無くしてしまった大輪に
計画は簡単、二階にある私の部屋から門まで誰にもバレないように移動→事前に調べたバスルートで家から離れる→“何か”を見つける→家に帰ってお父様とお母様に事情を説明する! とこんな感じだ。家の中を通って門まで移動するのは使用人達に見つかってしまいそうなので窓からどこぞの怪盗のように降りるつもりだ。「この部屋とも当分お別れですね…」部屋には今までにお父様にねだって買ってもらった人形が何体も飾ってある。そしてお母様から貰った私にはまだいいかな…と遠慮して使ったことのない化粧品。誰がどう見ても未練タラタラな私は、我慢できず机に、お父様とお母様宛の手紙を残し、準備していたロープを窓から吊るし、慎重にロープを渡り始めた。
…ロープ選びに失敗してしまったかもしれない。ロープが古いのか、一歩一歩ギシギシと不穏な音を立てるロープに私は冷や汗をかきまくっていた。
「もう少し…もう少し…」そう自分を励ましながらロープを渡っていく。…ようやく地面に降りることができた、私の部屋のある二階から地面まで多分5〜6m程度なのだが、私的には20mの巨大な壁を駆け降りた気分だ。「ハァ…ハァ…」と荒ぶった息を整えるも、足はさっきの疲れと恐怖から脱した安堵感でうまく動いてくれない。
「ちょ、ちょっとだけ休憩…」ここに使用人達が見回りに来るかはサッパリわからないが、兎にも角にも休憩を挟まないと歩けそうにない。「少しだけ…」と横になる。