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無くしてしまった大輪に  作者: 燈崎 明
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〜世間知らずお嬢様の探しもの家出大作戦〜


 昔、誰かの背中に乗っかって見た夜空でドーンと大きな音と同時にヒューっと空を上り、美しく広がる…何か。そこから先はあまり覚えていない、覚えていることと言えば気が付いたら家のベットの上にいて、お父様とお母様が抱きしめてくれたくらいだ。それからわたしは「あの日見たものは何なのか、私は何故ベットの上にいたのか。」誰に聞いても皆口をそろえて「きっと夢だったのでしょう。」とはぐらかされてしまう、そんなはずはない!私は確かにあの時おぶられていた大きな背中、お父様とお母様に抱きしめられた感触を覚えている!どうしてもあの日見た”何か”知りたい。そう思い続けてきた私はとある行動に出た。

「家出なのです‼」そう大きな声で叫んだ私は、ハッとなり両手で口を押えた。「聞こえてないですよね…?」キョロキョロと周りを見渡すが、幸い周りに人の姿はない。ホッと息をつくと手に持った一枚の紙を見る。

【あの日見た何かを探す家出大作戦。】と見出しに大きく書かれた計画者だ。私はこの2年間、使用人や両親に隠れ家出の計画を立ててきたのだ。

すると扉からノック音同時に「美咲みさき、入るぞ。」 

急な来客に私は焦り散らかし、紙を背中の後ろに隠す。 

それから間もなく扉が開いた。 

髪をオールバックにまとめ、吸い込まれるような深い藍色の瞳の男性、そう私の父、伊集院忠臣いじゅういんただおみお父様だ。

紙は何とかバレていないようだが、お父様から見ると明らかに何かを隠している者の姿勢を取った娘が大きく飛び跳ねている。普段表情を崩さないお父様も顔に戸惑いの表情が一瞬浮んでしまうのも仕方ない。 

しかしお父様は何処か気を使ってくださったのか何も見なかったかのように近くのイスに腰掛け、急いでベットから降りようとする私を静止し、落ち着いた低い声で話し始める。 

「いきなり変なことを聞くようで申し訳ないんだが、どうしても気になってしまってな。」私はドキリとしてしまった、まさか家出計画がバレてしまった?そんな私には気付きもせずお父様は淡々と続ける。

「最近使用人の間で、お前が最近何処か落ち着きがないと噂していると耳にした。実際のところはどうなんだ?」私は落ち着きの無さの原因は心当たりしかなかった、計画実行が近づき、大きい高揚感で私自身か気付かぬうちに落ち着きを失っていたのだろう。 

「えっとぉ、それはぁ…実は私、最近お父様や使用人達に隠れて、ゴルフ…を始めまして、それで落ち着きを無くしていたのかもしれません。」…嘘である。ゴルフなんてお父様がお父様のご友人とやっているのを見たことがあるだけである。そんなことも知らずお父様は「おお!美咲、お前もゴルフに興味があったのか、そんなことなら隠れたりしないで私に言えばいいものを」と大変喜ばれるお父様を見ると心が痛い。勿論ゴルフ何てやったことのない私は、「ハハ」愛想笑いしか出来ない。家出から帰ってきたらゴルフの練習をしよう。 

私への疑いか晴れてお父様は満足したのか、上機嫌で「いきなりすまなかったな」と一言言って部屋を去っていった。

その日の夕方、家出前の最後の家族団らんの時間を過ごした私は、いつも以上お父様やお母様に甘えてしまった…やはり私も何処か惜しんでいる部分があるのだろう。「"何か"を見つけてすぐに家に帰るから」と自分をむりやり元気付けた。

夜、家出を実行する時間がやってきてしまった。

計画は簡単、二階にある私の部屋から門まで誰にもバレないように移動→事前に調べたバスルートで家から離れる→“何か”を見つける→家に帰ってお父様とお母様に事情を説明する! とこんな感じだ。

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