明日都
「なんだかわかんねぇけど 涙は止まったみたいだな まあ一応薬飲んどくかぁ」
アスモはお店に設置されたベンチに腰掛け自動販売機で買ったオレンジジュースでアレルギーの薬を飲んでいる
「あ あの ありがとうございました」
美里は明日都の買い物中少し落ち着いたのかアスモが薬を飲みだすとうっとりとした目と上気した頬でお礼をいい始めた
(あ 美里 駄目ですよ 完全に王子様を見る目になってますよ)
「ありがとうございます」
私は遅れて明日都にお礼する
「いいっていいって あいつら施設の後輩でさ 最近あのへんで悪さするって噂を耳にしたもんだからさ 止めに来たってわけ いろんな理由があって荒れるのはわかるけどさ施設の評判が落ちるとあとあとあいつらも困るし他のやつもこまんだよね」
(ふーん施設にいるんだ)
私達はフンフンと明日都の言葉を聞く
「で どこで いいことする? 」
(えー なにかいい話聞いた感じになってたんですけど えっ美里 なにもじもじしてるんですか? )
「いこいこ」
明日都は2人の腕をつかんでどこかへ連れ去ろうとする
「アスモ トゥ クローズ」
私はとっさに禁断の封印呪文を唱えた
だが明日都の姿に変化はない まぁ この世界では呪文など効果がないこともわかっていた
「おねいさん 僕 おさかながみたい」
(えっ 効果が)
明日都の容姿には変化がないもののこちらを子犬のような目をして見ている
「どうしたんですか? 」
美里が不思議に思い明日都を眺める
「ん 僕 おさかなが見たいんだ」
明日都はキラキラとした少年の目になっている
幸い近くに熱帯魚ショップがありそこへ行くこととなった
明日都はショップの水槽に顔を近づけ興味深そうに水槽の中を覗き込んでいる
「あれ 俺なんで熱帯魚みてんの? 」
急に我に返った明日都は私達のほうを向いて聞く
(そうかぁ 効果はすぐ消えちゃうんだね)
美里が明日都をここに連れてきた経緯を説明する
「おれ 疲れてるわー アレルギーでたし 今日はかえるわー 」
「あ すみません お礼したいんで連絡先教えてもらえませんか? 」
(おお ナイス美里 )
私達は明日都の連絡先を手に入れ帰途につく
「らみ 明日都さん超かっこよかったわ 途中からなに? 魚を見たいだって きらきらした目をしてさ やばいわぁ 」
美里がはしゃいだまま私に話しかけるので私は嫉妬で少し不機嫌になりながら切り返す
「明日都は覚えてないとおもうけど私達幼馴染で結婚の約束までしてるの」
「えええ うそ 明日都さんそんなこと一言もいってなかったよ」
(あああ 私は嫌な女)
「うん だから あいつ忘れてんのよ 」
(早いうちに明日都を確保しておかなくちゃ)
しばらく沈黙が続いた後2人はニヤリと笑いお互いを牽制した
美里と別れ自宅へ帰った私はすぐに明日都に連絡をとった
電話は話中だ もしかしたら電話番号が違うのかもしれない 数分後もう一度電話をかける 今回はつながるようだ
「もしもし ? 」
「ああ わりぃ 今美里って娘からも連絡あってえーっと らみちゃんだっけ? 」
(美里 攻撃スキル発動早いんですけど)
「うん」
私は電話口でだまりこんだ
(アスモ アスモ アスモ)
「あれぇ どうしたの? らみちゃん調子でも悪いの? 」
私を気遣う明日都に感情が抑えられなくなった私は電話に向かってボソリと言った
「明日都 今からあいたい」