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第16話:再構築の代償と、大きすぎる息子


両親の絶叫と沈黙

 学園での騒動から数時間後。ルインとルイーゼは、王宮の賓客室へと戻った。

 そこで待っていた父カシエルと母エルーカは、扉を開けて入ってきた「見知らぬ美青年」を見て、完全に思考が停止した。

「……あの、父様、母様。ただいま戻りました」

 ルインが落ち着いた低音で微笑みかけると、カシエルは持っていた茶杯を床に落として粉砕した。

「……どちら様……でしょうか……? いえ、その声、ルイン……なのか……?」

「そうだよ、パパ! ぼく……じゃない、私がルインです」

 エルーカは数秒間、息子の成長した姿を凝視した後、「……あ、ああ……私の可愛いルインが、一足飛びに……」と呟き、そのまま白目を剥いてカシエルの腕の中へ倒れ込んだ。

「エルーカ! しっかりしろ! ……っていうか、お前、本当にルインなのか!? どうして三歳の子供が、私より背の高いイケメンになっているんだぁぁぁ!」

 父の悲鳴が王宮の廊下に木霊した。

緊急査問会 ― 国王、困惑

 事態を重く見た国王ガルディア三世は、急遽「緊急査問会」を招集した。

 重厚な円卓を囲むのは、青ざめた大臣たちと、怒髪天を突く勢いの第一皇女シルフィア。

「ルイン! 貴様、ルイーゼに何を……ッ、って、誰よ貴方!?」

 シルフィアが叫ぶが、隣に立つ、かつての面影を色濃く残す美しきルイーゼを見て絶句する。

「お姉様、ルイン君は私を助けてくれたのです。魂を共有し、契約を交わした結果ですので……わたくしたち、もう離れられませんの」

 ルイーゼは16歳ほどの妖艶な美しさを湛えながら、ルインの腕に密着する。

 国王は額を押さえ、震える声で問うた。

「……ルイン。お前の言い分を聞こう。なぜ『三歳』のまま婚姻の儀(魂の共有)を行った。そして、なぜ二人ともこんな姿になったのだ」

「……想定外でした。彼女の溢れる魔力を『守護プロテクション』で抑え込もうとしたのですが、私の器が足りず、肉体が無理やり魔力に合わせて進化した……というのが、本音です」

 ルインは(中身は三歳なんだから許して)というオーラを出しながら、完璧な貴公子の所作で一礼した。その隠しきれない「覇王の風格」に、大臣たちは「これは伝説の聖者の再来か……」と勝手に震え始めている。

学園の英雄 ― 「様」付けの受難

 翌日、ルインは「実地訓練の一環」として、そのままの姿で学院へ登校させられた。

 昨日まで「可愛い三歳児」として愛でていた女子生徒たちは、ルインが廊下を通るたびに悲鳴を上げ、その場にひざまずく。

「ルイン様……! あの、サインを頂けますか!?」

「ルイン様、昨日の魔法、実演していただけませんか!?」

 年上の上級生たちからまで「様」付けで呼ばれ、ルインは顔を引き攣らせる。

(やめてくれ……私はひっそりと、最弱の子供として生きたいだけなんだ。この体、肩幅が広すぎて、いつもの『にぱっ』という笑顔が、ただの『不敵な微笑』に見えてしまう……!)

 一方、勇者レオンは遠くからルインを睨みつけていた。

「……肉体まで魔王に戻ったか。だが、皮肉なことにその姿……かつての貴様に似すぎていて、余計に腹が立つぞ」

 ルインの望む「平穏」は、今や王国の歴史を揺るがす「英雄譚」へと書き換えられようとしていた。

『――クカカ! 主よ、次は「子作り」の心配でもされるのではないか? 魂が繋がっておるのだからな!』

「魔道書、黙れ。……本当に、どうしてこうなった……」

 ルインの深い溜息は、今日もしなやかな筋肉に包まれた胸の中で虚しく響くのであった。

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