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平凡な女には数奇とか無縁なんです。  作者: 谷内 朋
ガチで婚活三十路前 〜良くも悪くも変わり時編〜
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cent cinqante-six 冬樹

 今年に入ってからなつ姉ちゃんの様子がちょっとずつおかしくなってる。う〜んばっきりおかしくなってるって言っちゃった方が正しいかも知れないね。

 そりゃあお見合いした霜田のオッサン(この人の場合はる姉ちゃんを好きになっただけなんだけど)、サークルの後輩満田(コイツ結局何だったんだろうね)、中学の同級郡司(付き合ってもないのにプロポーズしたらしいよ)……どれもおかしかったけどまだマシだった。だってなつ姉ちゃんがほとんど臭く(・・)ならなかったから……郡司の時はちょっとニオったけど、そこまでキツくもなかったし案外すぐに治まってくれたからね。

 ところが今回のは何あの臭さ! でもいつぞやとよく似てるんだよね。今のところこれといった情報は入ってきてないんだけど、日曜日何処ぞに出掛けた帰りなんて何してきたの? ってくらいに臭かったからね。

 そのいつぞやのことなんだけど、僕が小学校中学年くらいだった時になつ姉ちゃんのニオイが一気に臭くなった時期があったんだ。体臭とは違う(他の人には分からないみたい)んだけど、すっごく生臭いニオイを付けてたんだ。

 それが結構長く続いてさ(多分三年くらいかな?)、その時期に反抗期も一緒にきたって感じで学校の行き帰り以外は部屋に閉じこもってたんだよね。はる姉ちゃんにだけは理由を話したんだけど、その時に『恋人でもできたんじゃない?』って言ってたんだ。

『なつは何も言わないけど』

 大学生同士の恋愛であれば家族に言うものなんじゃないの(知らないけど)? 中高生のおままごとの延長じゃないんだから。まぁそんな時だけ個人主義になる奴もいるだろうけど、これまでは家族大好き、聞かれなくてもその日あった出来事をこと細かく話してくれてたなつ姉ちゃんの行動としてはおかしいなって当時も思ってたんだ。

 だから僕たちはなつ姉ちゃんの大学時代の話ってほとんど聞いたことが無くて、当時同級生だったチャラい降谷とかつかさちゃんとかだって卒業してから知ったくらいなんだよ。んで、その二人とちょくちょく話すようになったから、なつ姉ちゃんの大学時代のことをそれとな〜く訊ねてみたら『大学時代の四年間はほぼ彼氏がいた』って事実を聞かされたんだ。

 その事実を僕が知らなかったことにつかさちゃんは驚いてたんだけど、チャラい降谷はそう意外でもないって顔してて『二人の間でそういうルールを作ってたのかもしれない』って言ってたんだ。

『全部を知ってる訳じゃないけど』

 そう前置きはしてたけど、チャラい降谷はかなりの情報量を僕に提供してくれた。元カレの名前、出身地、家柄、人付き合いの癖と傾向、性格なんかもね。

 当時から思ってたんだけど、なつ姉ちゃんって金持ちの男を嗅ぎ出すのは上手いんだよね。でもそれだけ、性根はどれもこれもクソなのばっか、どこをどうしたらあんなダサい男選べるんだろうね? ホント不思議〜。

 こう言っちゃ何だけど、一時期首都圏出身の御曹司と付き合ってた尻軽のこと言えないよ。ってかアレの方がいくらかはマシ、父子家庭一人娘の家に乗り込んで『結婚させてください!』って土下座する程度の誠意は見せてたらしいからね(尻軽パパ情報)。

 つまり何が言いたいのか? 僕から見たなつ姉ちゃんの元カレってのは、本気で付き合ってた訳じゃない可能性があるってこと。仮に遊びじゃなかったとしても、セックス満足度の高さを気に入って付き合ってたってだけだと思う。

 それともう一つ、なつ姉ちゃんはほとんどの言葉を額面通りにしか受け取れないから言葉の嘘を見抜けない。増してや芝居のできるタイプの人間相手だところっと騙される。

 たちの悪いことに【目は口ほどに物を言う】を真に受けて、目を見れば嘘か真かが分かると思ってる。あのね、人って案外芝居上手で騙し上手なんだよ、自分で自分を洗脳して何にでもなりきることが出来るんだよ。それによって目の色も変わる、腹の中から嘘を作り上げれば真にするくらいのこと、誰にでもできるんだよ。

 実はなつ姉ちゃんも結構やってると思う。悪く言えば嘘吐きとも言えなくもないんだけど、本人は至って無自覚ながらも割と男の心を掴むのは上手いと思う。

 “美人じゃないサバサバ系女子”って立ち位置で男を安心させるってか油断させる、んでたま〜にとぼけたり抜けてる面を見せて隙を作る。自覚あってやってる方がたちが悪いと思うけど、無自覚でやってますってタイプの方が無敵なんだよね、誰も勝てない。

 だからなつ姉ちゃんは恐い、ここにエロスを混ぜ込まれたらそれこそメス豚あばずれレベルの魔性タイプになる。まぁ僕は弟だから俯瞰して見れるんだけど、赤の他人からしたら“ギャップ萌え”なんてこともあるのかも知れないね。


 う〜ん、十年近く振りにまたこのニオイを嗅がなきゃなんなくなるとは思ってもみなかったよ。ホントに臭いんだから! 他の人には伝わってないってのがもどかしいよ。今のところ理解してくれてるのってはる姉ちゃんだけだし……ミッツ君にこのこと持ち掛けてみようかな? あともう一人理解者になってくれそうなのがいるからそっちにも話してみようかな?

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