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交渉

初めての予約投稿。

できているかな?

 孤独って、どう思いますか?


 常日頃から人に囲まれながら過ごしている人は、『寂しいもの』と答えるでしょう。

 常日頃から一人で過ごす人にしてみれば、きっと『安心できるもの』と答えるでしょう。

 孤独ということは、誰も周りにいない。つまり、仲間も友もいないということです。

 それを寂しいもの、と捉える人はきっと協調性が高く、そして周りからも信頼される明るい人なんでしょう。

 それを安心できるもの、と捉える人はきっと協調性がなく、敵の多い暗い人なんでしょう。

 つまり、何が言いたいかというと・・・


「・・・・・・なんで、見られてるんですかね」


 常日頃から誰にも気づかれることなく会話どころか挨拶すらできない私にとって、後ろからくるまとわりつかれるような視線は、非常に不愉快かつ不快ということです。

 若干呆れながら右斜め前を見ると、そこにはこちらを凝視し続ける編入生が。

 あの目は疑いながらも確信している・・・ギリギリ私のことが見えているみたいですね。

 それにしても、授業中なのに本当に遠慮ありませんね。

 編入直後の一番授業をまともに受けてくれる時期に、一切黒板見てもらえなくて数学担任の玉ちゃん先生が目を潤ませながら悲しんでいるじゃないですか。あの悲しげな目が見えないんですか?

 まあ、能力による副作用なんですけど。確か感覚遮断の煙幕つかいでしたっけ?あれすごいんですよね、あの煙幕を使われると外からどんな感知能力を使っても中を調べることできませんし、煙幕の中にいると自分の能力が使えなくなるんですよ。

 その能力と人格を買われて、現在この学園の教職についているらしいです。

 教師は全員、学園長が直々に生徒から選抜してますからね。裏切り者や内通者が出ることはありません。

 なんて言ったて、読心者が学園長の側近には居ますからね。あの人は私でも苦手です。

 まさか私も、心を読まれることで自分の居場所がバレるとは思いませんでした。

 ステルスを強めれば、心を読まれることもなくなりますから大丈夫なんですけど。

 周りの生徒も不思議そうに編入生を見ていますが、ほとんどの生徒はチラ見するだけで終わっています。

 わかります、関わりたくないんですね。発言がいろいろとあれでしたし。

 ちょっとウザったくなってきたので、ステルスを強めながら教室を出ていきます。

 流石に授業中に教室から出ていくなんてことはしないでしょう。えっ、お前はどうなんだって?

 いいんですよ、出席確認なんてされていないんですから。

 それでは、今日は天気がいいので屋上にでも行くとしましょうか。



 後ろからついてくる編入生を連れて。




   □ ■ □




〈side ディア〉


 最初に見たとき、それはひどく不安定なものであった。


 英雄の名を騙る魔女に連れられてきた場所は、おそらく人類であるなら誰もが知っているぐらい有名な学園であった。

 入学、もしくは編入条件は世界中の学園の中で最も簡易でどんな凡人でも理解でき、しかしその条件を達成できるものはどんな天才であっても不可能。

 何故なら、この学園の入学条件は超能力者であることだから。

 その条件が満たせたのならば、最底辺の高校にすら入学できなかったものでも入学でき、逆に言うならば世界最高水準の大学を首席で合格できるものであっても入学できないのだ。

 一部のものにはこの学園に入ることを名誉に考えているようだが、私はそう思わない。

 所詮学園だなんだと取り繕うと、内側の思惑はあからさまだ。この学園は、牢獄なのだ。

 第三次世界大戦の原因にて、最悪の被害をもたらしたものたち―――超能力者。

 人々はその力を恐れ、そしてそれを遠ざけようとこの学園(ろうごく)を作ったのだ。

 

「それでは、まずはこの書類にサインを・・・」


 いくつもの書類に署名をさせる事務員の声を適当に聞き流しながら、周りを見渡す。

 ここの人間もいくつかは普通の人間みたいだが、何人かは超能力者が混ざっている。 

 腹立たしいことだ、虫唾が走る。

 私は、超能力者が憎い。

 私の小さな幸せを奪っていた超能力者が憎い。

 そして、それは自分自身も例外ではない。自分が超能力者であるせいで、こんな私でも受け入れてくれた両親に迷惑をかけてしまったことに吐き気がする。

 思わず表情に出てしまいそうなその感情を抑えるために、フードを引っ張り深く被る。

 事務員が言うには、魔眼系の超能力者は自身の能力で周りに被害を与えないようフードか眼帯か何かで目を覆っているらしい。

 もしもそのような格好をした能力者にあったのならば、迂闊に目を覗くなどの行為は慎めと。

 つまり、私もそのような格好をしておけば、絡まれないということだ。私の能力も、事務員が言ったものと同種ようなものであるから、その格好を咎められることもない。

 それにこれは、私も周りの超能力者も、双方にとって得のあることだ。

 もし、超能力者に絡まれようならば、殺意を抑えきれる自信が私にはない。

 悪意があるのならば構わないが、善意で近づいてきたものを殺すのは忍びない。例え、それが超能力者であってもだ。

 それに、万が一殺害などしてしまえば両親には二度と会えなくなる可能性もある。

 それは、なんとしても避けたい事態だ。私も、あの魔女の能力に干渉することはできないからな。

 必要な申請を終え、保安部隊と呼ばれている黒服達に囲まれながら用意されたホテルに移動する。

 このホテルにも、何人か超能力者がいる。うまく隠そうとしているようだが、私には丸見えだ。

 外側をいくら繕っても、内側が全て透けて見えているのだから。私の()に偽造工作は通用しない。

 再び不機嫌になりながら、足早に部屋を目指す。

 ホテルの従業員達も慣れているのか、丁寧な態度で案内をする。私に付き添って歩く従業員には超能力者はひとりもいない。本当に私のような客に慣れているようだ。

 シャワーも浴びず、ベッドに飛び込む。

 もうここは、あの魔女の領域。好き勝手に動くことはできない。

 退屈つぶしに外を眺めているとき、それが私の目に映った。

 影が動いているのだ、それも立体的に実体を持って。

 頭の後ろから尻尾のように髪を流した男の影は、川の流れに乗った流木のように歩いていく。

 それは周りに完全に溶け込んでおり、その動きに気づいたものからしてみれば不自然極まりない歩き方だ。まるで、自発的に目立たないように行動している暗殺者にも見える。

 しばらく店頭で何かを見ていた影は、ふと顔を上げこちらを見た。

 気づかれたか?そうも思ったがここから影までの距離は余裕で一キロ(・・・)を超えている。気づかれるわけがない。

 案の定、影は私が見ていることがわからなかったようで、直ぐに視線を道に戻し歩き始める。

 あれはなんなのだろうか?周りの人間が反応していないことから、あれは異常ではないことがわかる。

 だが、あのような能力はきいたことがない。

 影の能力者だろうか?さっきから直立不動で立ち続けている黒服どもに聞いてみるか。


「影・・・でございますか?残念ながら私は聞いたことがありませんね。おそらく私が知らないということは、そのような能力者が存在しないか、もしくは幻術系の能力を持った生徒の悪戯かもしれませんね」


 思ったような答えは帰ってこなくて残念ではあったが、最後に呟いた言葉がやけに頭の中に残った。


「・・・ああ、そういえば。刹那様が意図的に能力詳細を明かしていない能力者がいますから、そちらかもしれません」


「・・・どういうことだ?」


「私たちは正体不明(ブラックボックス)と呼んでいます。本当は別の名前があるようなんですが、表には滅多に出ない能力者ばかりですからね。それでも問題を起こすこともありませんし、むしろ裏で率先して生徒たちを鎮圧してくれるので、我々としては助かっているのですよ」


 黒服の話を聞く限りは、危険なものではないみたいだ。だが、それでも安心はできない。

 あの魔女がわざわざ隠蔽するものだ、きっとなにか重大な秘密が隠されているに違いない。

 調査してみるのも、あの魔女の鼻を明かせそうで面白そうだ。

 

 

 

          *




 翌日、私は黒服たちにこれまた黒のベンツに乗せられ移動させられた。

 今まで一度も乗ったことがないような高級車ではあったが、嬉しいという感情は全く思わない。

 これから私が行く場所はこの学園の高等部だそうだ。

 なるべく問題を起こさないようにと注意は受けているが、右から左へと聞き流しておく。

 問題を起こすのは私ではない、他の生徒だ。

 私自らが、何故あいつら超能力者に絡まなければいけないのだ。そんな非生産的なことに私はエネルギーを使いたくない、

 周りの生徒からの好奇の視線をうっとおしく思いながらベンツを降り、魔女の部屋に向かう。

 黒服たちに囲まれるのは少々罪人のようで不愉快だが、逆らうわけにはいかない。

 魔女の部屋の前、そこで私は気づいた。誰かに後ろからつけられている。

 相手に感づかれないようにフードを少し上げると、そこにいたには昨日の影であった。

 何故ここに居る?いや、いつからつけられていた?

 驚愕しながらも冷静に判断し、フードを下ろす。こちらが気づいていることを感づかれた場合、始末される可能性がある。

 あの魔女がわざわざ隠す能力者達だ、魔女の息がかかっていないわけがない。あれはきっと私の監視だろう。

 その後、魔女はなにか喋っていたようだが、あまり覚えていない。

 影が何をしでかすか、気が気でなかったからだ。結局、卓上の菓子をひとつ奪って行っただけだが。

 あれだけ目立つことをしても黒服も大した反応をしていなかったことから、あれは私以外には見えていないみたいだ。

 あれはいったい何なんだろうか?足音も呼吸音もしなければ、心臓の拍動の音も全く聞こえない。

 もしや最先端技術による光学迷彩のロボットか?そうも考えたが、あれほどのものをわざわざ必要ないのに動かすなんて考えられない。

 疑問だけが頭の中でぐるぐると回り続ける。

 

  

 

          *

 

 

 

 教室に向かう時、気味の悪いうすら笑いを浮かべ続ける私の担任と名乗る男―――栗城だったか。が、小声で注意をしてきた。

 耳元に顔を持ってきたので、わざと栗城に見えるように顔をしかめてやったが、余計に笑みが増すだけであった。気持ち悪い。


「俺が担任のときは大人しくしておけ、後問題は起こすなよ。責任取らされるのは俺なんだから」


 徹底的に自分のことだけの話であった。責任をかぶりたくないのなら、教師なんかやるな。 

 そう怒鳴りそうになるのを根性で堪え、あえて教室の外へ待機する。


 そして、私はあえてこの忌まわしき能力を使った。


 黒い霧が全身を包み、景色が一瞬歪むと同時に教室の中に移動した。

 これは牽制だ。人間は正体不明のものを忌避する傾向にある。

 そして、現在世界でもっとも正体不明なものは超能力者だ。科学では決して説明できない現象を単体、しかも息をするようにこなす超能力者は、もっとも忌避される対象。

 そして、それは同類である超能力者も例外ではない。誰だって自分の知らない能力を持つ者は恐怖の対象でしかない。

 そこで私は少しばかり能力を見せておくにした。私の能力は幸いかどうかはわからないが、発動時の見た目が邪悪だ。もちろん中身もそうだが、全部見せてしまったら対処法がとられてしまう可能性がある。

 だから、あくまで見せるのは一部だけ。平和ボケした生徒程度なら、これだけでも恐怖で近づくことはないだろう。

 

「名前はディアというらしい。それじゃあ自己紹介だ」

 

 栗城が、私をチラッと横目で見る。

 自己紹介か・・・ふむ、これも重要だな。内容は既に考えてある。


「・・・・・・私に関わるな。そして、命が惜しいのならば話しかけるな、以上だ」


 教室の空気が私の発言により固まる。もちろん冗談など混ぜているわけでない。

 正真正銘、近づいてくるなら殺す。その言葉に偽りなどない。

 用意されていると思われた席に向かう中、影が教室から出て行くのが見えた。

 あれは私の監視役ではなかったのか?よほど急いでいたようだが・・・なるほど、理解した。

 今の状況を魔女に報告か・・・ずいぶんと飼いならしてあるものだ。

 全く持って、忌々しいものだな。魔女め・・・。




 同じく超能力者である教師の授業を右から左へと流していると、気がつけば授業は既に終了していた。

 まだ一時間目が終わったばかりであるが、さっさと教室を出ていく。こんな能力者だらけの場所にいるなど、気持ちが悪くてしょうがない。

 教室を出て屋上にでも行こうかと思案していると、大柄な猿のような顔をした男が立ちふさがった。

 

「おいお前、確か編入生だよな?」


 ゴリラのような男は下卑た笑みを浮かべながら問いかけてくる。こんなものは無視だ。

 しかし、前に行こうとしても男が立ちふさがる。なにがしたいんだこいつは。


「無視してんじゃねえよ、後フードなんかかぶってんじゃねえ。先輩に対しては礼儀ってもんがあるだろ」


 どうやらこの気持ち悪い顔をした男は私よりも上級生であるらしい。私にとってみれば、だからどうしたという話だが。


「聞いてんのかてめえ!」


「話しかけるな猿。貴様のために時間を割くことなど、時間の無駄でしかない。これ以上この茶番を続けるなら殺すぞ」


 一瞬、何を言われたのか理解できなかったのか猿はきょとんとした顔をしていたが、私の言葉を理解したのか徐々に顔を赤めていく。

 本当に、この程度の言葉を理解するにも時間がかかるとは・・・見た目だけでなく頭の中も猿だな。


「なめてんじゃねえぞクソちびィ!」


 ゴリラが叫ぶと同時に、何事かと周りに野次馬が集まり始める。しかし、誰も私を助けようとはしない。先ほどの私の自己紹介が伝わったのだろう、彼らは私に関わりたくないのだ。それは成功だと内心少しばかり喜ぶが、逆にこのような屑どもがからむようになると考えると頭が痛くなってくる。

 しょうがない、あまり気が向かないが半殺しにして転がしておこう。

 そう決意し、行動を開始する・・・そこで私の動きは止まった。

 小さな玉のような物体が、目の前のゴリラに突き刺さったからだ。

 小さな玉はゴリラの喉に命中し、ゴリラは何が起こったのか理解できず、もだえ苦しむ。

 誰がやったのか、それは振り返るまでもなかった。自ら目の前にやってきたのだ。


 あの影が。


 風に乗るようにふらりと現れた影は、ゴリラの腹に蹴りをたたき込み、その場を去っていた。

 あまりにも鮮やかすぎる手際、あれは日常的にこなしている、慣れている動作だ。

 周りの生徒は突然苦しみだしたゴリラに怪訝な目を向けるが、喧嘩が終わったと察した生徒たちは蟻のように散っていく。

 生徒たちが元の席に戻っていく中、ただ一人私は影を見つめていた。

 なぜ私を助けた?普通ならばあそこで私の力を計るために、手を出さず観察するはず。

 私は、影への疑念が私の中でぐるぐると渦巻き変わっていくのを感じた。

 

 

 次の時間に戻ってきた影を、私は観察してみることにした。

 周囲の生徒たちは何事かと視線を向けてくるものの、私が視線を向ければさっと視線を黒板に戻す。

 全く・・・意気地無しばかりだ。つまらない。

 しばらく観察を続けると、影の色が急に薄くなり始めた。

 見失ったかと思い、よく目を凝らす教室を出て行こうと扉に手をかけているのが見える。

 逃げるつもりか、そう思い私も席を立ち後を追いかける。

 急に影が薄くなり始めたことから、奴はなんらかの能力を使ったはずだ。つまり、奴は私のことを撒いたと油断している。

 今ならば私の尾行もばれていないはず、足音を極力消すように歩いて後をつけていく。

 影が一度も振り返ることなく一直線に向かった場所は、屋上であった。

 少しばかり風が強いその場所で、影は尻尾のように纏めた髪をたなびかせ、私に背を向けたまま問いかけてきた。

 

「―――それで、私に何か用でもあるのですか?」  


〈side out〉



   □ ■ □




「―――それで、私に何か用でもあるのですか?」


 私は後ろに振り返ることなく、問いかけます。

 相手は特に驚いた様子は見せません、気づかれていたことはわかっていたのでしょう。というか、見つけるなという方が無理ですよね、なんて言ったってその背中についている大きな翼がはみ出ているんですから。

 もしくは、表情に感情が出にくいかのどっちかですね。


「・・・いつから、私が貴様をつけていると気づいた?」


 ・・・反応に困りますね。まさか、表情に出にくいだけとは。


「能力上、私は少々他人の視線に敏感なんですよ」


「それは、誰もが貴様の存在に気づかないことも関係しているのか?


「さあ?そんなことはわかりませんね」


 一応意味はないかもしれませんが、シラを切っておきます。

 能力の詳細を知られるのは、少々面倒くさい自体になりますからね。

 具体的に言うと・・・


「何をとぼけ―――」


「―――おっと、これは独り言ですが、君子危うきに近づかず、という諺・・・どんな意味でしたっけ?」


「・・・ちっ」


 舌打ちをしながら睨みつけてくる編入生、フードで相変わらず目は見えませんが、雰囲気だけで見れば丸分かりですね。

 それにしても甘い甘い、そんなわかりやすい思考ではこの学園は生きていけませんよ?

 もちろん、死ぬことはありませんがね。そんな生徒に毎年死者が出る学校なんて、某国の暗殺者専門学校しか聞いたことありませんよ。

 幸いにも、この学園には死者ですら生き返らせそうな養護教諭がいますけど。

 

「・・・少々うっとおしくあるので、後ろからこそこそ見てくるのはやめてくれませんかね?」


「私が何をしようと私の勝手だ」


 おう、なんというジャイアニズム。ガキ大将もびっくりですね。

 でも、いつもならこれで終わりにしているかもしれませんが今回の場合はこれで終われないんですよね。

 何と言ったって、私を何故見つけることができるのかを知らなければいけませんから。


「あなたが何故わたしを見つけられるか、教えてくれますか?」


「なわけないだろう。何故自分の手札を貴様に明かさなくてはならない」


 これは少々・・・いや、結構困りました。

 私のステルスは、強くすればありとあらゆる探索方法を使っても見つからなくすることもできますが、それでも能力の副作用が面倒くさいのでそれはあまりやりたくないのです。いわば最後の手です。

 別の対処方法といえば私のステルスは少し特殊なので、どんな探知方法かを自分で知っているのならば例えどんな強力な探知方法でも通常のステルスで見つからなくすることができるというのがあります。

 例えばそれが赤外線探索と知っていれば、一部の隙もない赤外線の滝が仕掛けられたシェルターの中にも通常のステルスで悠々と入ることができます。

 だから、現在のように今の私では対応できない、未知の探知方法を持っている場合は極力知らなければいけません。

 どうにかして、情報を出させる方法はないでしょうかね・・・そうです。


「では、取引をしましょう」


「取引だと?」


「ええ、取引です。あなたは私を何故見つけられるかの理由を言う、そして私はあなたが言った情報の重要度に応じてあなたの質問に何でも答えます。どうでしょう?」


「何を馬鹿なことを・・・貴様が圧倒的に有利ではないか」


「そうです。でも、私は別に受けなくてもいいんですよ?なにせあなたの首を取れば、こんなことをわざわざしなくて済むんですから」


 瞬間場が凍りつき、威圧感が空気を殺す。

 編入生のほうからは凍えるような鋭い殺気が、私からは地面から染み出るような殺気が、互いに行動をけん制し合います。

 う~ん、脅し的な意味で言ってみたんですが、逆効果でしたかね?

 どう始末をつけようか悩んでいると、編入生は殺気を発することを急にやめました。

 おや?これはもしかして・・・


「・・・いいだろう。貴様の言う取引とやらを受けてやる。だがルールは少し変更させてもらう。私が貴様に開示した情報量に応じて、貴様も私に情報を開示しろ。それが条件だ」


 ちょっとルール変更した意味が気になりますが、まあ落とし所ですね。

  

「いいでしょう。その条件を受けます」


「ふん、では私からだな」


 不満げに鼻を鳴らしながら、編入生はフードを取り去りました。

 フードを取り去ったことにより、腰までありそうな黒の髪が空中を舞い、同じく蝙蝠のような黒い皮膜の大きな翼を一度羽ばたかす。

 顔は贔屓目に見ても美少女。百人が見ても千人はそう答えるでしょう。つまり、聞かなくても言ってくるということです。

 しかし、特徴的なのはそこではありません。

 そこには、爬虫類のような瞳孔をした金の瞳が浮かんでいました。 


「私の名前はディア。ディアボロス・ディスカパネ。保持能力は【吸血鬼姫ブラッティープリンセス】だ」


 その言葉に思わず硬直してしまいました。

 魔属なのはわかっていましたが・・・まさか、変身系幻想種の複数能力一体型(フルセット)でしたか。


やっとでたよ編入生の本名。

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