温泉地
朝方魔王城から出た私達はマナボードの森に夕方ごろついたのだがこのまま板さんに会いにいってしまうと野営をすることとなり危険なので近くにある温泉地で一泊し明日の朝からまたこちらに来ようということとなった。
ようこそ川の温泉へという看板をくぐると猫耳をつけたような娘と7分丈のカーゴパンツにTシャツ姿の少年が肩を組み二カーっと笑い親指を立てている銅像が見えた
説明欄にはその昔賢者の少女と勇者の少年が魔王討伐へ行く途中見つけ連戦の中で傷ついた体を癒やすために利用していたと書いてある
効能は鼻づまり 胃部膨張感 精力減退 マナ不足・産後の疲れ・肌荒れなどに効くらしい
「これ あなたのお父さんですのよこっちがタマちゃんね」
ナベちゃんが銅像を指差し教えてくれる
「えー 」
そういえば銅像はお父さんが中学生の頃のアルバムの写真の格好によく似ている
半ば半信半疑ではあったがナベちゃんの話を聞いていると嘘はなさそうだ本当に
お父さんもお母さんもこっちに来たことがあったのだろうと思うようになっていた
お父さんとお母さんがこの世界からいなくなった後、温泉地は魔王アガレスの直轄地になりそこから誘致を受けたサキ・ホテルアンドリゾーツが開発を手がけて今の宿泊街になったということだった
「ナベンナ姉様ーいつついたのー」
私達が竜車を預け宿屋に入ろうとすると青い髪をした美しい少年が息を切らせてやってきた
「あらぁ アスモ様、まぁまぁこれからご挨拶にいくところでしたのよ」
ナベちゃんがそう言うとアスモと呼ばれるその美少年は少し目線を落とした
「僕が悪い子だからまた 一人になっちゃったのかと思ってたんだ」
私は少し悲しげなその美しい表情にドキリとした
(なに この子 かわいすぎる)
「アスモ様 こちらがラミス様とリストちゃんの娘のらみですのよ」
ナベちゃんがそう紹介するとアスモはもじもじしながら
「あ あの 僕アスモ 」
と小さな声で私に自己紹介した
「らみです よろしくね アスモちゃん」
私が手を差し出すとアスモはナベちゃんの影からそっと私の手をとった
(やばいー このまま 引き寄せてちゅーしたいー)
アスモは戦闘の最前線であるサキュバスの街からこちらの温泉地へと疎開しているということだったがサキさんという人が魔王城に手紙を送り私達が温泉地へついた後ナベちゃんと一緒に行動するように頼んでいたらしい
「さあ らみ せっかくの温泉 楽しむのでございますよ」
ナベちゃんはそういうと私とアスモの手を引きずんずんと嬉しそうに宿屋の中へ入っていったのだった