1-2回目
結婚式を終え、新たに暮らす伯爵家に着いてすぐ。
ドレスもそのままに、出された果実水を口に含み、息をつく。
異変を感じて飲んだものを吐き出し、そのまま血を吐いて倒れた。
体を襲う猛烈な痛みと苦しみ、息もつけない。だんだんと視界が狭まり…
私は死んだのだろう。
そんなことを思い出したのは、十四歳、婚約者となるレイナールを見た瞬間だった。
この人の妻となって数時間後、私は殺された。
あの時の毒の味を思い出し、私はその場に倒れた。婚約式は延期となった。
このまま婚約せずに済むことを願ったけれど、世の中そんなに甘くなく、後日、私不在のまま婚約は成立した。
レイナールの家は伯爵家だった。二年続いた水害を起因に領の経営が悪化、借金の利息の支払いで精一杯、家の修繕もままならないほどで、仕事上縁のあった父が支援を申し出た。家同士のつながりの証として、由緒あるダッシュモンド伯爵家と新興貴族である我がオーウェン男爵家の婚約がもたれることになった。
レイナールも私も、お互いを特に意識していなかった。
親に言われるままに月一回のお茶会で顔を合わせ、世間話程度の会話に沈黙を挟みながら一、二時間を過ごす。そして私が学校を卒業し、十八になると親が決めたまま淡々と結婚。
結婚式を終え、差し出された果実水を断り、ドレスを着替えようと自室に戻る途中、何者かに背後から心臓を一突きされた。
激痛、だっただろうか。胸に当てた手ににじむ真っ赤な血。誰かの悲鳴。そのまま前に倒れ…。
多分、死んだのだろう。