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カレン洗礼を受ける。

'20-1/31 ポルトボヌール王とスゥーベ公のエピソードを抜いて、文章整理を行いました。

 


 "お・・・、、、重い。"


 洗礼式に向けて、衣装の試着をしていて俺は思う。何が?と問われると、着飾らされた洗礼式の盛装が、だ!母親であるミラベルが、気合いを入れて金糸銀糸に宝石まで縫い込んだ上着にオーバースカートを着せて来た。


 幼児用で小さいとは言え、上下でゆうに1、2キロはあろうと推測される衣装なんだなこれが。3歳で、12、3キロの体重になんと7分の1弱の重量がある。60キロの成人が、8キロの鎧を着せられているのと同じだ。


 控えめに見えて豪華な衣装は、鎧よろしく硬くて重い。今までシルクという物を見た事はないが、貴族としての体面を重視した豪華さを出す為に、ゴテゴテとした刺繍は必須なんだろうな。


 今まではオムツにオールインワンのベビー服か、下着のシュミーズ(シュミジュエ)にヒラヒラとしたワンピースだったのが、イキナリの鎧並みの重量ドレス。


 上はシュミジュエ→ブラウス(ラブルース)→長袖のジャケット(ラジャケットゥ)に、下はシュミジュエ→ドレープたっぷりのアンダースカート(ペティコート)オーバースカート(ジュープ)に、本番では頭に白いレースのヴェールを被せられる。


 洗礼式の有るタムズ月は真夏なのに、この出で立ちでは暑さと不快さで息が詰まって窒息しそう。


「母様、重いよぉ〜・・・。」と、文句をミラベルに言っては見たものの「我慢しなさい」と返された。「もう少し大きく成ると、パニエとコルセットを下に着けますからね。これは、まだ楽な方なのよ?」と畳み掛けられる。


 周りの大人達を見れば予想は着いたが、それでも自分の身に振り返り現実を突きつけられると、"パニエきょわい、コルセットもっときょわい"になり気分が滅入る。女って、綺麗でいる為ならこんな重い物でも平気なんだ。


 銀板を磨いた姿見の前で、溜め息が出るわ・・・。つい、現実逃避をして鏡を品評する。この鏡も、やっぱりガラス製品じゃないな。窓に嵌め込まれているガラスも、所々歪んで薄っすらとだけど黄色い色が入っている。


 原料の硅砂の選別が甘いのだろう。これもその内に改善の必要があるな。ガラスは今でも十分な風合いがあるものの、銀鏡は薄くともかなりの値が張る代物だわな。ふむ、板ガラスに簡単な化学メッキでもするかな。



 〜〜〜〜〜



 "あ〜、あ〜、あうう〜ん、祭りと聞くと、日本人の血ぃ〜が騒ぐぜぃ!"


 もじもじする俺は、お祭り屋台のB級グルメが恋しくて仕方がない。と言っても、この世界にはイカ焼きやリンゴ飴や綿菓子に箸巻きは無いんだろうな。とは言え、この世界ならではの夜店グルメを堪能したい!したいったら、したいんだ!!


 洗礼式の主賓はカレンなのに、洗礼式が夜中な為に睡眠調整でここ一週間は早めに寝かし付けられる。屋台が営業している時間に起きて居られないなんて〜〜。


 俺は、庭師ネイサンの弟子であるテオに相談してみた。最近は何かと気詰まりで、よく中庭に出る。出て来た時に跪く親方の隣でチョコナンと平伏しているソバカスの男の子である。年は、7歳と言ってたな。


 ガキ同士の遊び友達になるのに、そんな時間はかからなかった。他にも、割と年の近いメイド見習いが居たが、俺が話しかけると畏まり過ぎて会話にもならない。リーラの目が有るから、庭師小屋に誘って本題を切り出してみる。


「テオ、あの、あのね・・・、私、外のお料理を食べてみたいの。」「なんだよそれ?お貴族のお嬢様なら幾らでも取り寄せ放題じゃねえの。」「違うのあのね、お祭りの時に出たお店のお料理の事なんだ。」


「お嬢様、何で出店の事を知ってんの?」「下働き(メイド)達が、夏に開かれるローヌ・イズコールは、とっても楽しいお祭りなんだって廊下で話してたの。それで、色んな出店があって、どれに入るか迷うぐらいなんだって。」


「そうだな、確かにそうなんだけど、お嬢様が食べたいと思う食べ物なんて出てないと思う。」「この館のお料理は、とてもお上品で美味しいのだけど何か物足りないのよね。


 テオなら、良い屋台料理の店を知ってると思うからお料理を持って来て欲しいの。ダメ〜?」「良いけど、お金が要るぜ?」金か〜、そんな物は生まれ付いてこの方、触った事も無いや。


 俺はすかさず、胸のブローチを外して渡し「これをお金に変えて、お料理を買って来て欲しい。」と言うと、テオは慌てた様子で「おいおい、こんな高価な物を金に変えたら俺が盗んだ物と勘違いされるだろうが。」と呆れ気味に文句を言う。


 そうして思案顔で顎を撫でると、「しゃーないな、お嬢様の頼みなら俺が奢ってやるよ。」俺は顔をパッと輝かせ「本当に良いのね。」「ああ、その代わりに不味くても味は保証しないぞ?」


 なんて、たわいもない子供同士の無邪気な約束を、そのあと酷く後悔する事になる。


 次の日、ローヌ・イズコール2日目の夕方、庭師小屋に入ると、そこにテオが食べ物の良い匂いをさせて待っていた。


「もう冷めたのを、炭火で温めて置いたんだ。」俺はゴクンと喉を鳴らすと、包みの中の物を凝視する。こ、こ、これか〜、これがこの世界の屋台料理なわけね。


 ぷ〜んと、ニンニクの様な香りが鼻を突く。「これなーに?」「それは豚の腸の串焼きだな。その匂いの元は、行者ニンニク(アイユ)だな。その巻き付いた葉っぱがそうだ。それに、ポワネギを同じ串に刺して挟んである。」


 わー、予想外のホルモン焼きだー。それに、軟骨がコリコリっとした喉の串焼きもある。「悪く思うなよ?庶民が食べられる肉は、臭みの強い肉や鶏肉、内臓なんかと決まっているのだから。上品なお嬢様じゃあ無理かな。」俺は気にせず、見つからない様に時間を惜しんでガツガツと食べた。


 更に俺は、薄いパンに何かを挟んだ食べ物を頬張る。「それはポンヌフと言ってな、俺達がよく食べる塩魚の塩抜きを油で揚げてコケモモの蜂蜜漬けを掛けて薄いパンで挟んで有る。」うんめぇ〜、これは美味いわ。甘辛さが絶品だな。白飯が欲しくなる。


 俺がポンヌフを夢中で食べていると、テオが急にしんみりとしだす。「お嬢様。お嬢様と直接に話せるのは、これで最後になる。明日からお嬢様は、本館に移られるからな。これからはもう、普通の貴族と平民の立場になるんだ。」


 俺は小首を傾げるとテオの背中をバンバンと平手で叩いて「何言ってるんだか、もう永遠に会えなくなるわけじゃないでしょ!」そう言うと、残ったポンヌフを半分にして差し出した。


「テオ、お腹が空いているんでしょう?だから、言っても始まらない事に気が沈むのよ。ほら、食べなさい。明日から貴族と平民なら、これは貴族の命令よ。平民を食べさせるのが貴族なの、平民は逆らったらダメなんだからね。」


 テオは、はにかんだ様な笑顔を向けて「これを買ったのは、俺なんだけどな。」と、照れ隠しに毒付いてみせる。「そうね。いつかは領の皆んなを、私が食べさせて見せるわ。」そうして2人は、笑い合いながら食べ物を頬張った。


 そして、タムズ月のローヌ・イズコール(=新月祭)の新月日(しんげつび)をカレンは迎える事になった。


 この国の洗礼式は、タムズ月の新月日の3日前からのお祭りに始まり、新月の当日の夜、新月の始まりと共に貴族の子弟子女の洗礼が行われる。また、地形的な条件も有って南の王国首都と北の公爵領都で別れて行う。



 〜〜〜〜〜



「お嬢様、今日の洗礼式でお嬢様のマナの性質が分かる様に成りますよ。」と、洗礼式の手順を説明するリーラ。


 ''キタコレーーー!!!!''


 やっと、異世界ファンタジーに相応しい名詞が出たよ・・・(感涙)。


 異世界!魔法!エルフにドワーフにケモミミ!なんて思って接触する機会が来るのを期待しては居たんだけど、別邸に閉じ込められて一向にお目にかかる向きもなく、正直に言えば軽く落胆してた。


 実に、今日の洗礼式で俺の魔法力が分かるらしい。ひと口に魔法と言っても、この世界の人々は生命力(マナ)を用いる事で望む結果を発現するからマナ法と呼ぶらしい。語呂が悪いから、マ法で良いや。


 なんでも、この世界を創造された主神アイテールが、自らの内に宿る神聖なる精霊力によって5つの構成元素をお創りに成り万物を整えられた。


 この時、生きとし生けるものに自らの精霊を注ぎ込み生命力を授けられる。これを人々はマナと称して、目に見えぬ不可知の力(かみのちから)を利用して、世界の構成元素に影響を与えるのがマナ法と呼ばれるマ法だ。


「そもそも、この王国の成立に関わる重要な力がマナ法なので御座います。マナには二つの利用法が有りまして、一つ目は人が直接に口で神を讃えながら使うマナ法で、二つ目は聖別されたインクで描かれたマナ法陣により元素を利用する方法です。


 いずれも体内マナを使いますが、後者の方がより大きな力を行使できます。扱えるマナの影響を受ける元素は、光相(ひかりそう)地相(ちそう)水相(すいそう)火相(ひそう)風相(かぜそう)に別れます。


 それぞれに対応する大神がおられて、光の神はユーピテル、地の女神はケレース、水の女神はテーテューヌ、火の神はウェルカース、風の神はアネモイのお名前を用います。」"ほぅほぅ・・・。"どうでも良いが、乳母よアンタは息切れをしないのか?


「先日もお伝えしましたが、洗礼というのは清らかな水をくぐり、穢れ(けがれ)を洗い流して生まれ変わった気持ちで神の御前(みまえ)に立つ儀式です。」"生まれ変わりなら任せなさい・・・、とは、言わない(笑)"


「洗礼の後、神官に導かれるまま神像の間のマナ法陣で大神の御名(みな)を唱え(ぬか)ずくと、お嬢様と相性のよろしい元素の神様の像から兆しが現れます。聖句は神官が唱えるので、お嬢様は復唱すれば充分です。」


「洗礼は、それだけで良いのね?」


「もちろんですわ。カレン様のように、賢いお子様ばかりが洗礼に来られる訳ではないので、幼い者にも分かりやすく儀式は丁重ながら簡潔明瞭に進められるのです。むしろ、儀式の後にあるお父上様との対面式と、日を変えて行われるお嬢様の誕生日にお披露目のパーティーの方が大変かと思われます。」


 俺は"うひっ・・・"とは言わず、お嬢様らしく、了解の意を込めて真顔(まがお)頷く(うなずく)とニッコリと微笑(ほほえ)んだ。


 リーラはタダの乳母役だけでなく、幼い主人(あるじ)の為に一般教養の教師の役も兼ねている。大店の商家の若奥様らしいのだが、折から公爵家に招かれてカレンの乳母をしている模様だ。もちろんカレンには歳の近い乳兄妹もいて、カレンが産まれたばかりの頃のリーラは、時たま席を外して面倒を見ていた。


 カレンが賢い呼ばわりされるのは理由があって、この歳で既に一般的な読み書きに計算まで行うからなんだ。"やったぜ俺!天才だ〜(笑)"なんて、幼い時の天才が長じて凡愚とならない様に注意して置こう。なんせ、中身は遥かに昔、大学を出たオッサンだからな〜。


 簡単な文字を習い、本館から本を調達して貰って読めない箇所は飛ばしながら読み進め、分からない単語や綴り、表現に関する質問をメモして周りの人間にひつこく聞くので、"お嬢様はお賢くていらっしゃる"が板に付いてしまった。


 まーな、普通の3歳は、ここまで向学心を持たないもんな。俺はともかく、この世界の情報に飢えているんだぜ?書くのも、お嬢様らしく綺麗な筆跡をマスターする為に、面倒でも自分で書き留める癖を付けているんだ。


 真っさらな地面に、細い木の棒で綴りの反復練習なんてお手の物だぜ。そうだテオは、幼いとは言え貴族のお嬢様が、一心不乱に地面に向かうのを訝しんで声をかけて来たっけ。


 この世界の識字率なんて、絶望的なもんだ。教養なんて、どこ吹く風な庶民に、字は自分の名前や生活で使う分がわかれば恩の字。字を書くなんて、もっての外なんざザラ。


 だから、テオが手持ち無沙汰の様子の時にマルバツゲームを仕掛けてみた。まずは、先攻後攻を決めるジャンケンなのだが、ハサミは紙に強く、紙は石より強く、石はハサミに強いという三すくみにハマったみたい。ひとしきりジャンケンで遊んで、マルバツゲームに成ると更にハマる。


 で、先攻が必ず勝つと説明した所で飽きが来たが、次の日に30×30のマス目を切ったボードと色違いのボタンを用意して、五目並べを教えたらテオは夢中になったな。


 人を教えるコツは、まずその人の興味を引く事なんだぜ。どんな難しい学問も、興味こそが端緒(たんしょ)(=始まり)なんだなコレが。この世界の文字は、日本や中華のような象形文字(=1文字で意味をなす)を起源とする文字圏じゃなく、基本25文字の音素文字の羅列で意味を表す文字圏に該当する。


 それにより、例えばA=アーレト、F=フィンフの様なアルファベット表記になる。テオに文字を教えるのに、ボードゲームに引きずりこんで、音素文字の羅列によるゲームにまで進めて、最後に借りた神話などの柔らかな書物=物語に興味を示して貰う積もりだった。


 何故か?って、周囲で俺と近しい歳の友達が出来なかったからだよ。そりゃ途中から、テオに物を教えるのが楽しくなったのも有るが、見ず知らずの世界に来て、周りは遠慮するか赤ん坊や幼児と見るかくらいで、ホームシックどころか絶対に家に帰れない事を思えば、寂しさに友達って物に飢えても不思議はないさ。


 でも、その試みもここまでだな。



 〜〜〜〜〜



 別邸正面に、三台の馬車が並び12の騎兵が周囲を警戒して守りを固める。俺は真ん中の馬車に、リーラとミラベルとお付きの侍女2人と乗るらしい。御者が2人従僕が2人は、馬車の外に乗るみたいだ。


 馬車に乗るのに、俺やミラベルは重たいドレスを着込んで居るのでミラベルは慣れているかも知れないが、俺は置かれたステップでは心許ない。


 仕方なくリーラを見上げると、従僕が心得ましたとばかりに俺を抱え上げ様とする。"!"「かあしゃま!」俺は慌ててミラベルのスカートの陰に隠れてスカートを掴んでイヤイヤした。"男は嫌じゃー!!!"とは言え無いが、態度で示すと「もう、この子は仕方ないわね。こんな時は、甘えん坊さんなのかしら?シャリーズお願い。」


畏まり(かしこまり)ました。さ、お嬢様。私が抱えて差し上げますからご安心なさってください。」ん、妥当な線だな。ミラベルのお付きには力仕事専門の侍女がいる。それがこのシャリーズなんだ。


 俺たちを乗せた馬車が、正面門から掘を渡す橋を過ぎて街中に差し掛かると、沿道から"お嬢様おめでとう御座います"の歓声が上がる。おいおい、もう夜中だぜ?ま、皆んなホロ酔い気分でハイになってんのかもな。


 教会に着いて馬車から降ろされると、教会の表には何十台もの馬車が並んでいた。俺と同じ年に生まれた北アイテシアの貴族の子供達は、皆んな今日の洗礼を受ける。洗礼を受けるのは、だいたい200人ばかりとリーラから聞いた。


 巫女達は控えの間に案内してくれて、俺たちは下着になり水に浸かっても良い姿に着替える。時間が来たら中庭に(しつら)えられたプールへと(いざな)われる。


 そのプールは、四方に神獣の像が立ち並び、張られた水まで緩やかな階段状になっていて、新月前の密かな光りに幻想的な雰囲気を醸し出していた。日本と違って、アイテシアに梅雨はない。夏はだいたい晴れ間が多いので、過去のローヌ・イズコールが豪雨で延期になった事は一度もないそうだ。


 神官長が厳かに、「大いなる天地万物を産みし主神アイテールよ。ここに集いし我らの子を罪の(けが)れから救い出し、洗い清め、定められた道を示されん。子らに、主神の慈悲と祝福を賜わらんことを乞い願い奉る。」


 新月が始まると、「おお・・・、時は満ちたり、暗闇の中の一筋の光を道として子らよ歩みなさい。」先程から、新月の暗闇の中で床に夜光虫の様に浮かび出るタイルに導かれながら歩を進める。


 暗いので巫女が手を引いてくれるままに進むと、神官にお姫様抱っこをされた。"いや、男は結構なんですけど・・・、"と思いつつ、神官だし、まーしゃーあんめー。


「聖句を唱う、私に続きなさい。《聖なる主神アイテールよ、我が身を清め賜え。》」俺が復唱すると、「これから頭まで、この清めの水に浸かります。息を止めなさい。」俺が息を止めると、鼻を押さえられて静々(しずしず)と頭まで水に浸けられ直ぐに引き上げられる。


 周りでも同じ文句が聞こえるので、何人かの神官が同時に洗礼をしている様だ。案の定、息を止めるのを失敗してカハカハゴホゴホやってる奴もいるな。一通り洗礼が済むと、控えの間で下着を変え盛装に着替えてベールを被り、奥の間に保護者も揃って全員で移動する。


 "よっしゃ〜!ここからが俺のターンだじぇい!"異世界ファンタジーの主人公なんだぜ?神像の兆しなんか、大盤振る舞いで神像の全部が歓喜に踊り出すさ。


 ここからは、10人単位で順番にマ法陣に進んで拝礼して、聖句の復唱の繰り返しという退屈な作業を見物する事になった。実に、この場で1番身分の高いカレンが順番では一番最後なんだ。


 退屈で死にそう。聖句を唱えると、必ず何れかの神像と聖句を唱えた本人の間で幻想的な光の道が繋がる。今か今かと順番待ちをして、最後に呼ばれてマ法陣に進み、今日は何度も聞いたセリフを儀式に従って暗謡(あんよう)する。


天地(あめつち)(あいだ)に、すべらかなる自然を整えられしアイテールよ。御身の御力である5つの元素を束ねる、光のユーピテル、地のケレース、水のテーテューヌ、火のウェルカース、風のアネモイよ。我が進む道を祝福し、煌々(こうこう)と照らし賜え。」


 聖句を唱え、俺がマ法陣に瞑目(めいもく)(=目をつぶる)して額ずくと、次第に周囲のザワザワが聞こえなくなる。辺りが水を打った様に"し〜〜〜ん"という音が聞こえそうなほど静り帰った中で、「ひぅ・・・。」と誰かの喉で押し殺した悲鳴が響いた。


 俺が奇妙さに顔を上げベールを外して辺りを伺うと、ミラベルがシャリーズに支えられて唇を押さえて体をワナワナと震わせている・・・???



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