ナベちゃんの家
私達はマナの森を離れ一路王都へ向かう、インキュバスの街への旅の物資の買い出しの為王都ショッピングモールへ向かうのだ
ナベちゃんの話によると王都は度重なる触鬼の襲来と国による政治の腐敗により混乱し難民となったものは魔王であるアガレスちゃんに助けを求めた
アガレスちゃんは魔王軍を派遣し王都を掌握し混乱した王都を魔王軍下に置いて沈静化したということだった
「さ ここがうちよ だいぶ帰ってなかったから汚れちゃってるわねぇ まぁとりあえずなにか食べますわよ」
私達が王都についたのは2日後の夜だった為ナベちゃんが住んでいたという家で一泊することとなった。ナベちゃんの家は裏庭に竜車小屋のある宿屋風の作りだ。昔はここで宿屋を営んでいたといっていた
「らみ 屋根裏にラミス様とリストちゃんが薬の調合に使ってた部屋がありますのよ あとで上がってみるといいですわ」
食事は簡素なものであったがナベちゃんはどこかからワインのようなものを持ってきて上機嫌だ
「ええっ お父さんとお母さんここにすんでたの?」
私にとって初めての場所であったが私とナベちゃんそしてお父さんとお母さんがつながる場所だと思うとすごく落ち着く感じがした
「そうよ ラミス様が魔気を失ってリストちゃんが新しい家を丘の上に立てるまでの間カンナと私とここにいたんですわよ」
ナベちゃんはワイングラスを片手に懐かしそうに遠くを眺めながら語った
「僕もみてみたい」
食事中もじもじしていたアスモは調合室に興味があったのか小さな声で私に訴えてきた
「うん じゃあいっしょにみにいこ」
私がそう言うとみゅーは私をつたってテーブルに降りそのあとアスモの頭にとりついた
食事が終わり移動するとナベちゃんが屋根裏の調合室のドアを開けランプに魔法で小さな火をともしていく
「うわぁーなんかすごーい」
屋根裏部屋は思っていたより広く作業台や壁を這うパイプのようなもの学校の黒板、ソファーベッドのようなものまであった
部屋の色彩はお母さんの好みだろう魔法陣の描かれたカーペットの色は現実世界の自宅のカーテンに使われている色と同じだ
「らみ 触鬼の攻略が終わってしばらくこの世界にいるならこの部屋使ったらいいですわよ」
「ありがとう ナベちゃん」
私は即座に返した。やはりこの世界で家と呼べるものがなかったのはストレスだったのだろう心の中がすっと軽くなるのを感じた
黒板の方を向くとアスモが黒板に書いてある文字を読んでいる
「どうしたの アスモちゃん」
「らみおねえちゃん ここにポーションの作り方が書いてあるよ 僕 今度つくってみる」
そういったアスモの目はキラキラと輝いている
(んーそかそか アスモかわいいーぞー)
私がなにげに作業台の上にあった本に手をのばしペラペラとページをめくっていると突然みゅーの目が怪しく光った
「らみー 元気かそっちの世界どうだ このスキルプログラミングが発動してるってことは多分ナベちゃんの家だね」
みゅーからお父さんの声がする
「らみー,ちゃんとご飯食べてる?病気になってない?」
「ちょっと おかあさん」
みゅーの向こうで録音中ジタバタしてるようだ
「らみ その本父さんと母さんが集めた薬のレシピが載ってるから ゴールドがなくなったらそのレシピで薬をつくってギルドで売りなさい それじゃあくれぐれも体に気をつけてな」
「らみ いい男いたらちゃんとつかまえておくのよ」
「ちょ ちょっとかあさん」
ブツッといって音が途切れみゅーの目の輝きが元に戻った
私は久しぶりに聞いたお父さんとお母さんの声に少しばかりホッとした。その反面もしかしたらこの世界でずっと生きていかなければならないのかという不安が湧いてきた
そんな不安が顔にでてしまったのかアスモが私の顔を覗き込む
「おねえちゃん 僕ひとりで眠れないからいっしょにいていい」
(ふふ いいわよ アスモちゃん 抱き枕化してあげるわ)
「うん 今日はいっしょにねよっかー」
私達は調合室を出てナベちゃんが寝室に用意してくれた部屋で眠ることとなった