ダンジョン
この世界の中央に位置すると言われている魔気の根源への入口は意外なことにキッチン王国の郊外に位置していた
人の往来のある公道のすぐ隣にまるで現世界の地下鉄の入り口のようなものがポッカリと開いて石造りの階段に続いている
よくみるとポツポツとエルフ族がここから出入りしているようだがその他の種族が出入りしている様子はない
「みんにゃー 準備はできてるかにゃー ここから地下5層までは魔獣はほとんどいないにゃ エルフの族長にはタマ達が村を通ることを一応伝えておいたにゃ ただエルフたちは外から来た人間をあまり良くおもってにゃいから できるだけ静かに通り過ぎてくれっていってたにゃ」
タマちゃんはダンジョン入り口で私達に注意するよう促すとアルミちゃんの横を歩いていたナバとアルミちゃんの間に割り込んで腕をとりにゃははと笑いなにか2人に話しかけているようだった
私達は地下5層までは物資の補給を兼ねて触鬼を狩りながら進んだが特に変わったこともなくエルフの村の入り口である丘へと到着した
眼下に広がる村は地下でありながら緑を基調とした独特の美しい光で照らされていた
「いつ来てもきれいにゃー エルフの魔法の光にゃ」
立ち止まって見ていた私達の横をナバが通り過ぎる
「おお すげえ こんなんみたことないでぇ ちょっと 降りてみるわぁ」
そういってナバは丘を下りだす
「ナバ ちょっと待つにゃ それいじょういくと結界が」
タマちゃんがそこまで言った直後ナバは雷にでも打たれたかのようにその場で倒れ込んでしまった
「ナバ! 」
みんな一斉に叫ぶ
「ごめんにゃ もう少し早くいっとくべきだったにゃ これがエルフの村の入り口の鍵にゃ」
そういってタマちゃんは黄金に輝くド派手な弓で入り口に向かって矢を放った
鍵となっていた矢は入口付近でなにかにあたり見えていなかった門が出現した
「ナバ 痛かったにゃ ごめんにゃ でも まぁ だいじょうぶだから にゃ」
(タマちゃん なにが大丈夫なの)
てへへと笑いながら謝罪しているタマちゃんにナバはまだショックから立ち直れず呆けていた
私達は出現した門から静かに村へ入った
しばらく歩き村の街道に入っていく
人気はなくどこか寂しい雰囲気の村だ
タマちゃんはしきりに首をかしげている なにか腑に落ちない点があるのだろうか
私のそういった疑問は次の瞬間爆音によってかき消された 私はとっさにアスモの身をかばう
”歓迎 魔王御一行様”
ドーンといった音とともに花火があがり空に魔法の文字が大きく描き出された
それとともに左右の建物から人々が顔を出し魔王の紋章の旗をふる
いつの間にやらエルフ族の人たちが道沿いをうめつくすほどに集まっている
「らみ みんな 手を振って笑顔で答えて手を振るのです」
アガレスちゃんはわけのわからない私達に街道の人たちに答えるよう促した
私は照れながらも手をふりかえした
「にゃるほど 長老にゃかにゃか やるもんにゃ」
タマちゃんは一人納得していたようだがそのあと私達に事情を説明した
「ここには昔地下深くから登って来て街を荒らした魔獣を魔王が払ったという伝説があるにゃ今回はタマが長老に魔王のパーティーだということを伝えてたからにゃ 最近魔獣の被害が多くなっているこの村では魔王への期待が高かったんにゃにゃ」
アガレスちゃんはこの話を初めて聞いたのかフムフムとうなずいていたがこれだけの盛大な歓迎を受けてしまっては素通りもできないといい
村長に挨拶し私達のパーティーで魔獣狩りを行おうということとなった
実際このパーティで戦えば近くにいると思われる魔獣はことごとく排除されるだろう
「まぁー 嫌われてなくてー よかったんじゃないー」
「そうですわね この様子ならこの村から必要物資の調達ができるかもしれませんわね」
カンナさんとナベちゃんはいつもと変わらない様子で話していたが不測の事態に備えアガレスちゃんの両隣に陣取りガードしているようだった