3回目
そんな二回目の死を思い出したのも、十四歳、ダッシュモンド伯爵家の応接室で、レイナールを見た瞬間だった。
一体何の嫌がらせだろう。
何で死ぬ人生を繰り返すの?
繰り返さなくていい。殺された記憶なんて持っていたくないのに…。
目の前で座っている、無表情な男。
金のために父とつながる伯爵夫妻。時々見せる表情が、本当は格下の家に媚びたくないのだろうと思わせた。
こうして前の記憶が戻るのは、何の因果だろう。私が死んで一番幸せなのは誰?
持参金を持ってきて、結婚して身内となり、興味のない女ととっとと手を切ることができた人物。…目の前の男、レイナール?
婚約式が始まる前に激しい頭痛に襲われてうずくまり、そのまま気を失った。
意識が戻ると自分の家にいた。すぐに父の元に駆け付けると、婚約したくない、と必死に懇願した。
「気に入らなかったのか? おまえ、ああいう顔は好みだろう?」
父はしれっとそう言うけれど、顔はともかく、結婚式の日に殺されてたまるものか!
かといってそんな「前の人生」のことを語ったところで信じてもらえると思うほどバカでもなく、正当な言い訳を思いつかないまま、家の事情により婚約の決定は覆らなかった。
お茶会も相当用心した。でも思えば過去二回はお茶会では何もなかった。そして今回も。殺されるのはどちらも結婚式当日。籍が入るまでは生かしておこうという魂胆?
殺すほどの思いを持っているなら、何かあるだろう。持参金もしかり、好きな人がいて早く一緒になりたいとか。それも探ってみたけど、何もなかった。
月に一度会う日。レイナールは全てに無関心に見えた。義務をこなし、時間が来ればあっさりとお開き。馬車まで見送りはするけれど、ドアが閉まるとすぐに家に入っていった。
私はこんな人と結婚して死んじゃったんだ。例え死ななくて、そのまま結婚生活を続けていたところで幸せになれてはいないように思えて、何だかがっくりした。
そして、迎えた結婚式当日。式を終え、伯爵家に戻る時も侍女と護衛をつけた。ウエディングドレスから着替え、急に眠気に襲われ、ちょっと仮眠のつもりで横になった。
眠ってからの記憶がない。睡眠薬でも飲まされていたのか、寝ている間にまたしても死んでしまったらしい。死因はわからないけれど、恐らく殺されたのだろう。