201X年 be interested in
――六年半前。
佐藤 舞凛26歳。都心部で働くOL。会社で働く気力もそれといった楽しみもなく、唯一の趣味はゲーム。ゲームソフト、カセットを集めプレイするというお金のかかる趣味である。
そんなときにSNSで知り合ったのがタレント会社「株式会社excite」に勤めている男『東』であった。新しい取り組みを始めるらしくそれに協力するか意見を聞かさせてほしいというDMがくる。
「今日、あいていますか? ボイスチャットで話したいと思うのですが」
そんな感情が読み取れない文字列が昼休み中に送られてきた。今まで曖昧に返信をしてきていたが何かの詐欺だろうと思い、タレント会社に問い合わせてみると案の定その男はいた。
その人が本当にいることを確認した後、小さいころの夢だったアイドルを思い出し返信することを決めた。
「午後九時からでお願いします。一時間程度までがいいです」
家に帰ってゆっくりできる時間にした。
仕事が終わり、帰りの電車が遅延していることに苛立ちながらやっとの思いで家に着いたのは八時半だった。
鞄とジャケットを丁寧にフックに掛ける。
リビングの大部分を占めているゲーム類と、ベッド。ダイニングにあるテーブルと壁にはゲームカセットや本の棚がある。お湯を沸かし、お茶を入れゲーム用のテーブルに置く。
丁寧にゲーミングチェアを引き腰掛ける。ヘッドホンをつけ、パーソナルコンピューターの電源を入れると電気的な音に包まれていく感じがする。
SNSのボイスチャットの欄を押し、どこの部屋に入るかのコードを打つ画面まで移動すると、時間が来るまでスマホゲームで遊ぶ。
8:55の字が映し出されているスマホの通知欄にはグループのボイチャへの参加が求められている。送り主は「AZUMA」。PCにも同じ画面を映し出し参加のボタンをクリックする。
参加人数はすでに三人。続いて二人が参加してきて五人になるとチャットに東から「こんばんは」という文字が表示される。
五人ともミュート設定を解除し、話始める。
「今日は集まっていただきありがとうございます。それぞれ自己紹介をお願いします」
「その前に自分から名乗っていただいても? 取り組みの方も教えてください」
青年の声がヘッドホン越しに聞こえる。
「あぁ。じゃあ取り組みの方の説明しますね。これは私自身の考えではなくタレント会社の案です。
私があなた方を選んだのは、自主性とゲームの上手さをかったからです。Vtuberっていうのはご存じですか? ホロアバターをかぶり動画配信サービスを利用し活動します。ライブ配信が主ですね」
画面上に企画書が映し出され、説明が始まった。
タレント会社「excite」がVtuber育成プロジェクト「レインボーライブプロダクション」をはじめるらしい。
内容を淡々と話され、途中で一人は長すぎて退出した。
「自己紹介なしでいいので、企画に賛成か反対か教えてください」
私はチャットボックスに「賛成」と打ち込み送信した。
「ありがとうございました。賛成多数ということで。今月末までオーディションの申し込みしておりますので、お申し込みくださいね。待ってます」
東の方から退出し、この会議は幕をおろした。
ヘッドホンを外し、机に置く。自分のマウスを動かす手が勝手に検索を始めていた。『excite』という文字を打っていた。
会社概要のページを押し、レインボーライブプロダクションについての紹介を読んだ。週五回以上の配信と二年以上の継続が条件だ。アバターとグッズ作成、会社としての広報活動が会社負担。それ以外は基本自己負担らしい。
――負担重そうだけど、心機一転してみようかな。
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