料理長の憂鬱。/前編<幕間>
今回は、クレモンの横顔を彫るのに苦労をしました。では、お楽しみになって下さい。
俺は、クレモン・アソエ・ノワゼンハレンだ。この北アイテシア1の名家の総料理長をしている。俺に父はいない。母はリディという愛称で、平民には珍しい明るいサファイア色の瞳と半透明な金色の髪が自慢の美しい容姿をしていた。
リュディヴィーヌ・ドンフロンが正式な名前だ。故郷である、シャルドロン区ブレタンジュ領ドンフロン村の代官屋敷に奉公に出されて、男爵との間に俺を身籠り屋敷を放逐された。
小さな頃の記憶では母の実家は貧しい農家で、養い切れないから奉公に出した娘が余計者の俺を孕まされて帰って来たなんて、外聞も悪いし計算外にも程があると聞かされて育つ。
それでも母は、平民なのに愛してはいけない人を愛してしまったのだから、奥様方に疎まれたのは自分の所為だと誰も恨まなかった。実家からの細々とした援助と農作業の手伝いに落穂ひろいで食い繋いで、乳児の俺を育てたのだろう。
最初の記憶は、仕事をする母の背中の温もりだった。母は、一途に父を愛していたと思う。俺が物心が付いた頃、実家から盛んに結婚話をされて言い争いになっていた事もある。
奉公に出て、孕まされて帰ってくるコブ付きの女にマトモな縁談が来るはずもなく、無理矢理に嫁がされる事を嫌がって3歳の俺を連れてシャルドロン区最大のヌフシャルドン領都フランクヴィルに出たんだ。
フランクヴィルまでの旅路の中で、幼心にこの国は税金で溢れていると思った。道を徒歩で移動しても領主の支配地ごとに通行税が掛かり、馬や馬車で移動したら更に道路税が加算される。橋には橋ごとの施設税があり、舟に乗っても船賃以外の領境を越す為の通関税が課せられる。
例え、青銅貨1枚、半銅貨1枚にした所で、持ち合わせが余り無い母子にとっては大変な事だ。
都市には、税に絡んだ住民登録制度というのがあって、流民や逃亡農奴の流入を防ぐ仕組みがある。農地戸籍から、都市戸籍に移行するのはそんな簡単な事じゃない。農民は、領主にとっての資産だからな。
実家から逃げるように都に出て来た母子は、殆ど財産らしい物を持っていない。週一で催される神殿のお救い小屋に駆け込んで、事情を話して自由民である事の証明を取って、やっと2人で都市門をくぐることが出来た。
神官様に身元を保証して貰い、母はしばらく住み込みのきく旅館の下働きで生計を立てる。住民登録税は市民権を得るには必須だし、毎年の住民税や都市計画税などはとても重く、働けど働けど楽な生活は出来なかった。
母は、街の雑用など汚くて力の要る仕事でも嫌がらず、母1人子1人の生計を立てるため馬車馬の様に懸命に働き通す。既に俺も、母の手伝いをこなす年齢に成長していた。
育ち盛りの俺は何時も空腹を抱えていたが、その時に世話されていた厨房の残飯整理の仕事で得られる食料で空きっ腹を満たしていた。母と俺が真面目に働くものだから目をかけて貰って、貴族街の良いお屋敷の残飯も整理するようになっていた。
貴族の残り物は、下働きの食事になる。その残り物の残飯だ、時には腐った物も有ったし、甘い物など欠片も入ってはいない。それでも、貴族の食べ物は贅沢で、俺は知らない内に舌を肥やしていたよ。
辛くて困難な生活の中でも母は、父の事を触れる度に何時も少女の様な表情で頬を染めて語る。母にとっての最初で最後の激しい恋に、子供としては父はいったいどんな人物なんだろう?と気にかかる。
「貴方のお父様は、優しくて立派な代官様なのよ。だからお父様の恥にならないよう、他人の悪口を零したり、嘘を吐いて人を騙したり、暴力を振るって他人を傷付ける様な、心の貧しい人間にはだけはならないでね。」それが母の口癖だった。
「立派なお父様の子供でいれば、きっとお迎えに来て下さるわ。」父を愛して信じる母は、いつもこんな絵空事を繰り返していた。
別に病弱と言うわけではないが、この頃の母は偶に変な咳をして、朝から寝込んで昼には仕事に行く様な事があった気がする。俺は、そんな母の為に家事の分担をして、ナイフにフライパンを握る事もする様になった。
俺が8歳の時、貴族街で1番大きなお屋敷で厨房の下働きの募集があり、料理に興味のあった俺は今まで必死に働いて信用を勝ち取っていたので、自身の身元を神官様に保証をしてもらい、募集試験を受け合格して雇われの身となった。
それがカロリナから言えば、クロンの正統王家カロリング様のお屋敷だった。
厨房の下働きは、水汲み火起こしに始まり野菜の皮むきと少年には単調な重労働だが、そのくらいの仕事は慣れていたので他人が嫌がる仕事も率先して片付けていた。虐められても落ち込んで暗くならない俺は、誰からも信用されて皿洗いを任せられる様になっていた。
皿に付いたソースの味を盗むチャンスで、総料理長や副料理長の期待と信頼が無ければ出来ない仕事だ。幸い、俺の鼻も舌も特別敏感らしく、スーシェフに呼ばれては肉の熟成度合いをよく聞かれる程になる。
有る時スーシェフから、今日の賄い飯はお前が作れと言われたので、母の贅沢料理のグリンピースの田舎煮と丸ごとオニオンのスープ・グラタンを作って出した。皆んな美味しさに唸っていたよ。
貴族の厨房では肉料理メインで、野菜はザッと煮るか生のサラダにするかしかしない。まさか野菜が肉に負けない程の力強い風味が有るとは、誰も予想はしていなかっただろうな。
料理長から字が読めるか?と聞かれ、読めますと応えたら、お屋敷の書庫の鍵を渡されて料理本を読むことを許可された。
街の雑用をこなすには、字が読めないよりは読めた方が有利な仕事を回して貰えるから、前々から必死に独学をしていたんだ。厨房に入るのにも、すごく役に立ったよ。
時代による料理方法の変遷や、料理は歴史に関わりが深いので、そっち方面の本も読む様にしていたが、自分達アイテシアの民はキャナルとロマと、特にカロリナの一方の祖先、遠いクロンの故郷に憧れを抱く様になる。
13になっても、料理にばかり打ち込む俺を高く評価してくれたスーシェフは、いずれ出世するに違いないと自分の娘のコリンヌを紹介してくれた。一目で恋に落ちた俺は、器量の良し悪しなどは頭になかった。
ただ、俺にとっては最高の美女だ。母以外に生涯をかけて守りたいと思った女性と会うのは初めての事だった。直ぐに告白して付き合い始めけど、俺は心にかかる事があって、一度、別れ話を持ちかけた事がある。
嫌いなったのか聞かれて、不器用ながら自分の置かれた状況を説明して、その時の感情で頭に血が上って付き合い始めたとしても先がないからと言ったら、コリンヌに張り倒された。
「バカ!あなたのお母さんが一生懸命にあなたを育てて病気になった事も、ドン底から這い上がって来た事も、あなたが一途に仕事に打ち込む性格なのも、みーんな父から聞いて知っていて付き合っているの!女を舐めないで、あなたを見染めたのも支えたいと思った私の方からよ。」
泣きじゃくるコリンヌを抱きしめて、「ごめん、君に手を上げさせてしまった。さぞ、手が痛かっただろう………。こんな不器用な俺でも、付いてきてくれるのかい?」「謝るくらいなら、好きにさせた責任をとって私を娶って!」それが、お互いのプロポーズの言葉となった。
コリンヌは、気の利いたセリフ一つ言えない俺をそれでも良いと言ってくれる。「そんな小利口な男ならいらない、不器用でも真っ直ぐな貴方が好き!」
その日に、義理の父になるスーシェフに報告したら、「そうか、あいつは頑固だからな。振り回されるのは、お前の方かも知れないぞ?」そう言って、頭をコツンとだけ叩かれて結婚を承諾された。
母にコリンヌを結婚したい人だと紹介した時の喜び様は、床に臥せる事が増えた母が起き上がって自らフライパンを握るくらいで、俺がさすがに取り上げて料理をして腕を披露したよ。
もう随分と前に、光神殿の施療院に行って診てもらったら母の病気は労咳だそうで、この病気には栄養と長期の加療が必要で、完全には治らないとも聞かされた。働きづめで俺を立派に育ててくれた母、成ろうなら父の顔を見せてやりたい。
父は代官を務める男爵なので任地が変わる事もあるそうで、この時はブレタンジュのどこに居るのか分からなかった。代わりに、早く出世をし結婚してコリンヌとの子供を抱かせてやりたい!そう思う。
行方が分かったとしても相手は貴族で代官だ、平民ごときの事で勝手に任地を離れる訳にいかず、病身の母を連れて長旅をして会いに行くわけにもいかなかった。
どちらの親もこの結婚には賛成したので、俺とコリンヌは成人を迎える前に一緒になって、新居を構えて母も引き取る事にした。コリンヌは、よく俺の母に仕えてくれた。母にとっては、やっと手に入れた安住の地なんだろう、穏やかな笑顔が増えていた。
俺は成人を迎え見習いを卒業して、スーシェフの娘を妻に得た事もあり、肉、魚の下拵え役の腕は磨いていたので実力に相応しいレギュミエ(=野菜担当の部門シェフ)に出世をしていた。厨房は、実力優先の厳格な縦社会でもある。序列と役職を上げると、
1.シェフ・ド・キュイジーヌ(=総料理長)
2.スー・シェフ(=副料理長/料理の仕上げと、料理長部門長不在時の代替えもする)
3.シェフ・ド・パルティ(=部門シェフ)
【パルティの役職】
・ソーシエ(=ソテー料理の全般の責任者)
・ポワソニエ(=魚料理を担当)
・ロティシエール(=焙り肉料理一般の担当)
・フリティリエ(=揚げもの料理を担当)
・アントルメティエ(=前菜のスープ、野菜、パスタ担当*この中で、ポタジエがスープを、レギュミエが野菜を調理する)
・ガルド・マンジェ(=冷製料理の担当)
・パティシエ(=デザート全般とパンを管理する担当)
・トゥルナン(=調理場全体の助けをする料理人)
・ブーシェ(=肉、魚などの下拵え担当)
パルティは通常、ブリゲートを兼任する。15の俺は、パルティと言ってもレギュミエだけだから、まだまだ下っ端だよ。1年と経たず、野菜のゼリー寄せを編み出した功績でアントルメティエに出世した。スープは、俺の得意とする所なんで、勇躍して役職をこなしたよ。
スピード出世に陰口を叩く奴もいたが、今は総料理長にまで上り詰めた義父が居るので影響はない。俺は、知識を得て技術が伸び、生来の香りや味に敏感なのも手伝ってメキメキと頭角を現していた。
パルティに成れば、給料もドーンと跳ね上がる。ボチボチ家族でも増やそうかと思っていた矢先に、家からの知らせを聞いて慌てて帰宅した。肩を激しく上下させる俺にコリンヌは、「お義母様が、急に酷く咳き込んだと思ったら、喀血されて辺りは血の海に………。」
俺は真っ青になってコリンヌの話を必死に聞いて、「それで、治療所の神官様はどう仰られたんだ?」「労咳で痛んだ肺腑に流行病の病魔が入って、もう長くないんだって………。」「そんな!やっと、働きづめだった母さんが安らげる場所が出来たのに、これから幾らでも親孝行をするはずなのに!」
俺の剣幕に母は起こされたのか薄く目を開けると母の頬を撫でる俺の手を握って、「……ぜぃぜぃ……、これで、いいん、だ、よ…。………よ、け、いもの、は………この、世から、おさら、ばした、ほうが、い、い………。」
「何を言うんだ、母さん!体に障るから、もう喋らないでくれ!」そうして、コリンヌに手を伸ばした母は俺の手とコリンヌの手を合わせて絞り出す様な息の中、「………………ふ、う、ふ、は、な、か、よ、く……あ、りが、とう……………」そう言葉を残して気を失うように眠った。
3か月が過ぎて、母は枯れるように永遠の眠りに就いた。労咳で傷ついた肺腑に病魔が取り憑いたんだ、あっという間の臨終だよ。結局、あれから咳き込みが多くて言葉らしい言葉は聞けず、目だけは穏やかに俺たちを見守っていた。
神官様が驚いていたよ。息が出来ない苦しみに勝る死に方は無いと言うのに、その逝った顔はどこまでも穏やかで信じられないと……。ああ、この母は、後に遺される者に心配を掛けまいと、最期の息を引き取る瞬間まで笑って生き抜いたんだ。
流行病で亡くなった者は、袋に詰められて一緒に火葬をされるのが普通の扱いだ。母は人徳があったのだろう、このフランクヴィルで知己を得た人が挙って寄付をくれて、貴族や富豪でもない、ただの平民である母の立派な葬儀ができたんだ。
俺は500人弱も集まった参列者に、「母は、一生懸命に人を愛して敬愛された立派な人物で、決して弱音を吐かない人でし……た…。」もし、この場に父が居たら、どんなに母は喜んだだろうか、、、。そう思うと、それ以上の言葉にはならなかった。
コリンヌが俺を抱きしめて、「あなた、もう泣いても良いのよ。」と気遣ってくれる。その温もりに包まれて妻のお腹に宿った新たな生命の事を考えれば、母さんの命はここに受け継がれたのだから、貴女の一途に人を愛した歴史は無駄では無かったと思えた…。
「いや、嘆いて自分を憫れむような事はしない。母さんの想いを、粗末にだけは出来ない。」弔辞を再開して、この素晴らしかった母を送り出した。
後で遺品整理をしていたら、母の持ち物にしては豪華な七宝焼きのペンダントが出てきて、蓋を開けたら優しげな表情で清潔そうな雰囲気の貴族青年の絵姿があった。
絵姿の裏には、Mon chéri.とだけ書いてあって、俺と同じ緋色の髪をして、同じく緑色の瞳をしていたから、直観的にこれが父だと確信した。
25になった俺は、野菜のマジシャンと称されるほど腕を磨き、後一歩までスーシェフに近づいていた。最高の素材、最高の技術のみが、人に称賛される一皿になると、この時は信じて疑わなかった。
そんなある日の戦勝記念パーティでのこと、スーシェフを見習う為に会場で仕上げの調子を見ていたら、俺と同じ髪と瞳の色の壮年の男性貴族を見つけた。そう言えば今日は、シャルドロン区の記念式典だったか。
貴族に不用意には近づけないので、メモだけメイドに渡して貰い、自分は控えの間を借りて父と思しき貴族を待った。別に、母が亡くなって父の事はどうでも良くなっていたが、その強く激しく純粋な想いだけは、このペンダントと共に伝えたかった。
私的会話という事で、護衛は最小限で部屋に入ってくる。俺は片膝を突いて、会釈の体勢で中央の絨毯傍に控えて言葉をかけられるのを待つ。「さて、クレモンと申したか、面を上げなさい。」「ははっ。」
「其方は、マジシャン・デ・レギュームと呼ばれ、近頃このフランクヴィルでも音に聞こえて名高い。」「ははっ、過分のお言葉をありがとう御座います。」「その其方が、我が身に何用か?」
長年の代官暮らしで体の線はくずれ、頭はカツラで、瞳は濁っている。絵姿の若々しい剽悍さなど欠けらも残っていない。人に命令するのに慣れきった調子で喋るから、長年の思いが複雑に絡まって声が出ない。
自身の髪と瞳の色を指して、このペンダントに覚えが無いか?尋ねてみた。護衛に渡されたペンダントを繁々と眺め、一頻り思い出そうとする仕草に、だんだんと腹が立ってきた。
そして思い出したのか手を大袈裟に打って、「り、り、り、なんだっけかな?そうだ、リディだ。リュディヴィーヌの事は片時も忘れた覚えもないな。」この男はー!片時も忘れた覚えがない?では何故、必死に思い出していた。
「そうか、リディの息子なのか、お母さんは元気にしているか?もう随分になるから、嫁いで立派な旦那と息子に恵まれたんだな。」この男にとっては、あの一途な母の事でさえ一時の火遊びなんだ。
俺という子供が出来たことも、記憶に無いくらい些細な事なんだろう。捨てられたとは思っていたが、忘れられていたとは思いも寄らなかった。母よ、こんな男を信じて愛して疑わなかった母よ。貴女の真珠の様に純粋一途な想いは、コイツにだけはくれてやれない!
「いえ、母の名前はコリンヌ。艶やかな紅髪のアン=コリンヌにお記憶が御座いませんのなら、こちらの人違いでした。申し訳ございません。」跪いて、この男に頭を下げる。
「んー、紅髪でコリンヌというメイドには覚えがないな。そうだな、誰にでも間違いは有るからなぁ〜。」去り際、俺の側を通り過ぎる父と呼ばれた男に肩を叩かれた。その男の事は、綺麗さっぱり忘れた。それが、あの母を忘れた男に対する復讐だった。
男の肖像の入ったペンダントを、フランクヴィルの墓地に埋まっている母の遺骨の傍に葬って、俺の故郷は受け入れてくれたフランクヴィルの街と、何より母さん自身だと改めて自分に言い聞かせた。
俺は父母を失ってから、カロリナ人としての存在意義に固執するようになった。
キャナルから独立して、キャナルでもクロンでもないカロリナ人としての誇りを持つ事が大切だ。独立しきれないのなら、キャナルに手伝って貰ってクロンの祖先の地を回復してカロリナ人国家を建てて欲しい思いがある。
カロリング家とロレッタ家の経緯を知っていて、独立派であっても気持ちの良いカロリナ人は居ないだろう。間も無くしてジュヌビエーヴ様のお輿入れが決まると、有望な料理人をお連れになるとお声がかりがあった。
この目と耳で、当代のデュク様とジュヌビエーヴ様を退けられてデュチェッセになられたミラベル様は、どんな方なのか知りたくも思った。
義父である総料理長にサラザード行きを相談したら、「冒険心を持って新しい地で人を識り、自分の腕を試したく思うのは優れた料理人の性だな。行ってこい!幾らでも自分を試して来るんだ。」
本当は娘を他所にやらず、俺に跡を継いで欲しいはずの総料理長が、手前勝手な希望を受け入れる度量の広さには感服した。さすがに、コリンヌの父だけはある。
後に俺の姓の由来となった、ノワゼンハレン属キンレンカ。帝国ではトロパエオラム属とも呼ばれ、戦利記念品を語源にもつ。
我がアイテシアでは、この真っ赤な花を指して"情熱の恋、燃える愛の炎"を表す。新大陸原産のこの食用花は、クレッソンと同質の辛さを含んだ食味を持つ。
スズキのポワレとアスパラガスソースが、マジシャン・デ・レギュームと称される俺の代表的な料理だ。
熱々のオリーブオイルを、スズキの皮目に上から回しかけて、フライパンで表面は香ばしくカリッカリにソテーしたスズキの切り身を、アスパラガスソースに乗せてキンレンカとサラダ菜を付け合わせる。
アスパラガスソースの滋味ぶかさ、辛味のする食用花は、主役である白身の甘味を引き立てる。目にも鮮烈な、キンレンカの紅とサラダ菜の緑がポワレに華を添えた。
いつか必ず成功して、巡爵を受けて家名を起こし、その切ないまでの母の想い、"燃える愛の炎"を名乗るのは俺だけだ。
そう心に刻んで、故郷を後にしたのは3年前の話だった………。
次の後編で、<幼少期編>は終わりにします。
クレモンは、カロリナ独立派ではありますが、融和を考えない訳ではないのです。そこら辺りの感情は、単純一様に言えない物があります。
次回も、校正をしたら即リリースしますので、予告はしません。




