長老
「じいじ! おきゃくさんだでー」
ナバちゃんはワハハと笑いながら私達を玄関から長老へ紹介した
「おお こりゃあ珍しいもんが来たなぁ ようきんさった ようきんさった そこにすわりんさい ナバ お茶いれてぇな」
じいじと呼ばれたこの老人はモフモフのお顔にお耳とまるで兎のぬいぐるみのようだ
「ここに来た人間はかれこれ300年ぶりくらいだじぇ あんたら どういった経緯でここにきんさった?」
長老は私達をちらっと見やると煙管をゆっくりとふかした
「おじいさん 私はゴッドミカエルちゃんの特別なチケットを使って一人で元の世界へ戻るつもりだったんですが儀式の途中にここにいるアスモの手を握ってしまってそしたらアスモの記憶なくってここはどこだかわかんなくって」
私はしゃべっているうちに頭の中がパニクってしまい早口でまくしたててしまっていた
「ありゃあ もうちいとゆっくりはなしんさい ここはだいじょうぶだけぇ ゆっくりなぁ」
「あ すみません 」
私はナバちゃんがいれてくれたお茶を飲み落ち着くとゆっくりと事情を話した
「ほう 神のチケットでなぁ そうかぁ そうだなぁ 話からすると多分ここはあんたらぁがおった異世界とはまた別の世界だとおもうわぁ 姉ちゃんのおった 元の世界と異世界をつなぐ道のちょうど半分ぐらいのところだとおもうでぇ あんたこれからどうするだいな」
長老は右の耳を少し動かすとフゥと煙をはいた
「あ 私はもとの世界に帰りたいんです お父さんやお母さんのいる世界に」
私はアスモやみゅうの事を考えず発言したことをすこし後悔し青ざめた
「そうかぁ まぁ あんたが元の世界に帰れるかどうかはわからんけど 昔ここに迷い込んだ人間は北の祠でなにかの儀式をしたあとおらんようになったって伝説があるなぁ ああ 思い出したわぁ たしか名前は・・・アスモウディススとかいったかいなぁ」
(アスモ?)
長老が言う通りアスモが昔ここへ来ているのであれば帰り方を知っているのだろう しかし今アスモは記憶もなく封印された状態だ
私はここに来てからアスモの封印を解こうと試したがそれはかなわなかった そもそもなぜコチラに来た時に封印状態になってしまったのかがわからない
「あんたらぁ しばらくここに泊まればええでぇ なんもない村だけえなぁ そっで北の祠にいってみんさい なんかわかるかもしれんけぇなぁ ナバ らみさんやぁが落ち着いたら北の祠までつれていってあげんさい」
長老はナバちゃんにそう言うとほっほっほと笑いながら口から煙をはいた
「らみちゃん アスモちゃん しばらくここにおるだかぁ うち うれしいなぁ」
ナバちゃんも長い耳をピコピコ動かしながら喜んでいた
「らみさん 悪いけどナバの様子を見てきてくれんかいなぁ いつもよりちょっと帰りがおそいみたいだわぁ」
翌朝疲れからかすっかり寝入ってしまっていた私を長老が小声で起こす
いつものように食料をとりにいったナバちゃんだったが今日はなぜだか帰りが遅くなっているらしい
「そこの道をまっすぐいって右に広がる林でなにか採るっていっとったけぇ・・・すまんなぁわしが動けたら見に行くんだけどなぁ」
足の悪い長老のかわりに私達は急いで支度し林の近くまでやってきた
「いやぁー やめぇてぇなぁ いたい いたい」
林の中でナバちゃんの悲痛な叫び声が聞こえた