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平凡な女には数奇とか無縁なんです。  作者: 谷内 朋
花嫁修業三十路前 〜外野席のホンネ編〜
191/302

cent quatre-vingt-onze こうた

 しっかしまさかあの二人がよりを戻すとはな。

 

 それなりに長く付き合ってたから当時であれば結婚ってなっても大して驚かなかったと思うけど、こっ酷い振られ方して仕事まで休むくらいのダメージを食らわされた相手なんかとよくやり直そうとか思えるよな。俺は無理ってか佐伯が無理。

 あの男なつには殿様家系じゃないって嘘吐いてて、幼馴染の小久保らには念入りに口止めしてたんだ。『彼女とは損得抜きで付き合いたい』とか言って。その割に俺らにには結構かさにしてて態度も高圧的だった。

 俺ら腐れ縁と佐伯の幼馴染連中と初めて会ったのがF県境にある北部高原だった。何から何まで用意してくれたのはありがたいけど、自分となつの分だけ贅沢仕様で俺らの分は見てわかるくらいにランク下げられてたんだ。料理であれば俺自身得意分野だからどうにでもするし、まことと小久保がアウトドア得意だからある程度は何とかなった。

 ただ定員以下のコテージに押し込められた時は正直ムカついた、お陰で不要な話し合いしなきゃなんなくなったり(お陰で仲良くはなれたさ)。有砂とつかさちゃんは女の子なんだからせめてそこの配慮はしてやれよと思ったよ、個室仕様になってるホテルも併設されてたんだから。んで自分らは四人用のコテージを二人で使ってゆったり過ごしてさ、なつはそういうのすぐ顔に出るから一人ツヤツヤしやがって『みんな疲れた顔してるね』って呑気そうにしてるのにも腹が立った憶えがある。

 それ以来俺は佐伯の誘いを断ってたから(嫌いな奴とわざわざ一緒の空気吸う必要あるか?)それきりなんだけど、当時俺は県外にいてその度に『料理作るだけなのに予定取れないほど忙しいの?』だの『小久保と亘理とは会う(ってか遊びに来てくれた)くせに』とかいちいち小煩ぇからブロックしてやった……ってアイツの話題に触れるだけで疲れてきた。


 このところメールを送ってもレスポンス無し、杏璃の卒業祝いにも姿を見せず。最近五条家も忙しなくしててはる姉もウチに来る頻度がぐっと減ってる、なつのバースデーケーキを買ってくれて以来卒業祝いまでまともに顔を合わせなかったもんな。

 ただその時のはる姉はもう居直ってる感じだった、これまでであれば親切すぎるくらいに構いまくってたのに。まぁ本人とちらっと話をしたら、例の彼氏さんとの生涯を見据えて色々動いてるって言ってたな。はる姉もなつと連絡を取りづらい状況で、通話だと繋がらないから内容が残るメールで報告だけはしてるらしいけど無反応なんだとさ。

 こんな調子だとまこととつかさちゃんの結婚式来ない可能性が出てくるんじゃねぇのか? 健康上の都合であればしゃあないかぁと思うけど、何となく佐伯がそうなるようにスケジュールを操ってるような気がするんだ。なつは佐伯と付き合ってた時期は顔が変だった、そのことについて五条家も含め誰も何も言わないけど、腐れ縁連中であれば似たような何かには気付いてるはずだ。特に末弟ふゆは脳みその出来が良すぎて四次元的直感も変に冴えわたってるところがある、実際十年前あれだけ懐いてたなつのことを急激に避けてたから。


 ぐっちー宅から戻ったらもももおかんも岩井家から戻ってきていた。二人はリビングで頂き物らしきお菓子を食ってて、お帰りの挨拶もそこそこにあんたもいる? と個包されてるお菓子を差し出された。

「あぁ、貰うわ」

「お茶は自分で淹れな」

「おぅ」

 と言ったそばからピンポン♪ とチャイム音が聞こえてきた。誰だ? セールスはお断りだ。

「ん〜、誰だろ?」

「俺が出る」

 ももが身重の体を立たせようとするのを留めて玄関に向かう。玄関脇に付いてるテレビドアフォンを確認すると、さっき会ったばっかのぐっちーが知らない女を伴っていた。

「はいどうした?」

『詳しくは中で、入っていいか?』

「おぅ」

 俺は二人を招き入れ、休日の店内に案内した。


 ぐっちーが連れてきた美女は佐伯花梨さんという南部電鉄百貨店の方だった。彼女は県内の菓子屋を集めて物産展を企画してるとかで、E市で行われる菓子博覧会を盛り上げたいとうちを誘ってくれた。初代からの考えでこういった企画のお誘いがあれば積極的に参加するようにはしているので即決で引き受けることにしたのだが、彼女個人の中には別の狙いがあった。

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