神の箱庭
私達はココの置いた神の箱庭と呼ばれる物を上から覗き込む
「らみ アスモ ナバ これからん あなた達は精神の半分を使ってこの箱の中にはいってもらうのん 中には3体の特殊な人形があってその中にあなた達の精神と感覚の半分をわけるん そして私の出すお題にしたがって動いてもらうわん 中の人形たちはあなた達の精神のありようによって形を変えていくのん まあ 外にいるあなた達の精神の半分がその有り様を見て自分を矯正していくっていう話なのん ちょっとむずかしいかしらん」
ココは私達を見ないで箱庭の中に人形らしきものを置いていく
私はナバとアスモを見てみたが2人共なんだかあっけにとられたような顔をしている
「ココで注意なん 精神や感覚のバランスは最初半分ずつを使ってもらうんだけどん 私がお題を出した瞬間からそのバランスは自身で制御してもらうことになるん あまり人形の方に感情を移入すると箱庭から抜け出せなくなるから気をつけてねん」
ココはそう言うと箱庭を置いたテーブルを囲んで座っている私達をなにかの文字で囲み陣をつくった
「もうちょっとまっててねん」
ココはもう一度祭壇の方へ戻ると木の枝のようなものを手に持って出てきた
「用意はいいん?」
用意はいいかと言われてもなにを用意すればいいのかもわからない
「いいで」
私が答える前にナバははりきって答えてしまっていた アスモは楽しいのかニコニコ笑っている
ミュウに反応がない事を考えるとこの行為事態に生命の危険はないのだろう
「じゃあ はじめましょん」
ココが聞いたこともない言葉の詠唱を始めると陣はほのかな紫色に発光し私達をつつんでいく
そして完全に光が私達を包んだと思われた瞬間に霧が晴れるように意識は覚醒していった
不思議な感覚だ箱の中の人形の一体になりまわりを見回すこともでき箱の上から自分の人形の行動をながめ見ることもできるのだ
「さあ みんな人形にはいったん うまくできてたら手をあげてん」
ココは箱の上から人形に向かって言葉を投げかける
私達はいわれるまま人形の手を上げた
「よっしー みんなはいったん うまくいったわん じゃ 早速だけどお題をだすわねん」
ココはそう言うと両手を合わせ天につきだし詠唱をはじめた突き出された手を開くとそこには小さな光の玉ができていた
そしてその玉を静かに箱庭の中央に置き今度は両手を広げその手をパチンと合わせた
その瞬間私の中で変化が始まった
なぜだかお腹が空いてくる いや ひどく空腹だ 人形越しに光の中を見るとそこにはひと切れのパンが見える
アスモ ナバの人形が一斉に光の玉に飛びかかろうとしていた
とっさに私はアスモ ナバを押しのけ光のタマの中にあるひと切れのパンを奪ってしまった
なにも考えていなかった ただただ目の前のパンが食べたかったのだ
そして私は奪ったパンを一人貪った
そこでパチンと音がして私は箱庭の外にいる自分への意識へと引き戻された
「らみ 見てみてん これ今のあなたのすがた」
箱庭の中を覗くとそこには醜悪な形をした体中に口のついた生き物がなにかを貪り食っている
「ああ」
私はため息ともおもえるような声を出し両手で顔を塞いだ
「さあ らみ 修正よん 落ち着いて 大丈夫 ゆっくり 意識を人形に戻して手に持っているパンをナバとアスモに分けてあげて 大丈夫 パンはなくならないのん」
私はゆっくり意識を人形に戻しパンを貪るのをやめそのパンをアスモとナバにわける
そしてもう一度意識を箱庭の外にいる自分に移し自分を眺める
箱庭の中の自分は徐々に元の姿に戻っていく
箱の中の光の玉は霧散しそこにはまた人形だけの空虚な空間が生まれた
「らみ 落ち着いたん? 次のお題にいっていいかしらん」
ココはまた腕を天に突き出し詠唱を始めたのだった