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かぐやインパクト  作者: どらっくまん
プロローグと言う名の思い出(神代掛流編)
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5月11日(朝)ピンポーン♪

※5月11日(朝)

===神代掛流の視点===

ピピピピッ♪ ピピピピッ♪ ピピピピッ♪


目覚まし時計の音が聞こえる。これは何度目のスヌーズだったろうか?


ピピピピッ♪ ピピピ……ガチャッ!


必死に俺を起こそうとする時計を、遠慮無く黙らせる。

何度目のスヌーズだったか覚えていないが、俺はまだ眠いんだ。


たぶん、まだ……起きるには……早……ぐぅ……

あっという間に、俺は二度寝……いや八度寝くらいの眠りに落ちていった。


……ピンポーン♪


目覚まし時計とは違う音が、夢の世界に轟いた。


……ピンポーン♪


遠慮がちな来客チャイム音が、もう一回鳴る。

さすがに、もう、起きる時間か。

でも、まだ眠いんだ。今日くらい学園を休んでもイイんじゃないだろうか?


ピンポーン♪ピンポーン♪ピンポーン♪ピンポーン♪ピンポーン♪


そんな俺の心を見透かしたのか、遠慮がちなはずのチャイム音が激しいラップを刻み出す。たまらず俺はベッドから飛び起きた。


【神代掛流】「……だぁっ!うるさいっ!!」


パジャマのまま玄関前まで駆け下りてきた俺は、絶賛ボタン早押し中の来客に制止を求める。


【神代掛流】「わかった!起きたって!ピンポンピンポン鳴らすな!優衣っ!」


【天原優衣】「今起きたの掛流? もう学校行く時間よ?」


扉の向こうから呆れたような声が入ってきた。


【神代掛流】「ああ、わかってるって (って、いつもより5分も早いじゃねーか) 」


小声で悪態をついて、あくびをしながら洗面所に向かう。


俺の平日は、だいたい毎日がこんな感じで始まる。

学園生といえば、朝は家族に起こされるってヤツが多そうだが、この家に家族は居ない。

父親は仕事人間で、家に帰ってくる事は滅多に無く、母親は数年前に他界している。

そこそこ広めの一軒家に、俺は実質的に一人で暮らしている状態だ。


朝起きが苦手な俺が、今年は無遅刻無欠席を貫けているのは優衣のお陰に他ならない。

その意味では感謝しているから、起こしてもらって文句は言えないのだが……


【神代掛流】「起こし方に問題があるんだよな……」


もうちょっと優しい起こし方は無いのか?

たとえば、そう、ベッドサイドに腰掛けて、優しく耳元で『起・き・て(ハート)』と囁きかけるような……


【天原優衣】「はやくしてよね。あたしまで遅刻しちゃうんだから」


玄関をドンドンと叩いている音が聞こえてきた。

……いや、あれは蹴ってるな。

もし、あいつが、寝てる間に部屋に上がってきたら、

『水を汲んだバケツで散水』

『フライパンとオタマで打楽器の生演奏』

をされるに違いない。


優衣と俺は いわゆる幼馴染みだ。

家が近所だったせいで、けっこう子供の頃から付き合いがある。

昔はもう少し大人しかったような気がするが、ここ数年のアイツの行動原理は、だいたい暴力的だ。


【神代掛流】「考えただけでも恐ろしいぜ」


このピンポン連打と玄関殴打は、まだ優しい気がしてきた。

そんな事を考えながら着替えも終わって、準備は完了。

下駄箱から靴を出しながら、扉の向こう、玄関の外に立っている優衣が磨りガラス越しに見える。


【神代掛流】「……この扉は、絶対に破られてはならない絶対防衛ラインだ。戸締まりを忘れないようにしよう……」


いやマジで。

ここの扉からの進入を許したら絶対にいけない気がする。


【天原優衣】「ちょっと、準備できたなら、早く出てきなさいよ!」


【神代掛流】「あ、ああ。今出るよ。」


臨戦態勢を整えた俺は、絶対防衛ラインの扉を開け放った。

ああ……今日も良い天気だ。

……だからダルイ

……歩くのがダルイ。

今日は五月の連休が明けて数日目。

世間では連休と言えば旅行とか色々と出歩く人が多かったようだが、俺はと言えばテレビで放送していたネメシス地球衝突の特番を全部視聴して、深夜の旧作のロボットアニメの再放送まで見尽くしていた。

個人的には充実した毎日だと思ってるが、夜型の生活スタイルを是正し、朝から起きて学園に登校するという生活リズムを取り戻すのには数日がかかりそうだ。


【神代掛流】「そいやおまえ、今日は何で5分も早く登校するんだ?」


【天原優衣】「……あのね、"5分も"じゃなくて"5分だけ"早く行くのよ」


呆れた顔で返事をされる。


【神代掛流】「……だから何で?」


【天原優衣】「あなた、今日は日直でしょ?」


【神代掛流】「……あ、そういえば……そんな気がする」


【天原優衣】「やっぱり忘れてたのね。」


はぁ、とため息をついて、肩をすくめたヤレヤレの仕草をする。

確かに忘れていた。

というか、何で俺の日直スケジュールを覚えてるんだ??

それに、お前は日直じゃないだろ? なんで俺と一緒に登校してんだよ?


【天原優衣】「……すごく不満そうね?」


俺の心を読んだのか、ジト目で俺を見つめてくる。


【神代掛流】「誰だって睡眠の邪魔されたら不満顔にくらいなるだろ? 朝の5分は、寝る前の50分に相当するからな。」


【天原優衣】「……その考え方は駄目人間の考え方よ。どうして、こうなっちゃったのかしらね……」


まるで、昔はこうじゃなかった とでも言いたげに話す。

俺は、昔の話題に触れて欲しくなかったから、話題が続かないように歩幅を早め、優衣を追い越した。

優衣も、俺の気持ちを理解しているらしく、その先は何も言わなかった。


住宅街の大通りなんて、まばらな人影しか居ない。

スマホ片手につまらなさそうに歩く女子中学生と、その父親だろうか……? 娘との話題のためか、しきりに何かを話しかけるスーツ姿の細身の中年男性。

ワイワイガヤガヤと集団登校している小学生たち。

ありきたりな日常が始まるという今このときに、朝の空気が気持ちよい……だなんて、ロマンを感じているヤツは何人いるんだろうか……

……いやむしろ、こんな観察眼を持って歩いている俺の方がオカシイかもしれない。


ほんの20メートルほど歩いたあたりで、突然後ろから呼び止められた。


【沙羅】「あんちゃん、ちょお待ちぃ。」


振り返ると、金髪長身スタイル抜群の外国人女性が、俺に手を振りながら近づいてきた。

誰だったろう? 知り合いじゃ無かったともうけど……。

考えている間に、彼女は俺たちに追いついて用件を切り出した。


【沙羅】「これ、あんちゃんのスマホやろ?」


【神代掛流】「……あっ! 本当だ!」


後ろポケットをまさぐってスマホが無いことに気付く。


【沙羅】「さっき、落ちるのが見えたさかい」


早歩きをしたときに落としたのか。


【神代掛流】「すみません。ありがとうございます」


【天原優衣】「ご親切に、ありがとうございます」


軽い会釈でお礼を済まそうとした俺を、優衣が小突いて深々と頭を下げた。俺も優衣に習って頭を下げる。


【沙羅】「ええてええて。困ったときはお互い様や。ほななー」


深く頭を下げる俺たちに、手をひらひらさせて屈託無い笑顔で答えると、そのまま去って行った。


【天原優衣】「……まったく、スマホを後ろポッケに入れておくのはダメだってあれほど言ったのに」


【神代掛流】「しかたねぇだろ……、ここに入れるのが一番使い勝手が良いんだから」


【天原優衣】「親切な人に拾われて良かったわね。」


【神代掛流】「ああ、ほんとにそうだな。ありがたいよ。今やスマホ無しで生活できんからな」


歩いて遠ざかってゆく金髪美人の後ろ姿を見つめる。

大きな胸、キュッと締まった腰。優雅な歩きで左右に揺れるヒップライン。

胸が大きく開いた超ミニスカートのピッタリとした服装、ひょっとしてモデルさんだろうか?

あれだけ大っきな胸してんだから、きっとそうだ。


……とか、考えを巡らせていたら、ふと優衣の視線に気付く。

ジトッと軽蔑するかのような目で俺を見つめていた。


【天原優衣】「……掛流、いまエッチな目をしてた。」


【神代掛流】「してねぇよ!!!」


【天原優衣】「ほんとーに??」


疑うような目で、俺を下からなめ回す。

腕組みするものだから、優衣の胸が必然的に強調される。

……そいや、優衣の胸も、けっこう……


とか思った瞬間、いきなり抓られた。


【神代掛流】「……痛てててっ!! してない! してない! ……っていうか、お前に関係ないじゃねぇか!!」


怒り顔で思いっきり抓ってきた太股をパッと離して、けろっとしてから歩き出す。


【天原優衣】「それもそうね。さっ、早く登校しましょ?」


やれやれ、今日もまた面倒な一日が始まるぜ……

眠気で重い体を引きづりながら、さっきの金髪美人の事を考える。


……あの金髪美人の外国人女性は、何故に大阪弁なんだろか?

謎だ。


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