そして戦争は終わったが、暴力とはかなしいものだよ、君
焼けた平原に、でかいハサミムシだけが君臨していた。
そばにある無数の箱からは、「ひぃっっ」とか「やーめーてー、かじらないでー」という悲鳴が上がっている。
「今回もプロフェッサーが圧勝でしたね」
と、ハーメルが勝者インタビューをしにきた。数で圧せないな、このつわものは、と皆が途中で諦めに入ってしまった。
「勝利の秘訣は何でしょう?」
「若いのが暴発して消耗しつくさないように、首根っこ押さえつつ、ベテランが動ける配置を作り続けること、かな」
「予想外にまともなコメント頂きました」
いつもはハサミムシへの愛を語って終わるのに。
「ところでスタッフ長」
「はい」
「虫箱刑の箱がまだ残っているから、入ってみなさい(疑問形ではないところに注目せよ)」
「へ? いえ、私、まだ業務が」
「きっと楽しいから。幸せなハサミムシのお母さんの一生を味わってきたまえ」
「な、なんか、怒ってます? これでもトラブル解決に全力で、ひっ、わぁぁぁぁ」
「怒ってはないが、もっとたくさん、捕虜、いやまあ、受講生がとれると思ったら箱が余ってしまった」
そしてこの戦場にはハサミムシのお母さん以外、残らなかった。
「暴力とはかなしいものだよ、君」
対戦した皇帝の首を全部、お尻のはさみでチョッキンしてきた勝者が、何をやいわん?
致命傷ははさみでなく、生成される青酸だったのだけれども。肉食系昆虫で、毒まで操ると危険すぎる。
長い触手を前脚でていていと撫でながら、
「うちの教え子も残らなかったな。少し扱き直そう」
呟いて、ハサミムシは去っていき。
悲鳴を響かせる箱だけが残った。
勝者プロフェッサーの願い事は
「アムリタに虫の数を増やしたい(むろんロボットだ)×2」
だった。
おかけで帝1さんの園芸ハードルを上げる、のは叶った。
植物を囓る害虫も増えたからだ。
アムリタの昆虫の監修をしたのがプロフェッサーなので、ハサミムシだけですでに十種いるんだが。
今回も八種追加されることになった。
ハサミムシだけそんなに増やしてどーするんですか。
技術屋が依頼されて泣いていた。形だけならともかく、生態もトレースして、各個体にそれぞれ個性を与えねばならないのだから、
そりゃあもう
地獄
そもそもハサミムシだけでも十八種類。
学者以外、見分けられないだろ。
むなしいよね。
と思うだろうが、技術者達はなんか滾ったらしい。職人達は難しい仕事が好きなのである。
戦争イベント終了ー