密偵
「それで ナベちゃん さっき 外で 言いかけたこと なんだけど ねぇ」
「そう そのことなのでございますが ここに来る前 温泉で触鬼とひと波乱ありましたの」
ナベちゃんは温泉であったことの一部始終、スペランクが敵と密通していたこと、触鬼はここでの戦闘の裏では武器商人を装い経済を牛耳ろうと画策していることを話した
「ふぅ なぁんだ まじめないい子だと思って オーナーにすえたん だけど 触鬼 に 踊らされちゃったんだ ねぇ」
サキさんは人差し指を口の端にあてながらため息をついた
「サキちゃん それで どうするのですの? 敵が狙っているのはこの街の武器や賢者の石を売る事での経済的な支配ですわよ」
「はぁ そのことなんだけど 町の外で 行われる戦闘を 今やめることは できないと 思うの ねぇ だから 武器を買うことを やめることも できないわ ふぅ だったら こちらも 敵が武器を つくっている 場所 あるいは 武器の 原材料の出処を 内部から 押さえる 必要が あると おもうのよ ねぇ」
サキさんは唇をゆっくりと舌なめずりすると話をつづけた
「いま 武器の取引 の商談は C地区で 行われているの そして その商談へは 私の付き人が いつも行って武器を買い付けるの おそらく らみちゃんの言っていた 触鬼がその付き人ね はぁ 次の商談はみんなで行ってみましょう もちろん付き人に 案内してもらうわ ねぇ」
サキさんは私のトゥルーネームによってはっきりと自分の部下が触鬼であると分かったのは相当なショックであったのだろう
案内してもらうと言ったその言葉からはサキュバス特有の怒りからくる妖艶さが伝わってきた
「ビルド こちらが 魔王アガレス様 直々に 私達の監査に来られた らみ様ナベンナ様とアスモ様よ くれぐれも そそうのないように お願いするわね ねぇ」
商談へ出発の日サキさんは付き人ビルドを呼び出し再度私達に紹介した
「こんにちわ ビルドっス よろしくおねがいします っス」
ビルドは私のトゥルーネームにより正体がばれていることにまだきづいていないらしく気さくな笑顔をこちらに向け挨拶をかわした
長身で笑顔のかわいい好青年に見えるが中身は触鬼(真名 ナーム)だ
(触鬼なのに言葉が流暢だわ これが高レベル触鬼?)
「ビルドさんよろしくおねがいします 監査なんてうるさいでしょうけど不正がないのかしっかり調べさせてもらいますね」
私はサキさんとナベちゃんに言われた通りにビルドに少しだけ言葉の圧力をかける
あえて少量の敵対心をあたえることで私達のことを信用する自然な流れをつくるのが目的だ
そしてビルドを御者に据え私達はC地区でおこなわれる武器商談会へとおりたった
商談会はC地区にある地下にある空洞でおこなわれ 武器・防具・魔法道具などブースごとにわかれて構成されていた
私はトゥルーネームを使いあたりのブースを観察する
(見事に触鬼だらけだわ)
だが ここではいきなり襲いかかって来るような触鬼はいない
ビルドは私達を案内し中央へ向かって歩いていく
そのとき 一つのブースの中から私達を引き止める声がした
「イイブキ アリマス カウコトヲ ススメル ソンハ サセニャイ」
「カッテイケ カッテイケ」
(この人たち 猫人族と三眼族・・・・)