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風俗枠ですから  作者: 無夜
戦争編
4/57

CM デヴュタントの君

このコマーシャルで、帝2さんとか入ってきてましてねー


メイド編


 いかつい男性、だとわかる。首より上は見えない。

 カーテンらしき長い布を身に当て、鏡の前に立つ。スカートかドレスに見えるように巻き付けて。

『興味はあるんだけれど』

 独白がナレーションとして入る。

 周囲がうすぼんやりとした、過去イメージが流れ、ブティックのワンピースを横目で眺めて去ったらしい、男目線の映像。

『でも、手に取ってるのを知り合いに、見られたら』

 次に通販しようとしたらしき、画面に並ぶドレス。

『住所、知られるの、怖い』

 そんな恐怖を押さえながら、少しずつ集めた化粧品、フリル、かわいらしいリボン。

 イヤリング。ピアス。

足が入らないヒール。

 切なげにため息が漏れる。


 画面にアムリタの説明が入る。

「自宅から一歩も出ることなく訪れられるアムリタ。医療機器メーカー高石と提携しているので、秘密厳守。280色以上の布をご用意しております。布は、ナイロン、レーヨンはもとより、麻、綿、絹等、現在十種類をご用意できます。むろん、既製品も、ワンピースのシルエット型だけで、六十種類以上。ドレスも百以上。ジャケット、ズボン、下着のたぐい。その他のものも複数の型を取りそろえております。型紙を手に入れて、私どもメイドにハンドメイドさせても? もしくは自分で作っても? ボタンを選び、襟を選び、お好きな刺繍をお好きな場所に?また、アクセサリーの自由度は無限大。既製品を好きな宝石に入れ替えてカスタマイズ? 淑女の皆様、夢広がるアムリタに、どうぞお越しください」

『あ、これ、なら』



 小柄な少女のミゼルを選択。

 四苦八苦しながら動かせるようになる。

 それを常に、姉のようなメイドが支える。

 数千のワンピースやドレスが画面を流れ、続いてヒールやアクセサリー。足が入るエナメルの赤いヒールにぐずっと泣きそうな声が漏れた。

 銀色の髪をきれいに整えられて、少女ははにかみながら、鏡を見た。

「お嬢様、まだです」

 と、貝殻の中で紅を溶かして、甘い赤色を作ったメイドは筆で彼女の唇を彩る。

「どうぞ、できあがりました」

 水色のシンプルなドレス。あちこちについたレースはびらびらしたものではなく、奥ゆかしく、慎ましい。蔓花の刺繍がさわやかだ。

 イヤリングも小粒の石で、チョーカー風の首飾りと石の色を揃えている。

 再度、鏡を見て、潤んだ目をして、くるりとまわり、笑う。

『今日から、私も淑女にデヴュー』


テロップ

「アムリタは 風俗枠です」




 ちなみに、執事編もある。

 メイドさんがしたことを初老の、厳格そうな執事が行う。

 百合編と、禁断の主従愛編とも呼ばれ。

 十年以上経過しても絶大な支持を集める広告映像で、公式ではもう流していないのに、ネットにずっと誰かが流している。 



 この主役が、里村アスレイ。

 ソドム帝サトであった。

 ついでにいえば、アムリタの広告は初期から現在まで、彼がほぼ手がけている。

 この動画を上層部に見せたとき、これはラフだと言ったが、身内の会社で半数が彼の子供の頃を知っている連中で、残りも高校・大学の同級生の身内だった。

「あざとかわゆいから、このままいこう」

「はっ? やめてっ。本職の俳優起用してっ」

「いや、これがかわいい」

「これ、ラフっこんな感じにしたいってだけっ」

「これがかわいいから」

 年上の連中にとって、年下の身内って、いつまでもかわいいんである。

 ただ本当にヒットしてしまったから、里村はこのCMをなかなか打ち切れなかった。


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