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第18話:鉄壁の守護と、揺れる姉心


意外なペアリング

 王立競技場。魔導帝国との親善魔術戦、開幕。

 ルインの隣には、なぜかフル装備で気合の入った第一皇女シルフィアが立っていた。

「勘違いしないでちょうだい! わたくしが協力するのは、ルイーゼを悲しませないためよ。貴方が無様に負けて、婚約が白紙になったらルイーゼが泣くでしょう?」

「ええ、分かっています。心強いですよ、シルフィア様」

 ルインが穏やかに微笑みながら彼女の目を見つめる。

 成長したルインの瞳は、吸い込まれるような深淵の闇と、慈愛に満ちた聖職者の光が同居していた。至近距離でその「超絶イケメンスマイル」を浴びたシルフィアは、顔を林檎のように赤くして、ふいっと顔を背けた。

「……な、なによ。その余裕ぶった顔。……ちょっと背が伸びたからって、調子に乗らないでよね(……なんなの、この胸のトクンって音。……いけない、わたくしは妹のために……!)」

親善(絶望)魔術戦

 対戦相手として現れた帝国の魔導師は、傲慢な笑みを浮かべて杖を掲げた。

「人族の小童が。我が帝国の禁呪、『深淵の崩壊アビス・ディストラクション』の露と消えるがいい!」

 放たれたのは、触れたものの命を強制的に停止させる、最悪の即死呪文。観客席から悲鳴が上がる中、ルインは「やれやれ」と溜息をついた。

「あぶないなぁ……。そんな物騒なものは、捨てておかないと」

 ルインは一歩前へ出ると、飛来する漆黒の魔力の塊に対し、まるでうるさいハエを追い払うかのように、素手で「ぺちん」と横に払いのけた。

「……は?」

 帝国魔導師の思考が停止する。

 ルインの手のひらには、極薄・超高密度の「絶対拒絶」の結界が展開されており、即死呪文は物理的な衝撃すら与えられず、場外の壁へと弾き飛ばされて霧散した。

「……いま、何を……? 我が国の禁呪を、手で……?」

「いえ、ただの『反射リフレクション』ですよ。……あ、今度は僕の番ですね」

 ルインは攻撃魔法を使わない。ただ、相手の足元の「地面の摩擦」を防御(固定)し、相手の「視界」を過剰な癒しで真っ白に書き換えた。

「わあぁぁ!? 前が見えない! 滑る! 止まらないぃぃ!」

 帝国のエリート魔導師は、一人で勝手に踊るように転げ回り、自ら場外へと滑り落ちていった。

揺れるシルフィアの心

 圧勝。会場が静まり返った後、割れんばかりの歓声が沸き起こる。

「やったわね、ルイン! ……って、きゃっ!」

 興奮してルインの腕を掴もうとしたシルフィアだったが、あまりに逞しくなった彼の腕の感触に、電流が走ったように手を引っ込めた。

「ど、どうしたんですか、シルフィア様?」

「な、なんでもないわよ! ……ただ、その、貴方が怪我してないか確認しただけよ! ……もう、近寄らないで!」

 足早に去っていくシルフィア。だが、その耳たぶまで真っ赤なのを、ルインは見逃さなかった。

(……おかしいな。何か怒らせるようなことをしただろうか?)

『――クカカ! 主よ、天然も極まれりだな。あのじゃじゃ馬皇女まで「守護(攻略)」してどうするつもりだ? 魂の繋がったルイーゼ嬢が黙っておらんぞ!』

 魔道書の予言通り、観客席の最前列では、ルイーゼがハンカチをキリキリと噛み締めながら、姉とルインを凝視していた。

「お姉様……。わたくしのルイン君に、変な毒電波を送らないでくださる……?」

 国家間の戦いよりも恐ろしい「身内の戦い」が、今まさに幕を開けようとしていた。

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