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かぐやインパクト  作者: どらっくまん
普段通りの日常から(神代掛流編)
4/49

5月11日(16時頃)放課後2

===神代掛流の視点===

【神代掛流】「ばーか。天才ハカーじゃあるまいし。お前何言って……」


会話の途中で、優衣が間に割って入る。挑発しすぎたことを怒っているのか、俺に向かって、怖い顔でグーパンの構えを握ってみせる。

ちょっと、神様!? お宅んところの若女神様、ちょっとばかし暴力的じゃ御座いませんかね?


【天原優衣】「明星くん……おとなしく先生に謝ってきた方がいいよ。こういうのはちゃんと反省して、謝罪して、許して貰う事が大切なんだよ」


【明星悠紀】「天原さんは真面目やなぁ。真面目正直ばっかだと、損することもあるがや?」


【天原優衣】「損とか得とかの問題じゃありません。これは人としての大切なことです。」


両手を腰に当てて、子供を諭すように叱りつける。

実際、明星は子供みたいな身長と顔立ちをしてるから、傍から見れは「教育お姉ちゃんが悪ガキを窘<たしな>めている」という光景だ。


【神代掛流】「道徳を言える立場じゃ無いけどさ。そんなちんけなアプリで誤魔化したって無駄だろ? 記録は改ざん出来たとしても、教室に着いた時間は、間違いなく遅刻時間だったからな。クラスの全員が証言するぞ。」


【明星悠紀】「ふっ、心配無用だがや! 飛び級進学した天才優良児たる明星悠紀。抜かりはないで」


……天才は認めよう。でも優良じゃないだろ?

それに


【神代掛流】「……抜かったから、特別指導室送りなんじゃねえの?」


【明星悠紀】「……う……」


痛いところを突いたらしい。黙り込んでしまった。


明星は、一年ほど前に転校してきた。

本人いわく、小学校と中学校を飛び級進学して俺たちの学園に来たらしい。

幼い顔立ちと小学生かと思える身長からすると、飛び級進学というのも嘘では無さそうに聞こえる。

制服を着ずに町中を一人歩きしたら、絶対警察に補導されるだろうし、学園の制服も、既製サイズでは大きすぎて、一番小さなサイズを更に縫い上げて、ユルユルダボダボで着ている状態だ。

……が……

生徒手帳に記載されている生年月日は、俺たちと同じ年。

つまり、ただの童顔チビって事だ。

飛び級進学してきた天才少年って話も、嘘。

……生徒手帳が偽造で無い限り……


【明星悠紀】「もうエエわ。わかったで。大人しく死刑台に送られたるわ……。んだけど、おみゃーさんら、親友を助けられんかったことを一生後悔してもしらんでね」


なんか拗ねちまったようだ。

スマホで時間をチェックしてから、荷物を俺の机の上にボンと置き去りにし、自ら死刑台と呼んだ特別指導室に出向くため、トボトボと肩をふるわせながら教室を出て行く。

俺と優衣は、顔を見合わせて肩をすくめた。


【天原優衣】「これで、ちょっとは懲りてくれるといいのだけど……」


【神代掛流】「どうだろな?」


【天原優衣】「それはそうと、掛流も掛流よ。あんな怪しげなアプリを欲しがるなんて、どうかしてるんじゃない!? ただでさえ犯罪者面してんのに、ホントに犯罪者になっちゃうわよ?」


【神代掛流】「まてまて、誰が欲しがったって? さすがの俺だって、そんな危険なアプリ要らねぇよ。ていうかIDタグが反応しなくなったら、今日の晩飯だって買えやしないじゃねぇか? そんな怖いことしねぇよ。」


【天原優衣】「あらま。そう。なら良いけど……。ところで、犯罪者面って所は反論しないのね?」


【神代掛流】「目つきが悪いことには自覚あるからな」


一瞬キョトンとしながらも、俺なりの気付きにくい冗談だって事に気付いてくれたらしく、クスクスと笑い出す。


俺は友達が少ない。

人と楽しく話したりするのは、あんまり好きでは無いのだが……

コイツらと話すのは、嫌いじゃ無いと思う。

笑顔の優衣に釣られて、俺も額のシワを緩めようと思ったその時。


【ナベ先生】「明星ぃ!! 明星は居るか!?」


俺たち二人しか残っていない教室に、学園で一番怖いと恐れられている渡辺先生……通称ナベ先生が怒鳴り込んできた。


【天原優衣】「え? さっき、特別指導室に行くって出て行きましたけど……」


【ナベ先生】「おまえら、明星とよく連んでるよな? かくまってると容赦せんぞ!?」


すごい剣幕で迫ってくる。

その剣幕に、優衣がたじろいで後ずさる。

ただ事では無い剣幕に、俺も席を立ちあがると、優衣を庇うようにナベ先生の前に立つ。


【神代掛流】「俺たちが明星と連んでようが、先生に何か関係があるんすかね?」


つい反射的に喧嘩口調で応えてしまう。


【ナベ先生】「神代ぉ? 先生に向かってその態度は何だ?」


【神代掛流】「何も悪い事をしてない生徒に向かって、その態度もどうかと思いますけど?」


一触即発の雰囲気を感じた優衣が、おずおずとしながらも丁寧な態度で説明をする。


【天原優衣】「え……えっと……、ちゃんと遅刻したことを謝ってきなさいって……そんな話をしまして、その後、納得してくれたみたいで特別指導室に行ってくるって、ついさっき教室を出て行きましたけど……」


【ナベ先生】「ふん。まぁいい。天原が言うなら間違い無いんだろう。俺はてっきり、神代と明星が何か連んで悪巧みでもしたのかと思ったんだ。怒鳴りつけて悪かったな」


俺に対してじゃなく、優衣に対して謝罪を述べた。

俺のことは、たぶんまだ疑ってるんだろうな。目つきで分かる。


【神代掛流】「……もしかして明星のやつ、特別指導室に行ってないんすか?」


すると、先生は手に持ったタブレット端末を俺たちに見せながら言った。


【ナベ先生】「この教室にはな、明星悠紀が、今も居る事になってんだよ」


【天原優衣】「……明星君が? ここに??」


どこかに隠れているのかと見回してみるが、そんな様子は無い。


【天原優衣】「居ないと……思いますけど?」


先生も、優衣の言う事を信じたのか、教室を調べることはせずにタブレット画面を閉じた。


【ナベ先生】「ここのIDタグソナーが壊れてるのかもしれん。お前らも授業が終わったんだからさっさと帰れ。」


先生は、そう言い残して、教室を出て行った。


【天原優衣】「明星君が、ここに居るって、どういうことだろ?」


【神代掛流】「どこかに隠れている……って訳でもなさそうだし……まさか!?」


明星が置き去りにした荷物の口を開けて、中からスマホを探り出す。

変なアプリを持ってるとか何とか言ってたから、もしかしてそれを使って……

画面を開くと、そこに“身の代人形”が華麗にダンスを踊っている画面が流れている。

しかも、その人形には、明星の あっかんべー の顔写真が写ってる。


【天原優衣】「……あ」


【神代掛流】「これか……」



IDタグを偽装できるアプリが、この世に存在しているという犯罪級の事実を知り、俺たちは、あいつを一人だけで特別指導室に送り出したことを、別の意味で後悔した。


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