死闘
「アスモ アスモ こっちを見て」
箱庭の中、私達は一人でなにかに怯えながら暴れまわっているアスモから距離をとり声をかける
昔の記憶のないアスモが魔王時代の苦しみや悲しみを見せられたのであればパニックになるのは当然かもしれない
「らみ いけん(だめ) ぜんぜんこっち見んでぇ」
先程元の姿に戻ったナバは私の隣で一緒に叫んでくれている
「らみ うちが囮になってアスモの前までいって気を引くけぇ 後ろからアスモをつかまえてぇーな」
そう言ってナバはアスモの前に飛び出し右左へすばやく動きながらアスモの気をひいている
私は静かにアスモの後ろへまわり一気に飛びかかろうと近づいた
「きゃあ」
アスモの尾がナバの撹乱により大きく振られ私に襲いかかる
ひと振り目はなんとか避けられたものの帰ってきた尾を避けることはできなかった
私はアスモの圧倒的な力に吹き飛ばされ5,6回地を転がりようやく止まる
肉体的な痛みはないが人形の体は擦り切れ左腕はあらぬ方向へ曲がっていた
「ハァハァ もう一度」
精神的な疲労は人形に反映される、私は息を切らせながら自分に激を飛ばしアスモに後ろから飛びかかった
ナバはアスモの動きを鈍らせるため少しだけ動きの幅を狭めた
そして私はアスモの頭に飛び乗りその頭をホールドした
「アスモ 聞こえる? アスモ アスモ」
アスモに声をかけるがアスモは応じない 私はアスモの頭をホールドしたまま意識を箱の外に戻し箱の外にいるアスモの手をそっとにぎった
「アスモ 聞こえる? アスモ」
少し動きの鈍った竜の目から涙が流れ始める
「聞こえない」
アスモに反応があった しかし依然として動きが止まらない
「聞こえない 聞こえない 聞こえない」
(聞こえてるじゃない)
「アスモ アスモ」
「聞こえない 聞こえない 聞こえない」
「いい加減にして!」
バチン
泣きながら暴れまわる竜の首に足を巻き付け動く方の左手で竜の頭を平手で打った
すると箱の中のアスモは依然泣いていたが見る間に元の姿に戻った
私は元の姿に戻ったアスモを片方の腕で抱きしめた
箱の外では泣いているアスモの手を握りながらココにオッケーのサインを送ったのだった
「らみ おねえちゃん......ごめんなさい」
どうやら落ち着いていつものアスモに戻ったようだ
私は次のお題に備えアスモのサポートをナバに任せ箱の中の人形のあるべき姿を想像し形を整える
「だいじょうぶだでぇ ナバオネエチャンもおるけぇなぁ ええこええこ でへでへ」
「ナ ナバねえちゃん く くるしい」
私が箱の中で自分の体のメンテナンスをしている間にナバは箱の外でアスモの顔をグリグリと自分の胸に押し付け少し意地悪な顔をしていた
「はいはい じゃあ 最後のお題をだしますよん いいかしらん」
見かねたココはコホンと一つ咳払いをして次の準備を始める
ココの手から光の玉が箱の中央に降ろされると私達は個々の生活の場面を再現したステージを見せられた
過去なのか未来なのかわからない
しかしそこにはいつもの自分の部屋、生活があった