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第11話:王都の洗礼と、懐かしき名


国王との謁見 ― 偽りの震え

 豪奢な装飾が施された謁見の間。玉座に座るのは、数々の戦場を潜り抜けてきた武人王、ガルディア三世。その放つ圧倒的な覇気に、父カシエルは震え、母エルーカは祈るように手を組んでいる。

「……面を上げよ。それが、ルイーゼが惚れ込んだという赤子か」

 地鳴りのような国王の声。ルインはわざとらしく膝をガクガクと震わせ、今にも泣き出しそうな顔で顔を上げた。

「……う、うう。パパ、こわいよぉ……」

 その姿はどこからどう見ても、威圧感に気圧された非力な子供そのもの。

 だが、国王は目を細めた。一見、怯えているように見えるルインの瞳。その奥底に、決して折れることのない「絶対強者」の光を、一瞬だけ見てしまったのだ。

(……ほう。我が覇気に晒されながら、魂の芯が微塵も揺らいでおらん。この小僧、ただの『臆病な神童』ではないな)

「よい。ルイーゼ、その子から離れよ。まずは宮廷魔導士たちの儀式が先だ」

魔力測定リベンジ ― 過剰なる「守護」の果て

 連れて行かれたのは、王宮地下にある国家級魔力測定室。そこには巨大な水晶の塔のような測定装置が鎮座していた。

「前回の測定は器械の不具合と聞いた。この『天の目』ならば、塵ほどの魔力も逃さぬ」

 シルフィアが冷たく笑う。

 ルインは(これだけの装置なら、単なる『数値固定』では不自然に思われるか……)と思考を巡らせる。

(ならば、この装置自体を『守りすぎて』壊してしまおう)

 ルインが装置に触れた瞬間、彼は自身の膨大な魔力を「純粋な守護」の波動として注ぎ込んだ。

 対象を完璧な状態に固定しようとする「過剰な守護」。だが、あまりに強大なエネルギーを流し込まれた装置は、その物質的限界を超えてしまった。

「……ピシッ、パキパキッ!」

「……え?」

 次の瞬間、眩い光と共に『天の目』が内側から弾け飛んだ。ドォォォォン! という爆音と共に、高価な魔晶石が粉々に砕け散る。

「……あうぅ! 壊れちゃったぁ! ぼく、なにもしてないのにぃ! えーん!」

 ルインは顔を覆って大泣きするふりをした。

 周囲の魔導士たちは「測定限界を超えた……のか? いや、そもそも物理的に爆発するなど前代未聞だ!」と大混乱。シルフィアも開いた口が塞がらない。

ルイーゼの記憶の断片 ― 庭園の残影

 爆発騒ぎの後、ルインはルイーゼに連れられ、王宮の裏庭へと避難していた。

 そこは奇遇にも、かつてルインが魔王城の庭園に設えていたのと似た、黒い薔薇が咲き誇る静謐な場所だった。

 噴水から滴る水の音だけが響く中、ルイーゼがふと足を止めた。

 彼女の瞳から天真爛漫な光が消え、深い、深い郷愁の色が宿る。

「……この景色、知ってるわ。ルイン君、お空がもっと、赤く燃えていた気がするの」

「……ルイーゼ様?」

 彼女はゆっくりとルインを振り返った。その表情は、三歳の少女のものではない。千年の孤独を共に歩んだ「あの人」の顔だった。

「……アシュタロト……。貴方はまた、私を置いて先に逝くつもりなの……?」

 その呼び名は、完全な確信を持って放たれた。

 ルインは息を呑む。もはや隠しきれない。

 彼女の魂に刻まれた「愛」という名の執念が、神さえも欺こうとした「最弱の偽装」を、音もなく溶かしていく。

「……ルイーゼ、君は……」

 その時、庭園の茂みから怪しい人影が飛び出した。ルインの正体を探るべく、国王が放った「影」の刺客か、あるいは……。

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