ヒッチハイク
これからどうするのかという板さんの問に対して色々なことが頭の中をかけめぐったが祠までの旅での疲れもあり一度丘の上の家に戻って生活を落ち着けようという考えにいたった
「そうね らみを元の世界に戻してあげたいんだけど転移チケットを発行するのにもう少しだけ時間をちょうだい 準備ができたらこちらから連絡するわね それでいい?」
ミカエルちゃんは思案顔で腕を組んでそういうと疲れている私達を気遣ってか板さんに目配せをしてこの場を切り上げるように促した
「お おう じゃあ 嬢ちゃん達気をつけて帰りなよ あ そうだ ちょっとまってな」
板さんはそう言うと自分のお店の中に入って小さな小袋を持ってきた
「これもってきな まぁ 残り物のマナで悪いがな」
「ありがとう 板さん」
「ありがとう」
「ありがとなぁ」
私達3人は板さんとミカエルちゃんにお礼を言ってマナボードから出た
私達がマナボードの森へ帰ってきたときこちらは早朝であった為私達は朝もやのかかる森の中を足早に移動し駐竜車場までやってきた
「らみ 板さんに貰ったもん たべよおいなぁ」
ナバがお腹を鳴らし板さんに貰ったマナを食べようといいだした
私もお腹が減っていたため駐竜車場の端にすわり板さんに貰った小袋を開きそれをみんなと分けながら食べた
板さんのマナにぎりは特別な能力が付与されることがあるのでそういった事をナバと話しながら食べる
そのあとナバにもこの世界での自分のステータスの見方を教えそれを開いてみた
「おお ナバ 敏捷値すごく高いね 魔力もそこそこあるみたい おおやっぱり板さんのマナで珍しいスキルがついてるね あとで試してみよ」
「らみおねえちゃん 僕のも見てほしいなぁ」
私がナバに説明をしているとアスモもステータスを見てほしいと言ってきたのでアスモの開いたステータスをちらりと見た
「ア アスモちゃん す すぐ ステータス閉じましょうね」
私はアスモのあまりのステータスの高さに青ざめながらアスモにすぐそれを閉じるように促す
「アスモ アスモちゃんのステータスすごく高いんだけど絶対に知らない人の前でそれを開いちゃだめよ」
アスモのステータスはほとんど封印や忘却といった状態異常がでているもののその能力は間違いなくこの世界ではトップクラスかそれ以上だろう さすがは元魔王だ なにもわからない状態でこのステータスが良からぬ事を企む者たちに知られればすぐに悪用されるであろう
私はアスモに注意をするように言っておくとアスモははーいと屈託のない表情で手をあげた
(さて お腹も良くなったしどうやって帰るか考えよ)
まわりを見て真っ先に思いついたのはヒッチハイクだった
ここマナボード国立公園は大勢の観光客がくるためここからキッチン王国方面へ帰ってゆく竜車を見つけてのせてもらおうという算段である
ちょうど朝の露店の準備をしている人がいたので声をかけてみる
「おはようございます すみません この辺になにか字をかけるようなものを売っているお店はありませんか?」
「おう べっぴんのねえちゃん おはよう 物を書くものはないけどここにある はぎれなら一枚持っていってもいいぜ 汚れもん拭くのに使ってんだよ」
露店の店主は私に照れながら気前よく一枚の端切れを私にくれた
「えっと 後は書くもの 書くものっと あ そうだ」
少しためらったが私には得意な魔法があった
「ハバネロソース」
ちょっとだけ指先からハバネロソースを出しながらキッチン王国方面と端切れに書いていく
少し目に染みたがなんとか文字を書くことができた
(すこし酸っぱい匂いがするけどまあいいわね)
「ナバ アスモ 丘の家に帰ろう」
そう言って私は道の脇で高々と端切れをふるのであった