編入生
とりあえず、もう訂正しなさそうなので投稿。
他はまだ訂正中。
ジリジリジリと目覚まし時計の音が騒々しく鳴り響く。
といっても、あくまでその時計は部屋の主人が雰囲気のためにつけただけであって、目覚ましの対象はすでに一時間ほど前に起きていた。
「・・・今日も、いい朝ですね」
優雅に紅茶を飲みながらぼそりとそう呟いたのは、一人の少年・・・いや、青年。
男であるのに髪は肩を超えて腰まであるほど長く、頭の後ろで尻尾のように束ねられている。
顔もそれなりに整っており、だいたい上の下といったところであろう。
しかし髪の色と眼の色が異常であり、両方とも黒曜石を思わせるような黒であった。
普通ならそれはもっとも一般的であり、もっともありふれた色であるがこの場所にはあまりにも不釣り合い。
なぜならここは世界に名高き最凶の危険地帯―――学園島なのだから。
□ ■ □
――――――学園島
それは、第三次世界大戦終結の立役者、英雄『刻ヶ崎刹那』により作られた太平洋のど真ん中に存在する島であり、そして島全体を使った学園でもあります。
なんとこの学園は世にも珍しき世界立であり、世界中の国(一部の貧民国を除く)の支援で創設されたこの学園は、どのような大国であろうと学園に干渉することはできないとなっています。あくまで表向きにはですけど。
(どれだけ法に訴えても、無視する輩はいくらでも出てきますからね)
流通は島から大陸へと伸びる四本の道によって保たれており、この学園には日々さまざまな物資が届きます。
たいていは食料や生理用品などの消耗品ですが、希に混じって爆弾や脅迫状などが届そうです。全て大事になる前に無力化されるていますが。危険確認のための透視能力を甘く見すぎていますよね。
そこまでこの学園が嫌われている理由、それはこの学園の生徒が全員普通の人間ではないからです。
いわゆる超能力者、第三次世界大戦の原因となった超常現象を操る人間というわけです。
まあ、それ以外は対して普通の人間と変わらないんですけどね。それでも、超能力が強力すぎるってのもあるんですけど。
ちなみにこの学園、流石に世界立だけあって幼小中高大のすべてが揃ったエスカレーター式でありながら、なおかつ教育設備はそんじょそこらの学校とは比べ物にならないほどという、素晴らしいものとなっている。
世間では、この学園を卒業できることが一種のステータスという認識もあるぐらいです。
「まあ、それでも努力しなければ大して使い物にならないんですけどね」
そんなことを誰につぶやいているのかも分からず、学生のためにしてはやたらと豪華な寮を出て学校に向かいます。
現在私が通っているのは高等学部です。まあ、幼小は通ってないんですけどね。
遠くから見てもわかるぐらいの綺麗な校舎、創立何十年と立っているのに全く汚れないってのも超能力のおかげであるんですかね?
ふと空を見上げれば空中を走行する生徒が、校門の前には突然虚空から出現する生徒が、後ろを見れば、車のごとき疾走で駆け抜ける生徒が。
あいも変わらず自分の能力の危険度を理解せずに便利な道具扱いで使いまくっている生徒ばかりですね。
こんなこと風に使いまくってるから、一部の宗教団体から、学園島は超能力兵士を養成するための施設だ、なんてわけのわからないを言われるですよ。わかってるんですかね?
まあ、常時展開している奴が言うなと言われることはわかってますけど。
ここで、少し遅めの自己紹介を。
私の名前は、十影です。苗字は無し、本当はあるんですが名乗る気もありません。
保有している超能力は二つで、一つはステルス能力でもう一つは・・・まあ、また今度でいいでしょう。利用頻度もそれほど高くありませんし。
超能力の二つ持ちは、それほど珍しくありません。十人に一人ぐらいの程度です。ああでも、三つは現在五十人ほどしか確認されていませんが。
それも、能力を多数持つと必ず能力に欠陥ができるので、あまりいいとは言えませんね。
普通の人間として生きるのならば、そっちのほうがいいかもしれませんが。
しばらく歩いていると、黒塗りのベンツが裏口から入っていくのが見えました。
これは・・・編入生ですかね?面白そうです、行ってみましょう。
こういう時、ステルスって役に立ちますよね。
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後ろからついて行ってみれば、ビンゴ。編入生のようです。
髪の色は私と同じ黒ですが、どうやら背中には翼があるみたいです。悪魔っぽくてかっこいいですね。
性別は女、瞳の色はフードを深くかぶっていてよく見えませんが、覗き込むことはしません。
どんな能力を持っているかわからないですからね。前うっかり魔眼系で最も凶悪な【石化蛇瞳】持ちの少女のの目を直視した生徒が死にかけましたからね。
あの時はやばかったです。石化ってすごいですね、一気に凍りつく感じで石になるんですよ。
死にかけた生徒はなんとか保健室の超能力者の先生に力を借りて治していましたが、それ以来人の目を見るのがトラウマになったそうです。どうやら、【石化蛇瞳】の目には相手の石化だけでなく恐怖も植え付ける効果があるみたいですね。どうでもいいですが。
学園保安部隊の黒服に囲まれた少女は、まるで連行される犯罪者ような雰囲気を漂わせ廊下をいきます、やはり、途中から入ってくる生徒は皆暗いやつばっかりですね。気持ちはわからないこともないですが。
そしてたどり着いたのは、重圧な金属の扉で閉ざされた一室―――学園長室。この島の全権を握っている英雄の部屋です。
保安部隊が懐から出したカードキーを扉に差し込むと、ゆっくりと開き始めます。
ステルスを常時張ってあるので後ろから堂々とついて行き、中に入っていきます。
ええ、かなりの感知系の能力じゃないと私のステルスは破れないんですよ。
久しぶりに来た学園長室は、やはり学園島を統括している長の部屋だけあって高級感が漂っています。
テーブルの上に置いてあるあのお菓子は、確か世界でも有名な菓子店のものですよね。一個もらっていきましょう。
高級菓子をポケットに一個入れ、普段から常備している飴を口に入れて転がしながら、部屋の長のを見る。
真っ白な長い髪に、これまた真っ白な瞳、いつみても死んだ魚のような目にしか見えないですね。顔立ちはいいのに残念です。これが残念美人というものでしょう。
ぞっとするほど綺麗な顔を眺めながら、飴を口の中で転がす。うん、やはり飴はサイダー味が一番ですね。
「初めまして・・・ではなく、こんにちはかな?ようこそ、私の学園島へ」
少し低いアルト声を静かに響かせ、編入生へ話しかける学園長。オペラ歌手みたいな声ですね。
「・・・・・・・」
それに対して、編入生はフードもあげることもせず静かに学園長を見る・・・いや、雰囲気からして睨んでますね。
やはり、学園長が外で見つけてきた生徒でしたか。
途中編入組は、たいていは親が子供の可愛さに政府に届出をださずに育ってしまった場合が多いです。まれにマフィアが戦力として確保している場合がありますが。
そのため、超能力者ということで連れて行こうとする、子供は親から離されるのに拒絶するんですよね。
親も自分の子可愛さに連れて行くことを拒絶してしまい、無理やり連れていくしかない、その役目が学園長なんですよね。まあ、学園長でもないと取り押さえれませんからね、この汚れ仕事にはぴったりです。
「恨みたければ恨むがいいわ、そうでもしないといろんな所に迷惑がかかる可能性もあったもの。それだけあなたの能力は危険なものなの。それと、永遠にここにいなければいけないということじゃない、能力が完全に消えたのならばいつ出ていってもいい、そう確約したはずよ。更に言えば、この学園はいろんなものが揃っているわ。将来のためにも経験は大事よ」
「・・・・・・・」
「・・・まあいいわ。あなたの寮は保安部隊の方に案内してもらうから、いい子にしてるのよ?それじゃあ、下がっていいわ」
「・・・・・・・」
編入生は、一度も言葉を発することなく扉を開けて、早足で・・・ん?何か視線を感じたような・・・気のせいですかね?
たかが編入生程度が私を見つけられるわけありませんし、きっと気のせいでしょう。
それにしても・・・大丈夫なんですかね?挨拶もお辞儀もなし、やったことといえば学園長を睨んだことぐらいですよ。協調性とか大丈夫なんでしょうか?
でもまあ、最初の方はあんなものでもそのうち慣れますからね。やはり、同じような境遇の仲間に囲まれるのは精神的にもいいんでしょう。
小さくなった飴を噛み砕き、テーブルの上に置いてある高級菓子に手を伸ばす。誰も食べてないからいいですよね。
「・・・別に隠れて取ろうとしなくたっていいのよ」
「おや、気づかれてましたか」
「当たり前でしょう、自分から飴を砕いて教えてくれたじゃない。それに私が唯一止めることのできない生徒、そんな生徒を対策もせずに放置しておくと思う?」
「私なら、さっさと始末してしまうと思いますよ」
「してほしいの?」
「やれるものならどうぞ」
学園長の方を見ることなく、高級菓子の袋を開けて食べていきます。中身は、クッキーみたいなパンみたいな生菓子ですね。流石ブランド物だけあって実に美味です。
紅茶かなにか飲み物が欲しくなってくる味です。
「・・・まあいいわ、それであなたに頼みたいことがあるんだけど」
「なんでしょう?」
「さっきも見ていたから分かると思うけど、あの子を少し気にかけておいて欲しいの。ちょっと、普通の生徒とは違う能力だから、気になっちゃてね」
「ここに居る生徒に、普通の生徒なんかいませんよ」
「大人の揚げ足を取らないの。それで、どう?できる?」
「できると言ってしまえばできますが、私でなくてもいいのでは?」
正直に言うと、性別が違うと色々面倒くさいですよね。
「他は皆出張中よ、今ここにいる信頼できる生徒はあなたしかいないの」
「いい言葉ですね、信頼。・・・なんか私が思わず心を釣られるような報酬はあるんですか?」
「今食べているお菓子。予約一年待ちで滅多に手に入らなくて、お金積んでも作ってくれない貴重なものなのよ」
「なるほど、思わず罪悪感が釣られてしまいましたね」
「それは嘘として、借り一つじゃだめかしら?私の借りは大きいわよ」
「・・・・・・いいでしょう。それでは、お仕事頑張ってください」
できれば、精神的に苦痛な仕事を。
面倒事押し付けて・・・私が拒否できないことを知っているくせに頼むなんて性格悪いですよね。
「心にもないことを言わなくてもいいわよ。それじゃあ、また今度ね」
開きっぱなしのドアをくぐり抜け、足早く教室に向かいます。
どうせ学園長のことですから、編入生のクラスは私のクラスでしょう。
まあ、遅刻しても問題ないんですけどね。どうせステルスで認識できなくて出席確認なんてされないんですから。
ああ、でも裏のほうから色々と操作しますから、出席日数は大丈夫ですよ。
昔はいろんなで活躍しましたから、色々と借りがいろんなところにあるんですよ。
□ ■ □
予想通り、編入生は私のクラスでした。いくら時間操作でも、某猫型ロボット的な使い方はできないはずなのに未来が見えてるんでしょうか?いや、どうせ最初から押し付けるつもりだったのでしょうね。
「おい知ってるか?」
「ああ、今日の教室の教卓に電卓と卓球のピンポンが剣に串刺しになって置いてあったことだろ?
あれは、誰がやったのかが今の争点だな。俺的には担任への嫌がらせだと考えている。
だってうちの担任、電卓使えないし卓球が苦手だったろ?それをわざわざ剣で串刺しにしたのは使えないことを示唆している。それを教卓に固定してあるんだ。これは確定だろ。
それに―――」
「いやいや、そっちじゃなくて編入生のことだよ」
「・・・・・・・・・・・・・」
なんか、前の方男子たちが微妙な雰囲気になってますね。この雰囲気はあれです、自慢げに披露していたことが意外と受けなかった時にこんな雰囲気になりますよね。
ちなみに窓際の一番うしろが私の席です。クラスのみなさんからは、何故か放置されている謎の席として認識されてしまっていますがね。
しばらく待つと、白衣を身にまとったボサボサ頭の中年が入ってきました。担任の栗城です。
顔はいいんですから、もうちょっと身だしなみに気をつけたほうがいいとおもうんですよね。
この学園は、残念美人しかいないんですかね?
「みんな知っているかもしれないが、今日は編入生が来る。この学園に来たばかりで不慣れなところもあるだろうから、みんなサポートしてやれ。それじゃ、入っていいぞ」
そう言った瞬間、黒霧が栗城の横で発生しました。中から薄らと先ほどの編入生が見えることから、あれが編入生の能力ですかね?テレポート系ですか?
「名前はディアというらしい。それじゃあ自己紹介だ」
そう言い栗城がディアさんを促すと、コクりと可愛らしく頷いて一言。
「・・・・・・私に関わるな。そして、命が惜しいのならば話しかけるな、以上だ」
瞬間、凍りつく空気。
学園長、やっぱりさっきの菓子の分だけ金払いますので、依頼取り消してもいいですか?
一日千文字。三日で三千文字。
三千文字書いて、千五百文字訂正する。
ということで、全く進まない。
文字数は多いんだけど・・・逆に見にくい。