ちょっと画伯、ガンダムやばいから上書き頼む
そのまま出すわけにいかんでしょうに。
ハイウイングは、様々な政治的配慮から、兵器を造ることを表立ってはやっていない。
高石の企業幹部OBOG連が、集まって。
ガンダムを造ろう
マクロスを造ろう
アトムを造ろう
とかやっているだけだ。
その中で、派閥があったり、ドラえもんを造ろうとしていたり、モーターヘッドを造ろうとしていたり、赤い彗星の設計図を描いていたりするだけであり。
「なに、アスちゃんを呼ぶに至らない」
アムリタで、ミゼルで遊び倒す(魔改造ひゃっはー)OBOGが、好きなものを好きなように造るわけである。子会社だから、本当に、好き勝手に造るわけである。
有機素体だから、エヴァじゃね?
という意見もあるが。
まあそんなわけで、医療の高石(医療機器メーカー)の技術屋から専務にまで上り詰めた男。
中村太一郎さんの出番である。
ちなみに、ハイウイングに在籍する姓は高石6割、中村4割、元は佐々木で滅んだ人がおり(離婚すれば旧姓に戻るのでまだワンチャンあるよ)、里村一人である。そう、里村はアスレイのみであった。
300年で、20万人の人口をよくまあ染め上げてきたものである。
この人たちに姓はあんまり意味はない。
というわけで、太一郎さんと呼ぶ。
里村アスレイとの関係は、御前が連れ回しているときに会っているのと、末っ子の同級生つながりである。
狭いんだよ、ハイウイング。
そもそもが先述したように、里村姓一人なので目立っており、里村アスレイが知らぬとも相手は知っていることが多々ある。
ハーメルが事態を知って、呟いた。
「いや、駄目だよ、駄目。個人で遊ぶのはともかくとして、イベントにあんなの出されたら、ほかの魔改造チームが黙ってないから、スタッフじゃ押さえられない」
女性スタッフまとめ役が相づちを打った。ハーメルの妻でもある。恋愛と言うより、同盟婚みたいなもので、仲良くしている。
「リアルロボット大戦ね」
「養父さんたち呼ぶ?」
アムリタのスタッフが全員、ハイウイング外から、高石に養子縁組された子らである。これが高石、中村家がやたらめったら多い理由の一つ。
いずれも、重度障害児で、親が遺棄した者で、日常生活困難者である。
「よぶと面倒が増えそうな」
「だよねー」
「やっぱり、里村さん呼ぶしかなさそう」
この間、スタッフが使用する思考加速装置で、相談は1秒にも満たない。
ハーメルと里村は中学生時代からの友人である。ハーメルはリアルな学校には通っていなかったし、里村はバーチャル学校で日本語を覚えていたから、そこで会った。
ぼんやりと快楽に浸っていた里村を呼び起こしたのは友人の声や存在ではなく。
「プロフェッサーが新ミゼル使いこなして、触手神社、完全制圧。で、太一郎さんがガンダム出すとか言ってるんだよ、里村」
そんなショッキングな内容だった。
バスの中で、触手ではにゃはにゃぬぷぬぷしていた里村は飛び起きた。
「ふぇ、馬鹿な。いくらなんでも、早すぎる。三日前に、ミゼル納入させたのにっ」
少年を模した裸体にハーメルが服を着せていく。
「で、太一郎さんが」
「もう出てるよね」
「ああ、八分後にはイベント会場に入れてしまう」
「画伯に、見た目だけ変えさせよう」
即答であった。
「ガンダムの乱入は許すのか」
サイズ的には、ミゼルの延長なので、ヒーローショーでしかない。が、それでも2.5メートルはある。変なブーストをつけたりいろいろしてあるので、重量がトン単位だ。
「見た目変えるから、ガンダムじゃない。どっかの誰かの作り上げた、大魔神あたりだよ。もう、急ぐから。システムの権限くれ」
「ほい」
「あの子、今、学校?」
「就職したよ」
「おっと、年長者の悪いくせが」
子供の成長を認められないと言う。アムリタのあれこれのデザインをさせたとき、彼女は高校生だった。
風俗のイラストを、高校生にっ。
画伯。
中村聖子は仕事中だった。
女子高生時代、アムリタの魔王の姿やチュートリアルマスコットのヘア(兎)&ベア(熊)の外観を描いた。
本当に、未成年に何やらせてんだよ、って話しである。
「画伯」
と精神に直接呼びかけられて、聖子は不機嫌になった。
「サトさん、それ、良い意味ではないでしょ。知ってるんだから」
ハイウイングで働いているため、外から直接通信は入らないのだが、テレパス経由なので、そういった妨害を無視してくる。
「ごめん、いそぐから。お小遣い出すから、モンスターと戦う、別のモンスター描いて」
「もー、いいけど。ハイウイングにいないんでしょ。通信できないわよ。私テレパス無いもの」
「聞けば誰かがテレパスだよ。アムリタ案件だから融通してくれるはず」
仕事中なのに。
「どなたか、私のイラスト、アムリタに飛ばしてくれます? 太一郎さんが版権無視して暴れようとしている、らしいです」
「ああ、父がごめんなさい」
そう言ったのは、部屋で一番偉い、部長だった。狭い世の中である。だいたい、4人ぐらいたどると、ハイウイングの人間の誰でもたどり着く、という。
「私が飛ばすわ」
仕事中、仕事じゃないことで、上司のお世話になった。アムリタの運営は高石の子会社なので、完全に無関係でもないが。
画伯はさらさらとペンタブで空中にモンスターを描き、部長がアムリタにデータを飛ばした。
「相変わらず、サイケな色遣いだな」
蛍光グリーンに深紅のラインの入った生き物が、太い尻尾を分回している、絵である。
ビーバーかなとも思うが、くちばしがある。
「カモノハシがベースですー」
と、画伯。
運営権限で、太一郎のミゼルに干渉。外見だけ、ひっかぶせるのに成功したのは、イベント会場手前。
「ぎりぎりだった。ありがとう」
ホログラフィーなので、本体に影響はない。
「版権切れてんじゃないの」
「コズモ(星系連合軍の略称)がヘルメッティーっていうマスコットでもめて、懲りてるんだ」
褐色のヒヨコに、ヘルメットをかぶせて、ライフルを背負わせた、まんまアレなマスコットである。
最初は誰も気が付かなかったので、そのまま企画が通り、ばれたとたん、ぱくりだと炎上した。
地球を離れて300年。
さすがに著作権は切れていたので、司令官が会見で
「これはヘルメッティーである。イニシャルHであって、けっしてKやCでは始まらない」
と、異例の、よくわからない会見をした。
普通、こんなに荒れたら、マスコットを変えそうだが、続行した。指令がこのキャラを気に入っていたらしくて。
版権が切れていようが、著作権の保護が切れていようが、最初は誰も気が付かなかった癖に、とかだろうが、関係ない。
まあ、みんなとりあえず、罵り殴ってくるのである。
「下界でいくら罵ってきても、うちには届かないけれどもね」
聖子は言った。
ハイウイングは外に通信するには、艦の一番外側にある6カ所の通信ボックスに行かないといけないのである。
昔、御前が非常にまずい言葉を外にぶちまけてしまったので、完全通信遮断され、わかりやすく言うとイントラネット、ないし無線・有線等々で中の人間は連絡し合っていて、とくに問題はなかった。
それも、感応系適応者がいると、外に電波が出てしまうが。
「じゃ仕事戻ります。報酬は、USA星系で、デートで」
「親御さんの許可とって」
「私もう、社会人っ」
「あー、ごめん。でも、星系出るなら、親御さんの許可とって」
10歳若い娘に絡まれて、好意を持たれているのに、全然うらやましく見えないのは、伯父と姪っ子あたりにしか思えないやりとりだからだろう。
「服と鞄買ってもらう」
「うんうんわかったから。ごはんも良いところで食べよう」
とりあえず、解決した。
大魔神がくるかと思ったら。
毒毒モンスター対戦になった。見た目だけは。
鼠侯爵「アレ、母の姉の夫なんですけれども」
G「ああ、君、高石だったね」
鼠「いえ、中村ですが。まあとにかくですね、正月三が日は初代ガンダムの話しかしなくて、盆はブライト艦長の話しかしないんです。大晦日はカミーユについて延々しゃべるんです」
G「そもそもガンダム知らないんだが、そんなに語ることがあるのか、その物語」
鼠「教授がハサミムシについて語るのと同じといって過言ではありません。身内なんです。わりと顔を合わせるんです」
G「ああ(気の毒に)」
鼠「誕生日は、ウイングまでえんえんえんえんしゃべります」
G「ハイウイング???」
鼠「いえ、ガンダムはたくさんあるんです。初代から語って、日付がかわるので、そこまでしか行かなくて、いつも不完全燃焼でくすぶっていまして(昔はゼータで塗りつぶされたけれど、今ウイングの話までいった)」
G「うぐ、きついな」
鼠「ただし、これが、ハイウイングの連中には普通にわらわら居て、ガンダム造ったり、アトム造るって言ってたり、ドラえもん造るんだとかであれこれしてまして」
G「自由だな」
鼠「何が言いたいかというと。うまく対処しないと、第二第三の連中が参戦してしまうということです」
きっと、満足いく外観で、動くようになったから、難癖付けてお披露目したくなっちゃったんですよねー、太一郎さん




