成果
いつも言ってる気がしますが、遅くなってすいません。
後文字数も少ない。
賑やかな喧騒、眼に痛いほど光が照らされる場所を避けるように、影は空を飛ぶ。
ビルの間を駆け抜け、壁を蹴り空を舞う。
この島では大して珍しいことではないが、驚くべきことにこの動作に能力は一切使われていない。
鍛え抜かれた身体能力、たったそれだけで、影は天に舞いあがる。
迷いはない、ただひたすら目的地に向け影は地を這い空を駆ける。
学園島北工業区画、機密のため監視装置が働かない廃工場地帯へ。
□ ■ □
一つの廃工場にたどり着く。
施錠されていたはずの扉は開いており、否、破壊されており、工場内を薄暗い月光が照らす。
「・・・おかしいと思っていたんですよ」
月光にも照らされぬ工場の奥へ、影は独り言を呟く。
「化け物と他の人間に罵られ、その中でただ愛してくれた家族を奪われた話。実に悲しいお話です」
暗闇の中でマズルフラッシュが瞬く。
発射された銃弾は真っ直ぐに影の心臓へ突き進むが、銃弾は後一歩の地点で消滅した。
緋色が混じった鋼で作られた、五センチほどの立方体が被さるようにして。
「化け物と罵られる?当たり前です。我々超能力者はそういう存在なのですから。しかし、何故その人間たちは罵るだけしか行わなかったのか?」
超能力者は世界にとっても国にとっても危険な存在。
そして、それは隣人も例外でない。
もしかしたら能力の暴走に巻き込まれるかもしれないし、能力がらみの事件のとばっちりを受ける可能性もある。
そんな恐怖が身近にいるとしたら、人間ならどうするか?
簡単なこと、少しでも自分から遠ざけるだ。
そんな存在を、みすみす放置する意味がない。故に、隠して育たせるしか逃れられるすべはない。
「慌てて行ったため記憶操作が甘かったようですね。ずれがあれば誰かが気づく、いえ気づいていた上で懐に入れていた人もいますがね」
影は大きなため息を一つつき、腰に下げてあった鉄板を引き抜く。
否、それは鉄板ではない。鉄ではない、曇り一つない黒銀色の金属の板に持ち手を付けただけの剣とも言えない奇妙な武器であった。
影の動作と共に、奥の闇から三人の人物が現れた。
一組の男女と、真ん中に見覚えのある少女。
輝きながらも歪んだ瞳を持つ白衣の男女と、瞳の輝きが消えたまるで催眠術にかかったような少女。
「お久しぶり・・・ですかね?潰したはずの暁教団さん」
「ああ、本当に久しぶりだな。我らが憎き敵よ」
金髪の男が顔を歪ませ、そう告げた。
□ ■ □
―――暁教団とは?
院長『暁』を長とした超能力者研究機関です。
もちろん、政府公認なわけもなく、その活動はほとんどが犯罪行為。超能力者の人体実験など当たり前であり、たまに研究成果の発表と称して超能力者のテロを引き起こす。
それだけでも十分厄介ですが、この暁教団は厄介な点がもう一つあります。
それは、教団自体では超能力を否定しないことです。
たいていの研究機関は超能力の消滅、もしくは無効化を目指しています。学園島でもそうです。
しかし暁学会は超能力を神が与えた崇高なる力として信仰しており、最終目標は超能力の進化となっているそうです。
「―――それで?穴倉での研究をせずにここで何で油を売ってるんですか?それともあの馬鹿みたいな研究は成功したのですか?」
「あの拠点はどこかのだれかが密告したことにより、軍が押しかけたため廃棄となった」
私の言葉に返答することなく、テロリストは一人で語り始めました。
そういえば、彼らは全員妙にロマンチストでしたね。あまりいいロマンは誰も持っていませんでしたが。
「しかし!我らの意思は途絶えはしない!消えていった同志のため、偉大なる宗主のため、我らは必死で生き延びてきた!」
「だが、非情にもあの時の魔女は我々が積み上げてきた研究を全て奪っていた!」
まるでオペラのようにテロリストたちは語り始めます。
歌うように、そこに本物の狂気を篭めて。
「魔女は恐れたのだ、我々の研究が自分の命を脅かすものだと!」
「その判断は正しい!神から授かりし偉大なる力を理解しようとせずこのような監獄まがいの島に閉じ込めるなど、宝の持ち腐れでしかない!それは天の意思に逆らうという大罪だ!」
「よって、ここから我々の復讐と裁きが始まる!さあ、始動だ!」
大仰なセリフを吐き続ける男は白衣の中から無線機を取り出し、なんらかの暗号を打ち込んだ後ボタンを押した。
その瞬間、編入生は小さく震え始めました。
「貴様は魔女の手下の中でも、最強の存在、よって、ここで貴様を消すことで我らの実験は完成する」
編入生の背中から生えた翼が全身を包み込み、まるで蛹のように闇のように黒が巻きついていく。
繭のように固まった黒い塊はどくんどくんと胎動をし始める。
まるでそれは、悪魔の卵のようにも見えるだろう。
「さあ目覚めよ我が研究成果よ!世界にその価値を示してくれ!」
「そして、今日は最高の記念日だ!ここに、祝いの言葉を送ろう!」
黒い塊が胎動を始め数秒経過したころ、ついにその繭が解かれた。
背に生えたこうもりのような翼はさらに大きくなり、その中から現れたのは目を疑うような美少女。
漆黒の髪は白銀どころか白金にも負けぬ純白の輝きを放つ髪に、魔物のような金の瞳は血に染まったような真っ赤な瞳に。
傍目から見ても美しく、百人に聞いても百人が美しいと答えるだろう。
だが、今の彼女を見てもそう答えるものは少ないだろう。
何故なら、その口元は狂気に歪み、その瞳からは光が失われていて、どうみても人形にしか見えないのだから。
テロリスト兼マッドサイエンティストは狂気の雄たけびを上げる。
「「―――ハッピーバースデー!ディアボロスディスカパネ」」
―――パンッパンッパンッ。
廃工場の中で、三回銃声が響き渡った。
終わりまであと少し・・・頑張れ俺。
失踪だけはするな・・・!