親切なおやじ
「ふぅ お昼までがんばってみたけどうまくキッチン王国方面で乗せてくれそうな竜車はなさそうね こまったね 今度はあっちでやってみよ」
私はアスモとナバに苦笑いを見せながらキッチン王国行きの端切れをしまう
「おおい そこのねえちゃん」
少し離れた駐竜車場の脇からガラの悪そうな屋台のおじさんがだみ声をかけてきた
「なな なんでしょう あの な なにか お気の召さないことでも......」
私はおそるおそるおじさんの方を向く
「ねえちゃん そこでなにやってんだぁ」
(ひぃ 殺される)
私は心の中で思ったがミュウの危険回避のアラートはでていない
「そこ あぶねえから こっちきなって 朝からそこの屋台から見てんだけどねえちゃんキッチン王国方面にいきてぇのか 夕方まで待てんなら俺がつれていってやろうか」
おじさんは人相の悪い顔でニカッと笑い屋台を引く少し大きめの竜と竜車を誇らしげに親指で指さした
「え けど どうして」
これだけの悪人顔だそのまま売られてしまうかもしれないと思った私は素直に聞いてみる
「おおう その なんだ 俺にもあんたらと同じくらいの年の娘がいるんだけどそんな娘達がヒッチハイクもできずに困ってるのを見ちまったら助けずにいられねえだろ」
おじさんはてへへと鼻を掻きながら私達に話す
私達はどうやら顔は怖いが悪人ではなさそうなおじさんの行為に甘えることにした
おじさんは夕方までは仕事のようなので私達はおじさんの仕事の手伝いをしながら待つことにした
おじさんの屋台では触鬼のドロップ品 触鬼パイーアの豚肉を使ったパイを販売していたため私達はお店の宣伝をお店の近くでさせてもらうことにした
「豚肉のパイ おいしいよー いかがですかー」
「ごっついうまい パイは いらんかえー ひとつ たべてみんさいー」
私とナバは観光客に声をかけていく
アスモは声掛けがはずかしかったのかおじさんのところで下ごしらえなどの手伝いをさせてもらっているようだ
そして時間はすぎ店じまいの時がやってきた
「おう ねえちゃん達 今日はたすかったぜ この顔だろ 俺が声かけるとみんなにげちまう がははは これあまりもんで悪いけど食べな」
私達は売上がいつもの10倍になって上機嫌のおじさんにパイをもらい頬張る
(こ これは パイーアの豚肉はは脂身多めですこぶる柔らかい。食感にアクセントを与えるキノコは独特の芳香がありパイとからまり絶妙なバランスをかもしだしている)
「おいしーい」
私達がおいしさを満面の笑みで表現するとおじさんは照れくさそうな笑みを浮べて私達を眺めたのだった