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ワンライ投稿作品

グッドカスタマー

作者: yokosa

第97回フリーワンライ

お題:

君の声は有料


フリーワンライ企画概要

http://privatter.net/p/271257

#深夜の真剣文字書き60分一本勝負

 ギャラクシー・マッチング・サービス!

 あなたのお好みのお相手が必ず見つかります!

 ギャラクシいいい、マッチンンング、サァァアビス!

 利用者宇宙規模で増加中! あなたのお隣さんも運命の人で出会っているかも!? 会員費ゼロ、利用料永久無料! ――ただし通信費は除きます。

 ギャラクシー・マッチング・サービス! 今すぐご利用を!


 *


 ――などという宣伝文句に踊らされたわけではないが。

 無料なら試しにやってみるのも悪くないんではないか、どうせタダだし。そうそう。見つかればめっけもんってことで。

 ……なんだか馬鹿馬鹿しくなってきたな。自分しかいないのに言い訳がましい。

 僕はギャラクシー・マッチング・サービス、通称GMSにアクセスした。

 水晶体に直接投影されるGMSは、きらびやかな、まるで遊園地のような外観だった。派手というよりは子どもっぽい。

 エントランスに意識を集中すると、周りの景色がぐっと引き延ばされ、後方に飛んでいく。あっという間に対面式窓口に瞬間移動していた。

 このバーチャル空間全盛期に対面式窓口というのもちぐはぐ感はあるが、結局のところ対人インターフェイスなんかはいつまで経ってもこれがベストということだだろう。

 案内に従って、必要事項を述べる。

 僕の姓名、言語、人種、住所、職業、あるいはもっと個人的な体格の数値まですべて。

 次に、理想の相手を入力する。ここまではどんな出会い系サービスや紹介所とも変わらない。そういった“普通”のサービスでは多少遠慮が入るものだ。現実で出会えなくて妥協して探そうというんだから、当然そうなる。

 だが、あえて。あえてうんと高望みする。

 年下がいい。あのトップアイドルみたいに可愛い感じの。照れ屋だけど僕の愛を受け止めてくれる。収入は……親が大金持ちとかでいいや。

 せ、性癖? そ、そりゃあ、僕も健全な男子だから多少エッチな方が…………………………………………これで。

 おっと忘れちゃいけない。もちろんヒューマノイドでね。


 *


 必ず意中の異性(勿論同性も可)と出会えるコミュニティ。

 どんな高望みの条件を入力したとしても、必ず確実にマッチする。あらゆる要求を満たすのは、それこそ天文学的な確率になるだろう。

 だが、出会えるのだ。

 それもそのはずで――天文学的確率、つまり星の数ほどの確率の“アタリ”を、星の数の中から拾い上げてくるのだから。

 ギャラクシー・マッチング・サービスは汎宇宙中継ネットを通して、現在の既知の膨張宇宙全域を対象に検索をかけるのだ。無限に等しい宇宙の中から、有限の数を掬い上げるなど造作もない。

 こうして必ず条件にマッチした相手が見つかるのはこちらの都合でだけでなく、あらかじめ登録した自分の情報を元に検索するので、相手にとってもベストマッチになる。

 つまり出会い率100%だし、交際率100%だし、婚姻率も100%だ。

 これで利用無料なのだから恐れ入る。勿論営利企業のサービスなのでからくりはある。交際時は婚約時、あるいは冠婚葬祭に至るまですべてギャラクシー・マッチング・サービスの関連会社やサービスを受ける、という契約。

 それと、最も基本的な代替利用料としては、マッチングした相手との通信費だ。ギャラクシー・マッチング・サービスは汎宇宙中継ネットの完全下部子会社だから当然と言える。


 *


 ――凄い。本当に見つかった。わかっていたことだけど、本当に!

 人生でこんなに楽しい時間を過ごしたのは初めてだった。いや、もしかしたら彼女との時間だけが本当の人生なのかも知れない。

 今や僕らは押しも押されぬバカップル状態で、きっと周囲にはバラ色の空間を展開していることだろう。

 僕らを隔てるものは何もない――精神的には。今はまだ物理的な隔たりがあった。もどかしい。

 今すぐ彼女に会いに行きたい。

 君はどこに住んでるんだ――!?

 ガシャン。

 突然網膜の映像が途切れた。なんだなんだ。何が起こった? ネットが切れた?

「お話中申し訳ありません。以後の通信には利用料をお振り込みください」

 なんて気の利かないサービスなんだ。通信費は自動引き落としにしてるはずだろう! わざわざ今言ってこなくても!

 ……おや、貯蓄の残高が。なんでゼロなんだ。いや、マイナス……?

 通信費……!? そんな馬鹿な! なんだこの法外な額は!

 通信相手――宇宙の反対側!?

「またのご利用をお待ちしております」



『グッドカスタマー』了

 書き終わってから気付いたんだけど、果たして「宇宙の反対側にいるはずの意中のお相手」が実在してるのかどうか。なんせバーチャル全盛期だからな。

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