合宿・二日目の昼
「それじゃあ皆ハメを外しすぎるなよ」
「「「はい!!」」」
「男子何でそんな元気いいんだ」
二日目の午後、男子部員たちからすれば待ちに待った時間がやって来ていた。
浜辺には海パンの男子と西村先生がいて、西村先生はそのまま飛んで行った(文字通り)
「来たぞ」「あぁ」「この時が」「くるぞ……」
「「「女子の水着!!」」」
「……テンション高いですね」
その中で木村と部長の八坂はジャージでいた。泳ぐ気はないみたいだ。木村の言葉に男子部員たちは次々と言う。
「何を言う!」「女の子の水着姿だそ!」「普段見ない女子の素肌だぞ!」「レアだぞ!」「木村だって日野川の水着姿見たいだろ!?」
「感想とか求められて面倒なんですよ」
「「「リア充爆発しろ!!」」」
「あー、ほらほら女子の皆さん来てますよー」
男子部員全員の顔が動く。そして、
「「「……」」」
静かにガッツポーズ。女子はその男子の反応に少し困ったような反応をしているが、まんざらではなさそうだ。
女子たちは皆様々な水着を着ているが、スク水の割合が多い。
「こうちゃんこうちゃん!」
「あれ? お兄ちゃん泳がないの?」
日野川と美香は他と同じスク水を着ている。日野川は長い髪を団子にして纏めていた。
「泳ぐ必要はないかなって思って」
「せっかくの海なのにもったいない」
「はいはい泳いでらっしゃーい」
「む〜」
文句を言いながら日野川は他の人と一緒に海へと行くのを木村は見送り、そのままどこかへ消えて行った。
「いた」
そんな部員たちを遠くの山で見ている者がいた。全員格好はバラバラだが共通点として頭にフードや段ボール等の被り物を着けて顔を隠している、
「魔力総量は?」
その中の一人が言った。手には小さなナイフを持っていて、刃には文字のような物が刻まれている。
「B、『食べる』には充分だ」
「Cじゃないだけ良かった、それだけあればしばらく持つ」
誰かが口々に言う。被り物から見えるその眼は、皆充血したかのような真っ赤な眼をしている。
「いつ行く?」
「夜、ちゃんと準備はしてある」
「早く夜にならないかね」
それらを最後に皆黙る。まるで人形のように。
「というわけでビーチバレーとやらをしてみよう」
「……いや、何で僕まで」
「魔法の使用は禁止、遊びの時くらい自力でやれよ」
「負けねぇぞ木村!」
「バレー部の意地を見せてやる!」
「いや、だから、なんで」
木村の呟きを誰も聞いてなく、勝手にチーム分けを始める。発端は誰かが「ビーチバレーしない?」と言ったことだ。
そいつ自身は数人でやるつもりだったらしいのだが、誘った相手が悪かったらしく、部全体でやろうという話になり、やるなら中学と高校は分けよう、どうせなら木村も一緒に、なら魔法は使わない、で現在に至る。
「こうちゃん一緒だよ〜」
相方は分かり切っていたが日野川だった。周りの目は視線だけで「やっぱりか」と言っている。
「魔法を使っちゃ駄目だからね」
「わかってまーす」
ほっほっ、と準備体操をする日野川。しかし木村は心の中で思う。
日向魔法ないと運動オンチじゃん、と。
初戦で負けた。