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プロローグ

季節ものなので、記念に書いてみた。

他のが行き詰まったら、更新します。

 世界でもっとも広い場所、いや海、太平洋。

 そしてその太平洋のど真ん中に浮かぶ島―――学園島。

 これはそこに生活する生徒たちの、極めて日常的に見ることのできる一般的な光景。







   □ ■ □







「ざけてんじゃねえぞごらっ!」


「んだと殺すぞてめえ!」


 ガシャンッ、机が蹴り上げられる激しい音と耳に響く不協和音のような醜い罵り合い。

 相対するふたりは、どちらもあまり知性を感じさせない服装をしており、顔もひどいもの。

 耳や唇にはピアスなどの金属の輪が大量につけられており、罵詈雑言が飛び出すごとにジャラジャラと騒々しい音を鳴り響かせる。

 しかし、周りの人間はそれに対して反応することはない。

 後ろを振りかるぐらいはするが、すぐに近くの友人との話と戻ってしまう。彼らにとってこのことは優先順位は限りなく低い。

 その顔にはいちように同じ言葉が語られている。―――ああ、またか、と。

 そうこの学校の生徒はこのような口喧嘩は日常茶飯事。 

 ただの口喧嘩で教師を呼ぶことなどしない。

 しかし、生徒たちにとって予想外の出来事が発生した。


「死ねやカスッ!」


 赤髪の不良生徒が切れて、殴りかかったのだ。

 それだけではない、赤髪の不良生徒の拳には普通ならばありえない()がまとわりついていたのだ。

 轟っ!と音をたてながら炎の拳は、相対していた鈍色の髪の不良生徒に衝突し、周囲に爆炎をまき散らす。

 そのことに気がついた生徒は、やっとのこと逃げ始めた。

 しかし、それは慣れたものであり、パニックに陥った烏合の衆の動きではない。

 あまりにも慣れすぎたその動きは、何度も経験されたものであり、生徒たちの顔色に恐怖はない。

 彼らの表情に見えるものはうんざり、呆れといったものだけ。彼らの思考にあるのは、逃げて巻き込まれないようにするためであり、本来なら存在するはずの鈍色の髪の不良生徒を心配するといったものはない。

 多少心配している生徒はいるかもしれないが、それは最近この学校にやってきたものだけだ。

 長年この学校にいるものは、その心配が必要ないことを知っている。

 

「はっ!随分としょぼい火種だなぁ!」


 それを表すように、燃え盛る炎の中から鈍色の人型の物体が現れる。

 全身が()でできた人影―――それは先程まで赤髪の不良生徒と罵り合いをしていた不良生徒だ。

 その鉄でできた体には火傷などつくはずもなく、また改造制服も燃えていない。

 この学校の制服は、荒事にも対応できるよう高い耐炎耐刃耐電耐毒耐衝撃etc・・・と、まるで魔法の鎧のような効果を持っているのだ。

 本来ならばそんな効果を同時に持たせることは不可能だ。

 おそらく地球上の素材を統べてかけ合わせて最先端の技術で加工しても不可能であろう。しかし、この学園の制服はその効果を発揮している。

 なぜならその材料は、存在しないはずの幻想金属の糸が使われているからだ。

 

「また貴様らか!」


 床を砕き机を破壊しながら鉄の拳をふるう不良生徒と、燃え盛る炎を拳にまといながら殴り合いを続けようとする不良生徒のあいだに青い()が突き立つ。

 喧嘩を止めたのは風紀委員。その髪は青い氷と同じ青。

 ついでに言うならば、そのメガネのフレームも青である。

 

「邪魔してんじゃねえぞ!」


「ぶっ殺すぞてめえ!」


「ここで喧嘩をするなと言っているだろう。どうしてもやりたければ、校庭でやってこい!」


 だが、風紀委員は喧嘩を止めようとはしない。この学校に限っては無理だと理解しているからだ。

 

「うるせ!どこでやろうが俺の勝手だ!」


「少なくとも、この場所は貴様らの私有地でもなんでもない。勝手なわけないだろう」


「―――っ!」


 明らかに馬鹿にしたような風紀委員の声に、赤髪はきれたのか無言で殴りかかっていく。

 轟っ!と音をたてながら燃え盛る拳は鉄人からターゲットを変え、風紀委員に突き進んでいく。

 後少しで顔面に直撃―――そこで赤髪は突然停止した。

 

「てめえ・・・!!!」


「そこで反省していろ」


 どれだけ力を入れようとも、どれだけ根性をいれようが赤髪の体は動かない。

 よく見るとその体には、木の根っこように細く青い氷が体中を張り巡らされているのがわかる。

 おそらく、赤髪の体を覆う形で縛り付けているのだろう。

 赤髪は拘束を振りほどこうと力を加えるも、変化はミシミシと軋む音はするだけ、赤髪の体が再び動く様子はない。

 

「・・・それで、貴様はどうする」


 完全に赤髪から興味を失った風紀委員は、次のターゲット―――鉄人へと視線を向ける。

 

「・・・ちっ」


 鉄人は舌打ちをして、去っていた。

 風紀委員はその姿に不満だったのか、機嫌がわるげに自分の教室へと帰っていく。

 すると二人が同時に退場すると同時に、真っ黒な服にサングラスをかけた、映画やアニメでよく見るようなSpのような部隊が突入する。

 その体は一部の隙もなく筋肉で覆われており、よく鍛えられていることが傍目からもよくわかる。


「・・・連行」


「「「はっ!」」」


「こ、このくそ野郎ども!離せ!ぶっ殺すぞ!」


 大男たちは、手早く赤髪の体を赤色のワイヤーのようなもので縛り上げ、連行していく。

 その行動も手慣れたもので、もたつくことなく一瞬の出来事。

 まるでみの虫のようにぐるぐる巻きにされた赤髪は、大男たちに担がれてその場を退場する。


 そして、すべてが終わったことを察し、再び生徒たちは戻ってくる。

  

 そう、これは彼らにとっていつもの日常

 

 手から炎が出ることも、全身が鉄になるのも、氷が突然発生することも。


 生徒にとって何も変わらぬ、いつもと同じ日常。


 そう、この世界には―――――――超能力があるのだ。

 

 

 

 

 

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