第17話:国家の盾と、甘すぎる夜の攻防
国王の無茶振り ― 国家代表の受難
王宮の謁見の間。国王ガルディア三世は、目の前に立つ凛々しき青年ルインを満足げに眺めていた。
「ルインよ。その姿、その魔力。もはや『子供だから』という言い訳は通用せぬぞ。折よく、隣国の魔導帝国から親善使節団がやってくる。彼らは若手の魔導師による『親善魔術戦』を提案してきてな。お前、我が国の代表として出場せよ」
「……お断りします。私はまだ、精神的には三歳児ですし、何より争いごとは嫌いです」
ルインは貴公子然とした所作で辞退するが、国王はニヤリと笑う。
「ほう? だが、これはルイーゼとの『正式な婚約』を認めるための条件でもあるのだぞ。もし負ければ、あるいは出場を拒めば、この縁談は一度白紙に戻さねばならんが……?」
(……卑怯だ。王のくせにやり方が汚すぎる!)
隣でルイーゼが「そんな! 離れるなんて嫌ですわ、ルイン君!」と潤んだ瞳で見つめてくる。これでは断れるはずがない。
「……分かりました。ただし、私は『癒し』と『防御』しか使えませんので、あしからず」
「くはは! その『防御』で相手を絶望させる姿が目に浮かぶわ!」
ルイーゼの暴走第2弾 ― 夜の聖域(?)
その夜。王宮内のルインの自室。
ようやく一人になれると思ったルインがベッドに潜り込もうとすると、シーツが不自然に盛り上がっていた。
「……ルイーゼ、何をしているんだい?」
めくってみれば、そこには薄いネグリジェ姿(魔法で成長させたらしい)のルイーゼが、頬を赤らめて待機していた。
「ルイン君、お疲れ様です。……もうわたくしたち、見た目は立派な大人(一歩手前)ですもの。一緒のお布団で寝ても、何も問題ありませんわよね?」
「大ありだよ! 魂は繋がっているけれど、法的にはまだ三歳なんだから!」
ルインは必死に理性を「プロテクション(自己防衛)」で固める。しかし、今のルイーゼは成長したことで魅力がカンストしており、かつての魔王といえど心臓の鼓動が激しい。
「ルイン君の心音、とっても速いわ。……ふふ、魂が共有されているから、貴方がドギマギしているのが全部伝わってきますのよ?」
ルイーゼがルインの腕にしがみつき、耳元で囁く。
(……まずい。これは魔導帝国の刺客よりも手強いぞ。彼女の聖魔力と私の魔力が共鳴して、部屋中の空気が甘い香りで満たされている……!)
『――クカカ! 主よ、何を耐えておる。これも一つの「守護」ではないか。彼女の安眠を守る、という立派な大義名分があるぞ!』
「魔道書、黙っていろと言ったはずだ!」
魔導帝国の影 ― 暗雲の予感
結局、朝までルイーゼに腕枕をする羽目になった(一睡もできなかった)ルイン。
翌朝、王都の門に到着した使節団の中には、ルインの気配を敏感に察知し、不敵に笑う一人の男がいた。
「ほう……。この国に、これほど澄んだ、だが底の見えない結界術師がいるとは。……面白い。今度の魔術戦、血を見ることになりそうだ」
男の瞳には、かつての魔王軍でも禁忌とされていた「古の滅びの魔力」が宿っていた。
国家的任務。そして、ルイーゼとの深まる絆。
ルインの「最弱」という名の平穏は、ますます遠ざかっていく。




