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※イラストレーター、びねつ先生のオリジナルキャラクター「生足ちゃん」のショートストーリーです。
※先生には先に読んで頂き、掲載許可を得ています。
俺にはクラスメイトの中で気になってる子がいる。
彼女はよく一人でいて。
クラスでは“かわいいのに不思議な子”と思われている。
昼休み。
彼女は一人、教室を出ていってしまう。
「おい晃汰、昼飯食おうぜ!」
「わりぃ、ちょっと用事」
友人の誘いを断って教室を出る。
「どこいった…?」
いつも昼休みは教室にいない。
どこで何をしてるのかを知りたかった。
「俺ストーカーみたいじゃん…」
キョロキョロと廊下を見渡す。
奥の人気のない階段を彼女が登っていくのが見えた。
「でもあそこは…」
ここは三階だ。
あとは屋上しかない。
屋上ドアは施錠されてるはずだけど…。
ギギギ...
「開いてる…」
彼女がドア付近にいない時点で、開いてるとは思ったけど。
「寒っっっ!!!」
開けた瞬間、一月の冷たい風に吹かれた。
凍えるように冷たい…。
「あなた、何しに来たの?」
一陣の風の先に見えたのは、フェンス際に座って焼きそばパンを食べている彼女だった。
訝しげな目で俺のことを見ている。
「あ、いやその…入っていくのが見えて、開いてるのかなって」
「注意しにきたの?」
「そんなつもりはないよ。寒いから、大丈夫かなって」
彼女とまともに会話したのはこれが初めてかもしれない。
それくらい、彼女は教室にいない。
「大丈夫」
また、彼女は焼きそばパンを頬張る。
側には牛乳もあった。
結構冷たい風が吹いているのだけど、彼女は一つも寒がらない。
それどころか、彼女は食べながら履いていた上履きをおもむろに脱ぎだした。
現れた、何も身にまとっていない素足。
それは彼女の一番の特徴だった。
“生足ちゃん”
クラスではその特徴からそう呼ばれている。
毎日素足で登校している彼女。
靴下を履いているのを俺は見たことがない。
この真冬でも。
きちっと冬服を着て、マフラーも巻いて、それでも下半身は常に生足だった。
その姿を俺はひたすら『きれいだ』と思っていた。
スラッとした細く白いあし。
現れた足の指や足の裏も、毎日素足で靴を履いているとは思えないほどきれいだった。
「…何?」
ジロジロと見てしまっていたようで、また訝しげにしている彼女と目があってしまう。
「ごめん…裸足なんだなって」
「いつもなの」
それは知ってる。
「靴下も靴も、締め付けてくるもの大嫌い。なくなればいいのに」
パンを食べながら、どこか遠くを見ながら彼女は呟く。
その横顔は無表情だけど真意を言っているように思えた。
やがて全て食べきった彼女。
「…まだいたの?」
俺は、食べている彼女を横目にフェンス越しから外を見ていた。
とてもとても寒かったけど、居心地の良い場所・時間だった。
…彼女にとっては迷惑だったかもしれないけれど。
「なにか見える?」
彼女は俺の隣にきてフェンス越しから外を見る。
上履きは履かず、裸足で歩いている。
「痛くないの?」
「ざらざらしてて気持ちいい」
あまり表情には出さない彼女が微笑んだ…気がした。
本当に裸足が好きなんだな…。
もうすぐ昼休みが終わる。
「教室、戻らないと」
「うん」
彼女はタオルで足の裏を拭いて、上履きを履いている。
タオル?
もしかして、よくここで裸足で過ごしていたりして…。
そんなわけないか。
くだらない妄想はやめて、教室に戻ろう…と。
「わっ」
急な突風。
「えっ」
その時の彼女。
スカートがめくれて見えた…お尻。
本来あるべきものがなかった。
「言ったでしょ…締め付けるものが嫌いって」
俺はどう言えばいいのかわからなかった。
「…絶対に誰にも言わないで」
赤くなった顔で、俺を睨む。
彼女…足立ひみのさんの大きな秘密を知ってしまった…。