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かぐやインパクト  作者: どらっくまん
普段通りの日常から(神代掛流編)
3/49

5月11日(16時頃)放課後1

===神代掛流の視点===

5月11日(木曜日)

終業のチャイムが鳴った。本日の授業は終了だ。

今の時代、教科書もノートも殆どがタブレット端末に統合されてるから、持ち帰る荷物なんて僅かなものだ。

荷物を片付けた生徒達から順に、次々と教室を出て行く。


【天原優衣】「ばいばーい。また明日ねー♪」


優衣が笑顔で彼らに手を振る。明るい性格の優衣は友達が多い。男女を問わず、この学園の殆どの生徒が優衣の友達だ。


……対して、俺は友達が少ない。


人と楽しく話したりするのは、あんまり好きでは無い。

群れて遊んだりするのも苦手だ。

教室の窓際席で、いつも無愛想な態度を取っている、いわゆる“ぐれ者”の俺に、好き好んで近寄ってくるのは、学園の不良共を取りまとめる喧嘩番長とその手下くらいだ。

最近は、そんな番長の手下すら俺に近寄ってこない。手頃な運動相手だったから誘われるのをそれなりに楽しんでたんだが……残念だ。


クラスメイトの大半が教室を去った頃、優衣と明星が俺に近づいてきた。

コイツらは、こんな俺と連んで何が楽しいんだろうか?

いつか聞いてみたいものだ。


【天原優衣】「掛流? まだ帰らないの?」


【神代掛流】「お前に言われなくても帰るぜ。」


帰り支度は、もう終わっている。

俺は、優衣がクラスメイトとの雑談を終えるのを待っていたわけだ。

こいつは、俺がさっさと一人で帰ると、後ろから追いかけてきて「何で先に帰っちゃうのよ!?」と怒る。

……先に帰ると怒るし、待ってると嫌味ったらしく言われるし、まったく何がどうしたいんだか。


【明星悠紀】「おみゃーさんら運がええがやな。こういう日に限って早う来とるなんてな」


うらやむような目で俺たちを見る。

今朝、コイツは登校時間に遅刻した。その上、遅刻の罰則を逃れるために、とんでもない裏手段を使ったらしくて、それがバレたのだ。

個別の呼び出しを受けている明星は、この後、特別指導室でミッチリとお説教を食らう事になっている。


【神代掛流】「ふっ。徳の高い俺には、神がかり的な何かが憑いてるんだぜ。」


【天原優衣】「憑いてるのは、神様というか、とってもカワイい女神様だけどねー」


自分で自分の事を女神様と言いやがりますよこの人……しかもカワイイまでつけて……


【明星悠紀】「掛流の“徳が高い”なんてのは事実無根で有り得せんことだがや。んでも美人の女神様ってのはホントの事だがね」


【天原優衣】「んもうぅっ! 美人だなんてー。明星くんったら、ホントのこと言っちゃってぇー。恥ずかしいわぁー」


まんざらでも無い……というか、頬に手を当ててて体をくねらせながら、すっげぇ嬉しそうにする。


【明星悠紀】「そんな天使のような女神の天原さんに、ちょっと手伝って欲しい事が……」


【天原優衣】「だめっ。このまま特別指導室のお説教を逃げるのを手伝えって言うんでしょ? その手には乗らないわよ」


【明星悠紀】「あちゃー。バレとったかぁー。まぁ、天原さんならそういうと思っとったで」


悪巧みがバレても大してショックでもない様子で、笑いながらおでこを叩く。

俺としては「あっぱれ」って効果音を付けたいような仕草だ。


【明星悠紀】「んなら掛流でもええがや。ウチに恩を売っておけば、徳が高くなること間違いないがや」


【神代掛流】「徳は要らんが、……報酬如何によっては考えてやってもいいぞ?」


俺は俺で、引き受けるつもりも無いのに、さも考えているかのような態度を取る。


【明星悠紀】「もし遅刻してまっても、遅刻したことが記録として残らんようにする、違法アプリの提供って事でどうだがや?」


【神代掛流】「ほう? そりゃ面白いな……もしかして、今朝それを使って遅刻を誤魔化そうとしたのか?」


【明星悠紀】「そうだがや。IDタグを偽装したり反応を妨げたりするアプリだがね。」


いやいや、そんなスゲー事が、アプリごときで出来る訳ないだろ。


IDタグとは、個人認証に使われている、言わば昔のICカードのようなもの。

鉄道の乗り降り・各種料金の支払い・登下校の管理・本人確認書類、はたまた、個認証の用途に留まらず、商品管理や医薬品の管理などなど、ほぼこれ一つで完結できるという超便利な代物だ。

9年前の事件以降、積極的に導入が進められて、俺たちくらいの世代だと ほぼ全員が、生まれてすぐの頃に受ける予防接種と併せて体内に埋められている。

埋める……っても、どこか一ヶ所にチップがあるわけじゃなく、静脈注射で打たれたマイクロマシーンが血液を巡って血管内や細胞組織との同化するので、基本的には体のどこでも認証が行える。

半世紀前から一般化している生体認証と使い勝手が変わらないので、普及するのに時間はかからなかったとか。


っと、

話が逸れたが、そんな大切なIDタグを自由に偽装したりするアプリが実在するとすれば、それはもう 遅刻を誤魔化す って程度の問題から大きく外れ、一気に法規違反という犯罪臭が臭ってくる。

それを知ってか知らずか、明星は楽しそうに続ける。


【明星悠紀】「スマホに積まれてるIDタグのアンテナモジュールにカーネルから強制アクセスして、エンタングルメントの……」


【神代掛流】「原理を説明されても分らんから、そんなんがあるなら実際に見せてくれよ」


そんな物があるわけが無い。と、わかりきってる俺としては、明星がどんな物を見せてくれるのか興味があった。


【神代掛流】「まさかそのアプリ、お前が『自作したんだ』」とか言わねえよな?」


【明星悠紀】「そうに決まっとるがね。こんなアプリ誰が作れるってんの?」


※二千文字超えてたんで、分割しまーす。(/_・)/

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