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第20話:絶対防御、崩壊! ―王宮の熱い夜―


王宮のお風呂大作戦

 王宮の最上階にある、巨大な魔石循環式の大浴場。

 ルインは今、人生最大の危機に瀕していた。

「さあ、ルイン様。そのキラキラ光るお体を、隅々まで洗って差し上げますわ!」

「ルイーゼの言う通りよ! 帝国の毒が付着しているかもしれないもの、わたくしがこの目で確認しなくては!」

 湯気の中に立つ、成長した二人の美しき皇女。

 ルインは必死にタオルを掴み、全魔力を注ぎ込んで「金剛不壊の絶対障壁(究極プロテクション)」を展開した。かつて勇者の一撃すら防いだ、理論上突破不可能な壁だ。

「悪いけれど、これ以上は入らせないよ! 私は一人で静かに入りたいんだ!」

 しかし、ルイーゼは微笑みながら、そっと結界に手を触れた。

「ルイン君……忘れたのですか? 貴方とわたくしは、今や魂の共有者。貴方の魔力は、わたくしの聖魔力と『等しい』のですわ」

 パリン……ッ!

 無情な音と共に、ルインが誇る絶対防御が、ルイーゼの指先一つでガラス細工のように砕け散った。

「あ……っ。結界が、私のプライドが……!」

「さあ、逃げ場はありませんわよ?」

 姉妹の白い手がルインに伸びる。元魔王の絶叫が、湯気の中に虚しく響き渡った。

国王の卒倒と「問答無用」

 翌朝。報告を受けた国王ガルディア三世は、玉座から転げ落ちんばかりに激昂した。

「ルイン! 貴様、ルイーゼだけでなく、第一皇女のシルフィアまでも手籠めに……いや、篭絡ろうらくしたというのか! 娘を二人ともやるなど、一国の王として認められるかぁぁぁ!」

 剣を抜こうとする国王。だが、その前にルイーゼが凛とした姿で立ち塞がった。

「お父様。……問答無用ですわ。わたくしたち姉妹は既に誓い合いました。ルイン君を共有し、共に歩むと。もし反対なさるなら……わたくし、今すぐルイン君と二人で隣国へ亡命いたします。……お姉様も、連れて行きますわよ?」

「なっ……シルフィア! お前もそれでいいのか!?」

 話を振られたシルフィアは、ルインをチラ見して顔を赤らめると、「……ル、ルイーゼがそう言うなら、わたくしは別に……その、反対する理由もないっていうか……」と、もじもじしながら視線を逸らした。

「ぐ、ふっ……!」

 国王は胸を押さえ、その場に崩れ落ちた。愛娘二人の「最強のタッグ」の前に、王の権威は完敗を喫したのである。

勇者の絶望、そして弟子入り

 一方、中庭では勇者レオンが灰のような顔で空を見上げていた。

 自分が生涯かけて倒すべき宿敵だと思っていた男が、今や皇女二人を侍らせ、国家の秩序すら作り変えようとしている。

「……勝てない。魔力でも、立ち回りでも、ましてや『男』としても……俺に勝てる要素が、一つも……」

 レオンは立ち上がると、食堂から出てきたルインの前に膝をつき、深々と頭を下げた。

「魔王……いや、ルイン! 俺を弟子にしてくれ! 貴様のような、すべてを『守り抜く』強さが俺には足りない! 貴様から、その……女性の扱い方、もとい、世の中の渡り方を学びたいんだ!」

「……え? いや、私はただ静かに暮らしたいだけで……」

『――クカカカカ! 見ろ、主よ! 勇者までが軍門に降ったぞ! もはやこれは学園生活ではない、新たな魔王軍の結成だ!』

 禁忌の魔道書が爆笑する中、ルインは悟った。

 もはや「最弱」であることを証明する手段は、この世界のどこにも残っていないのだと。

「……分かりました。レオン君。……とりあえず、その暑苦しい殺気から『守護(封印)』する練習から始めようか」

 かくして、元魔王は、最強の姉妹を妻に(内定)、元勇者を弟子に、元部下を教頭に抱え、王国の頂点へと押し上げられていく。

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