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風俗枠ですから  作者: 無夜
戦争編
3/57

戦争は続いていく

楽しみ方はそれぞれですね。

 アイアンメイデンを下し、へらへら笑う皇帝をご自慢の鉄の処女に突っ込んで、処した。

「針に刺されるのが好き、なわけじゃないんだ。穴だらけになった体が急速に補完されて癒されてくのが好きなだけー」

 処したが、この器具は拷問用なので、死なない。鉄の棺桶でしかない拷問具の中で、皇帝が言い訳を切々と紡ぐが、無視した。

大公「八割死亡判定。劣勢時に女大公、自害。メッセージ。『拷問もレイプもやだから、一抜けごめんなさいー』です」

帝「ここの人たち、強姦はしないけれど、ご褒美の感覚で拷問するからなぁ。女性で人妻だから、そりゃ、むしろ、よくここに参加してくれてるなあとありがたく思いこそすれ、まあなんです。悼みます。次の対戦相手の残数次第では、うち棄権したいな」

鉄処女「許されないよ。盛り上がってるから」

 と、拷問具の中から返答が来た。

 鉄の乙女は塗装され、アンティークドールの美しさを見せている。夜中に見たら、悲鳴をあげるたぐいの、不気味さも兼ね備えている。

鉄処女「帝2さんがね。君にドレス着せて、シンフェスに連れていきたい、と言ってた」

 仮面帝2の集まりはトランスセクシャルとお着替え同好会と異装愛者と人形愛好家の集まりである。

 コスプレ好きの集まり、と思って貰えればいい。基本、女性で纏まっている。

 同性愛者との親和性が高そうに見えるが、内部での恋愛を嫌うため、女性の異性愛者しかいない。トランスは性自認が女性で、ミゼルの玉と竿を落としてくれば女性である。染色体が××で、自認が男性の場合は入れない。ミゼルはカスタマイズ可能なので、弾と竿ついているだろうから。

 女の園なのである。

 ついでにいうと、ここからはじかれた、男性自認トランスは、適当なところに入っている。元は女、と申告しなくてもいいのだから、趣味が合うところにいけばいいのだから。

 男なのにここに入ろうとすると、拒否される。偽って入り、トラブルを起こすと、痛覚があって、後遺症なく、本体は無事な世界であるから、世の暴君も真っ青な、本来なら死ぬはずの虐待を加え続けられる。

 何人かの性犯罪者や女性蔑視者を加虐してからは平穏な集まりとなった。

 つまりは、アイアンメイデングループと彼女らは拷問器具の愛好仲間でつながりがある。

帝「女装させられて踊らされるとか。そんな目にあわされるぐらいなら、輪姦される方がましなんだけれど」

鉄処女「あいかわらず、「まし」の基準おかしい」 

帝「どこで聞いたの、それ」

鉄処女「シンフェスにきまってる」

 けろけろっと笑いながら返答した。

帝「ねぇ、中で、本当に拷問されてるんだよね? 針刺さってるよね?」

 受け答えが軽やかすぎる。

鉄処女「一日おきぐらいに入ってるから慣れてるよ(一日おきなのは、使ったらメンテするため。血肉で汚れる)」

帝「君の嗜好が一番、相容れない気がする」

鉄処女「えー、サトだって、最近のお気に入りのプレイが、四肢欠損って言ってたじゃん」


 トップ二人の会話を、まともなユーザーは気味悪そうに見ていたが、生き残れたのは古参兵ばかりなのでそういう普通の感覚の者は一握りである。



 帝2のグループは人数が多い。女性と言われるユーザーのアクティブ6割、がここにいると言われるほど。

 そもそもが着せ換えしたい、服が好き、人形めでたい、という女性がアムリタに流れ込む傾向が強いため、当然なことは当然だった。むしろ、残り半数はどこへ、という感じである。

 仮面帝2がリアルで男性に嫌な目に遭わされているせいで、男は側に寄せたくない、と始めたサークルなせいもあって、女学校のごとき雰囲気を醸している。よく抱きつき、頬へのキスは日常茶飯事。

 生の百合見たさに、男達が入り込もうとするので、辟易していた。

 今回も戦争で、なんと三千二百人集まっており、女性参加者として最大派閥になる。

 体格を変えると動きが悪くなるため、コンプレックスの細い枯れ木のような身を、フリルとリボンでいつもは隠すのだが、戦争だからそれができない。軍服着用で鎧は着ない。着たら動けないから。

 身バレが怖いから顔は変えている。

 背は高く、猫背で、大きい魔女みたいとさんざん幼少期からからかわれ続けて、本当に嫌気がさす。

「傭兵王さんは、長距離と超近接戦以外は、普通なので、槍で応戦。弓隊、頑張って」

 馴れない指揮を執りながら、先ほど村を焼いて、男爵子爵の仲間を昇爵させていたので、確認をとる。爵位が上がると、カタログで購入できるものが微妙に増えたり、安くなったりする。最大は感度のフィールドバックのパーセンテージが上がることで、つまりは背後から忍び寄られても聞こえやすく、動体視力も上がるので、投石などをよけやすくなる。

 嫌な気分を乗り越えれば、確かに手っ取り早い。

 本来ならば、シンデレラフェスティバルでダンスで合格をもらって昇爵していく連中である。

 彼女らの欲望は、一つ。

 デヴュタントの君であるサトにドレスを着せる。


 ボーガンや弓で射掛け合いを繰り返したあと。

 剣と槍の間合いに持ち込まれた。

「ここでどれだけ削れるかしら」

 傭兵王グループはそもそもが、サバゲー同好会。銃を使ってなら、戦えるのだが、槍と剣で、となるとやる気がない。それでも、ナイフでの白兵戦は負ける気はなかった。

 サバゲーとのみ括ってあるため、八百二十人の参加者しかいない(いつもは三百名ぐらい)が、さすがに動きがよい。連携も良い。

 帝1にしろ、帝2にしろ、基本は個人で、ないし数名でお茶会したり、着せ替えしたり、貴かざせたロイドを見せびらかしたりする、無害な集まりで、連携にはほど遠い。

 だが、それでも長くつかず離れず一緒ダンスの練習をしたりしてもいるので、空気読みの才は際立っている。


傭兵王「帝1と帝2は、数が多くて、手堅いからちょっと大変だけれど、一度崩れると立て直せる小隊指揮者いないから、崩してパニック煽れ。そしたら、俺が突き抜けるから」

 いつもはお城で踊って爵位上げているグループなので、最初の布陣を抜かれると、臨機応変に立ち回れないのだ。

 帝1がプロフェッサー相手に倒されたのも、結局は指揮力と兵が理解できる頭がある、という差にある。右っと指示されても、悪気無く左に進む者が出てしまうのが、こういう焦った状態のときに多い。これがパニックのやっかいさ。

 傭兵王の傘下の侯爵四人が結託して、突入口を開いた。

 死兵として強引に突撃をかけたのである。

「お前ら、昇爵しろよー」

 と下位爵に遺言を残して。

 辺境伯以上はぐっと人数が減るため、なかなか昇爵は難しい。彼らは毎度戦争にも参加できているので、もう焦って犠牲を求める気がない。

 後輩に譲ったのである。

 押し合いへし合いで、殺し合いの生々しさにまだ踏み込んでなかったところで、これをされると。

 帝2の前線は腰が引けてしまった。

 そうなれば、力で前線ラインは押し切り、両軍の境目は決壊した。

傭兵王「お姫様にご挨拶してこよう」

 鎧は着用せず、耐刃のロングコート。この戦争イベントは、実はこれだけで、だいたい、問題ない。色は暗めのグレー。町で着ていても浮かない品だ。

辺境伯「いってらっしゃい。一時、指揮権預かりますね」

 両軍は混ざってしまった。乱戦である。

 もはや指揮など取れはしないから、辺境伯でもよい。大公や公も前線に出て、小隊の指揮に回っている。

 傭兵王はするっと走り出した。

 帝2の軍は、怖さや痛みも感じず、ただ絶命判定を受け、強制的にミゼルから吐き出されて本体に戻らされていく。

 的確に、頸動脈をナイフでざくっと切りながら、仮面帝2のいる本陣まで混戦を抜けていく。傭兵王の仲間はそれを察知すると、なるたけ道を造ろうとする。

 八人ほど屠って、走り抜け、

「やっ、さっきぶり」

 と敵の指揮官の前に立った。

「あー、きちゃった」

 嫌そうな答えが返ってきた。

「なんで護衛おかない?」

「側に置いておいても、護衛できないから。私が倒されて責任感じさせるのも、可哀想でしょう。馴れてないからとっさに動けないのっ」

「本当に、素人の戦争ごっこ以下だなあ」

「痛いの嫌だから、ひと思いに、一気にお願いしたい」

「なんで(イベントに)出てきゃったよ?」

「皇帝としての義務感で。だって、変な大型連休にぶつけられちゃったからっ。出ないと駄目かなっ、って」

「ああ、本当に、下手に空気読んだなぁ」

 傭兵王はナイフを振り上げた。

 先ほどに比べて、実に無駄な動作である。

 背後からさっと駆けてきた細身の平服の女が中剣を構えて、思い切りぶつかってきた。

「うぉっ」

 と、叫んだが、打撃的な痛みはあるが、耐刃コートなため、刺さりはしない。

 傭兵王はナイフで反射的に薙いだ、が、刺さらなかったため反動で女ははねとばされ、間合いに居ない。

 そして帝2が刃渡りの短いナイフを閃かせた。

 予備のミゼルと、同時に操る。

 実は、これができる者だけが、皇帝を名乗れるのだが、戦争で使うのはソドム帝ぐらいである。

 理由は単純。

 双方を動かそうとすると、どちらの動きも鈍るからだ。

 現実的ではないのである。

 本体に比べると、華奢で美麗な、人形のようなミゼルである。着せ替え人形、なのだろう。

「体格替えて、そんだけ動かせるのか」

「だってダンスの練習で、男性パートしたいときの彼女役だから、とびっきりかわいい娘にしたくて」

「業が深いというか、お前ら趣味、すごいな」

 ちなみに、あちこちの軍で、ミゼルのような遠隔操作できる、人造人間を作っているが、最高峰ぶっちぎりに出来がいいのがアムリタのミゼルであり、今のところ軍関係者で2体を人間として違和感なく動かせたという話は聞かない。

 さくっと予備は起きあがり、ワンピースの汚れを手で払う。

 傭兵王は本体も視界に入れていたが、同じ動作はしなかった。右手と左手で、同時に円を描くのは誰しも出来るが、右で円、左で四角を描けといわれれば、苦戦する。

 痛みありの、なんでもありの戦場で。

 2体を操る。

 ふざけてんのかと言いたくなるのに、なんとまあ高レベルな操り技術。

 もう脳がそれ用に作り替えられているとしか思えない。

 傭兵王はしかも、と付け加えた。

 どちらも装備が違う上に、得物の刃渡りさえ違うんだぜ、なんかもう格の違い見せつけられてるなぁ。

 念のため、確認した。

 表示はどちらも、皇帝とある。

 他の十皇帝の誰かが手伝っている可能性は、ない。だって誰もが戦闘中だから。

 いずれもそんなに長い刃物は持ち合わせておらず、ダンスを踊れる近さで振り抜き合う。

 刺さりはしなくても、臑を蹴られりゃそりゃあもう痛い。自分の蹴りも入ったと思ったら、足の裏で受け止めれて、威力を消すため少し後ろに飛んで、またバネ仕掛けのように戻ってきた。

 そして当然、シンクロ率100%の同時の攻撃と。

 前方の本体が刃物を捨て、手でコートを掴み、ファスナーを一気におろした。

 あ、まずいと思った瞬間。

 背中にしがみついてきた予備ミゼルの、膝に仕込まれていた暗具が肋骨部に滑り込む。

 コートさえなければ、刃は貫ける。

 心臓には届かないが、戦闘不能になるには十分な致命傷を食らった。

「はー、失敗。手堅く、いけばよかった」

「人数差的に、無理だったでしょ。奇襲してくるしかなかったわ」

「よくやるよなー、自分を囮に、する、とか」



  傭兵王グループは、帝2とぶつかって、傭兵王が負けてしまった。

 ので、帝2を半壊させてはやばやと降参していった。





 傭兵王の陣営は負けたが、お楽しみをきちんと確保できていた。

「キラー童貞ちゃん、処女ちゃん、おいしくファーストキル頂きました」

「うちはもう殺し合いしすぎてて、こんな顔なかなかお目にかかれないから、新鮮。ヌケる」

 宙に浮くスクリーンに、帝2軍の女性達が、槍で刺した相手の血しぶきが手について、死にそうな顔であわあわと慌ててる様子や、捕虜を殺すことになって、目がうろうろと動いてどーしよ、無理、という表情をしている顔をアップに編集している。

 哀れな犠牲が殺されるだけの映像なら、村を一つ焼けば、嫌と言うほど見られるが、こういう初めての殺戮に動揺する新兵ちゃんを目撃できるのはこの戦争イベントが一番である。

「幹部クラスは拷問馴れしてるけれど、今回っ、連休のおかげで初陣のお嬢さんがいっぱいだったから。今回だけで三年ぐらい、オカズとしてウマウマします」

 自分が殺されたというのに、痛みもフィードバッグされているというのに。むしろ、自分を殺す時の、相手のばつの悪そうな顔がたまらない。この動画見れば、スープなしで、パン食えそう。

 悪趣味のきわまった連中であった。

「負けは予定通りでしたしね」

「たまには、あの綺麗所衆に、泥臭い戦場を勝利に拘泥して泣きながらずたぼろに進んでほしい。それを焼き肉とビールで観戦したい」


(復活した)傭兵王「性癖歪んだサドの集まり、と皇帝会議で罵られてるんだが」

辺「その親玉が何を」

傭兵王「(ため息ついて)よっしゃ、野郎ども、軟派街で発散しようっ」

「おー」


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