってずっと部屋にどんなのあるか見てた!なんかわからないけどお腹すかないし、眠くならないし、なにもできないしすっごーく暇だった!!」

「へ、へえ……お疲れ様?」

「いや、別に疲れてはないよー」

「そっか……そういえば昨日あなたが出て行った後誰もいなかったんだけどどういう事?」

「あーあなたじゃなくって鈴音って呼んでよ!まいっか。昨日はねーなんかどっか楽しいところ行きたいなって思ったら外にいてさ。私ビックリしちゃって。てか扉とかも透けるらしいんだよね。試しに外でこの店に入るぞーって思ったらいけたんだよね。でもそうするとなんで最初この部屋から出られなかったのかなーって思ってー出るぞって思いが足りなかったのかな……あ、てかそろそろ学校行かないとやばくね?ごめんね貴重な時間使っちゃって。どぞどぞ、行ってらっしゃい」

「え……あ、うん。行ってくる」

そう言って学生鞄をとり部屋を出るところでふと何か言った後の方がいいだろうかと思い、振り返る。

「えっと……くつろいでていいから。寝てないなら寝てていいし」

「ん、ありがとーじゃあ遠慮なく」

にっこり笑って手を振る鈴音を見てドアを閉めた。


授業中眠くて仕方なかったけど、いつもみたいに絵を描くのはやめておいた。

また鈴音のように自分の部屋に出てきたら困ると思ったからだ。

原因は分からないし、この先も分かる時が来ることはないだろうけど……

それにしても何もしていないで授業を受けるのは辛い。

凄く眠くて視界がぼやけてくる。記憶がぶつぶつ切れる。

気が付くと授業が終わっていた。

あーやってしまったと思った。

授業の終りに立つ時も寝てたからめだっただろうなと思った。

恥かしくなってしまう。

とりあえず次の授業の支度を始める。

やっぱりどこかが動いてないと眠ってしまうなと思った。

高校に入ってから授業中に眠くなることがたびたびあり、そのたびに絵を描いて寝ないようにしていたのでそれをやれないとなると困ってしまう。

なにか解決策を考えよう。

そう思った。


放課後。

友達に挨拶をして、帰宅する。

自室に入ると鈴音が浮いていた。

「え……」

「あーおかえりー」

「なんで浮いてるの?」

「んー椅子とかも透けちゃって座れないから空気に座れたら楽なのにって思ったら空気に座れたから、これ寝転がることもできるんじゃねって思ってーそしたらこうなった?」

そう言ってあははと笑う。

私はどう反応したらいいかわからなくて、困った顔をしていたと思う。

鈴音が笑うのをやめてちょっぴり悲しそうな顔をして言う。

「ごめんね。帰ってきたら急に浮いてる人がいたら驚くよね」

そう言うと浮くのをやめる。地面に着地すると笑顔を向けてきた。

「あのさ、突然だけど明日から私も学校行っていい?」

「……は?」

「いやあのね。未来が普段どういうことしてるのかとか知りたいっていうか……私気づいたらここにいたって言ったじゃん?実はここに来る前の記憶ないんだよねーなんとなく物の名前とかはわかるけど。学校にも行った覚えなくてだからこの世界のこととか学校のこととか未来のこととかたくさん知りたい!あ、未来って過去未来の未来じゃないからねーそこ間違えちゃダメ!ま、言わなくても分かるか」

急に言われてびっくりしてしまう。

記憶がないのは多分私の描いた絵だからだろう。記憶がないというより過去がないのだ。

そうなると勝手に鈴音を生み出してしまった私にも責任はある。鈴音も毎日自分の部屋では暇で仕方ないだろう。

「分かった、いいよ。学校以外にもいろんなところ行こう。この部屋にいるだけじゃつまらないもんね」

「え!?いいの!?良かったー!!急に話変えちゃったからダメかと思ったー!」

「いや、実際何もできないで私しか見えないとなると私と一緒に行動するしかなくなるかなって思って……」

「そっかー嬉しいよー!いやーぶっちゃけ何もしてないでいるの暇でさー」

「そうだよね。この部屋にある漫画とか小説も読めないんでしょ?」

「そうそう!透けちゃうんだよねー。興味あるんだけどねー」

「……読んであげようか?」

「いやいや!それはいいよ!なんか悪いし、読み聞かせとか子供にやるもんじゃん?」

「そうだね。ごめん」

「謝んなくていいよー大丈夫大丈夫!!」

ドアをガンッと叩く音がした。母親だろう。

「あ、そろそろ夕飯みたい。食べてくるね」

「うん、分かったーじゃあね。後で未来のこといろいろ教えてよ」

「特に教えるほどのこともないと思うけど……」

「いいのいいの!知りたいことたっくさんあるんだから!」

そう言って笑った。鈴音はよく笑うなと思う。そういう設定にしているからだろうか?

鈴音の笑う顔は裏表がなくて純粋に喜んでるのとか楽しんでるのが分かるから好きだなと思いながら手を振っておく。

鈴音も手を振りかえしてくれた。

そのことが少し嬉しかった。

夕食をとり、風呂に入る。

部屋に帰ると鈴音が待っていて、いろいろ話をした。

私の親の事、過去の事、好きなもの、苦手なものいろんなことを話し続けていると普段あまり話さない為か疲れてきた。疲れた顔をしていたのか鈴音が心配そうな顔をして言った。

「大丈夫?今日はもう寝よ。いろいろ話聞かせてもらったしもう満足!」

「そうかな?あんまりおもしろい話できなかった気がするんだけど……」

「えー面白かったよー自信持って!とりあえず今日は寝よ寝よ!!」

「そこまで言うなら寝ようかな……」

「うんうん、そうするといいよー」

自分がベッドに寝転がって布団をかぶるその様子を見ている鈴音がさびしそうな顔をしているような気がして何か話さなくちゃと思った。でも疲れている気がするしとかぐるぐる考えていると目の前が暗くなった。










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