まごうことなきデートです12
運ばれてきた料理を恵茉は写真にとることは無かった。
「?食べないんですか?冷めちゃいますよ?それとも食欲がない感じですか?それだと困りましたね、恵茉は2人分も平らげることはできないんですよね、可愛い女の子だから」
「なにそれ」
今日、久しぶりに恵茉が恵茉らしく笑っている気がした。
「映画どうだった?個人的にはすっげー面白かったんだけどさ」
話題は自然と映画の話になる。ここで上手く盛り上がらなければ、初デートに映画館はNGだと書いたあのサイトは信用できるかもしれない。
「えぇ~と、そうですね……」
もごもごしていた口を止めて、水を飲む。あら、お上品。
「ラストのぉ~、ヒロインがぁ~、亡くなっちゃうところが、涙なしでは見れなかったですね~。ホント、感動しっぱなしでしたよ、みんないい演技でぇ~、邦画も悪くないなーって思いなおしましたね!傑作中の傑作ですよ、邦画あんまり見てないですけど」
「え、本当に見てた?」
「み、見てましたよ~、やだなー高瀬君、恵茉がそんな、そんなことあり得ると思います?」
「疑ってるわけじゃないんだけど……というか、今日変じゃない?」
「ヘン……ですか?」
「変というか様子がおかしい気がして」
「そういうことなら、初めてだからかもしれません」
「緊張の裏返しだと思ってください」
恵茉は緊張なんて微塵も感じさせないほどの量のパスタを頬張って満面の笑みを見せた。
好きな人の前だと食事が喉を通らないって少女漫画で読んだけど、あれは嘘だと信じたいなんて思いながらアイスコーヒーのストローを咥えた。
店を出ても恵茉の足取りは相変わらずだった。
足取りが軽いでも重いでも無く、早いでも遅いでもない、不思議な歩調だった。
「どこに向かってるの?」
「高瀬君って中学の時とかどこで遊んでました?」
不意に投げられた質問に思わずたじろいでしまう。
恵茉に中学時代のことを聞かれたのも初めてだし、なんなら中学時代に友人や彼女がいなかったなんて思われたら最悪だと思い、自然に見栄を張ってしまう。
「まー俺はあれだね!ラウワンとかぁ~、ゲーセンとか多かったかな!友達に誘われること多くてサァ!あとほら、中学生ってプリ好きじゃん?他はカラオケとか!?なんなら今から行く?」
少しムッとした表情になった恵茉も負けじと言い返す。
「まぁ恵茉もそんなのいっぱいやってますけど?」
早足になった恵茉を少し幸せな気持ちで追いかけた。




