ベースキャンプ
「おーい これはー こっちでー いいかなぁー ちょっとー 暗いんですけどー」
カンナさんは宙を浮きながらテントの材料となる骨材を愚痴りながら運んでいる
魔気の根源ダンジョン地下10層でベースキャンプを設営するためパーティーは持ってきた資材を組み立てていた
タマちゃんが地下10層でベースキャンプを設営すると言い出したのはなにもここで休憩をしたいということだけではないらしい
魔気は地下へいくほど濃くなるためこのベースキャンプから1層下ってはキャンプへ戻りを繰り返し体を慣らし最終的に私達3人だけを魔気の根源へ送るという計画なのだ
「らみ アスモ これから1ヶ月はここからいったり来たり進んだり帰ったりを繰り返して反復するのです」
アガレスちゃんは私達にそう言ったあと遠くを眺めながらぼそっと私に言った
「らみ アスモは本当に記憶を取り戻して思い出したいのですか? らみと会うまでのアスモの記憶は・・・ 」
アガレスちゃんはそこまで言ったがそのあと口ごもってしまった
その言葉は私の心の深くになにか引っかかるものを残した
アスモは私が聞けばいつも自分の記憶を取り戻したいと簡単に言っているが考えてみればアスモが生きてきた時間の大半は魔王としての呪われた時間そして魔王ではなかったときもその力を他人にいいように利用されていた奴隷のような時間だ
(アスモは本当に記憶を取り戻したいの? )
私はベースキャンプから地下11層へと向かう途中そんな事を考えていたが結局答えは出ないままだった
アガレスちゃんと私とアスモ 元魔王ラミスの四天王で魔族である カンナさん ナベちゃん アルミちゃん サキさんはベースキャンプのタマちゃんとナバに別れをつげ地下13層に到達しようとしていた
「ハァハァ わたしー もうー ダメそうなんですけどー」
カンナさんはいつものように飛ぶのをやめ自分の足で歩きながらぼやいている
地下10層から魔気は下る度に濃くなり体を徐々に慣らして来たとはいえかなり危険な濃度まで上がっていた
「ハァハァ んまあっ カンナ こんなところで弱音をはいてしまうのでございますの」
ナベちゃんがカンナさんに話しかけるがナベちゃんもかなりしんどそうだ
「今日はここで引き返して帰ることにするのです」
アガレスちゃんは皆を気遣い今日の探索を終えることを宣言した
私達はベースキャンプに帰った後報告と今後の方針について話し合う
「うーん やっぱりにゃ どうやら魔気への対応力は魔族の血の濃さと関係してるにゃ カンナとナベちゃんはここまでにゃ」
タマちゃんは腕を組みながら設営されたドーム型のテントの窓から外を見た
タマちゃんの解析によると魔族の中でもカンナさんやナベちゃんは人族に近く魔気の影響を比較的受けやすいようでこれ以上の探索はムリであるとの判断からカンナさんとナベちゃんは地下13層までで私達のパーティーからの離脱を余儀なくされた
その後さらに地下14層 地下15層まではサキさんとアルミちゃんが同行したが15層から下へはダンジョンの制約で魔王因子保持者のみの
探索となり私 アスモ アガレスちゃんの3人で魔気の根源を目指した
「今日は地下18層を目指して目標にするのです サキちゃんアルミちゃんなるべく早く帰って来るからお願いして懇願します」
アガレスちゃんは地下15層に設置された小さなキャンプセットの中を覗きながら2人に別れを告げた
「さあ ラミ アスモ あとちょっとでもう少しなのです」
アガレスちゃんは私達に滑落防止のロープをくくりつけながらニコリと笑った
「アガレスちゃん なぜ 魔気の根源に一緒に来てくれるの? 」
私は当初根源へ近づくことがここまでたくさんの人を巻き込んで大掛かりなものになるとは思ってもおらず それを指揮したアガレスちゃんの意図を測りかねていた為3人になった今疑問をぶつけてみた
「フフフ らみちょっとエッチでいやらしい話だけど 魔気の根源へ近づくのはなにもらみとアスモだけの為で無くって無いのです 歴代魔王の中でも魔気の根源へ近づきその力を自分の力に取り入れて摂取した魔王は力があがりパワーアップするので治世の時が伸びて長引くと言われているのです」
(別にエッチじゃないとおもうけど)
アガレスちゃんはとても楽しそうに目を輝かしそう語った
地下18層 そのとき近くで魔獣の鳴き声のようなものが聞こえた