そして他の星へ
ある時、人類は星を捨て、遥か宇宙へと旅立った。
度重なる戦争と企業間の競争、そして顧みない環境破壊が星を蝕み、やがて人々が満足に住めなくなってしまったのだ。
暗く、孤独な宇宙空間を旅する彼らの心にあったのは深い悔恨の情。もう二度と同じ過ちを繰り返してはならないという想いと、不安からくる他者への攻撃を抑える意味もあったのかもしれない。宇宙船内は一つの思想に染まり、宗教が誕生した。
そして、新たな惑星に降り立った人々は、乗ってきた宇宙船を含む多くの発明品、科学技術を忌むべきもののように破棄し、半ば原始的な生活を送ることに決めたのである。その生活が安定するにつれ、その傾向は強まり、世代交代を経て、人々はやがて忌まわしい過去そのものを捨て去ることに成功したのだった。
そして、長い時間が経過し……
「どうもこんにちは! 私たちは地球という星から来ました! ははは、言葉が通じませんよね? チ・キュ・ウ! トモダチ! え? 通じる? 翻訳装置? ああ、それはすごい。いやぁ、素晴らしい星ですねぇ。美しく、科学力もあり、ぜひ、私たちと友好関係を結んでくださいよ。いやぁ、きっと仲良くやれると思いますよ。ほら、私たち、どことなく似たような雰囲気があると思いません? ははははっ」
環境破壊により、居住に適さなくなってきた地球を捨て、他の惑星への移住計画が立ち上がった頃、移住先を探す調査隊がとある星を訪れた。
その星で暮らしていたのは、かつて星と共に見捨てられた貧しき民。彼らは協力し合い、科学技術を駆使して、気が遠くなるような年月をかけて、惑星環境の正常化に成功した。
世代が移り変わっても先祖たちのその偉業は語り継がれた。自分たちを見捨て、地球に移り住んだ者たちへの怒りと恨みも添えて……。