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『人間』

「……駄目だった」

 大きな穴の中心に木村は立っていた。ただし、裸で。

 大きな穴には『怪物』も一緒にいた。先ほどとは違い、頭を生えた状態で。

「……きゃきゃ」

「……はぁ、今の一撃で僕の身体はどれだけ強化させたんだか」

 人の身体というのは、死なない事を重点においている。

 例えば、人間は普段肉体に制限をかけている。普段肉体に制限をかける理由は、本来の力に身体が耐えられないから、つまり死にたくないからだ。

 ならば、不死者はどうなる?

 何をしても死なない身体。傷も一瞬で再生する身体。そんな身体ならば、制限をかける必要なんてない。

 更に、筋肉は傷つくと、今度は耐えられるように強くなる『超再生』というものもある。

 その二つが合わさった結果が、今の木村だ。腕を振るう毎に筋肉が傷つき、すぐに『超再生』し、強くなっていく。

「きゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃ!!」

 奇怪な声を『怪物』が上げると、空から氷柱が大量に落ちてくる。それらは木村の身体を貫くが、ただそれだけ。

「……何で漫画とかの不死者は痛みを持つんでしょうね?」

 木村は『怪物』に語りかける。

 対して『怪物』は、右腕を剣に形を変え、木村に振るってくる。木村の身体を斬った、それだけで、血が出たりなどしない。

「……死なないのだから、痛覚なんて必要ないのに」

 ドンッ! と音が聞こえた時には、『怪物』の身体に穴が空いていた。

 ズフズブと音を出しながら再生しようとする。その前に木村はもう一つ穴を空ける。

「あーあ、暫くは力の調整が必要だなー」

 気楽に言いながらも拳を振るう。一つ二つと穴がどんどん増えていく。

 一つの穴を塞いだ時には二つの穴ができていた。二つ目の穴を塞ごうとした時には三つ目が。

 再生が、追いついていない。

「きゃ、ぎゃきゃ」

 そうこうしてると、『怪物』の穴の一つから大きな赤い石が見えた。

「……さようなら、『人間』」

 その石を、木村は思いっきりぶん殴る。

 ビキッ、と音がした。ピキピキと連続して音が鳴り、石は砕け散った。

 全身穴だらけとなった『怪物』は悲鳴をあげることもなく、死体を残すこともなく空気に溶けていった。

 残ったのは、一人の少年だけ。

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